近年、管理職に求められる役割は大きく変化しており、単なる業務管理にとどまらず、部下育成、エンゲージメント向上、DE&I推進、DX推進など、多岐にわたるテーマへの対応が求められている。必要なスキルや考え方を習得するためにも、「管理職研修」が重要となる。人事担当者としては、内容の種類や研修の成果を上げるポイントを理解しておきたい。そこで本稿では、管理職研修の企業事例10選を紹介する。併せて、管理職研修の目的や重要性、研修を成功させるためのポイントについても解説していく。管理職研修の企画・見直しを検討している育成担当者はぜひ参考にしてほしい。
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管理職研修の目的と重要性

管理職研修を効果的なものにするためには、まず「何のために実施するのか」を明確にすることが欠かせない。ここでは、改めて管理職研修の代表的な目的と、その重要性について整理しておきたい。

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●管理職への意識転換

管理職と一般社員とでは、求められる役割や視点が大きく異なる。メンバー時代は、自身の業務目標を達成することが主な役割だ。しかし管理職になると、メンバーを束ね、組織として成果を上げることが最大の使命となる。

しかし、プレイヤーとしての成功体験を引きずったまま管理職に就くケースは少なくなく、その結果、「自分でやったほうが早い」、「部下に任せられない」といった状態に陥ることもある。管理職研修は、こうした意識を切り替え、管理職としての役割を再定義する重要な機会となる。

●マネジメントスキルの養成

管理職には、業務管理力、コミュニケーション力、部下育成力、問題解決力など、さまざまなマネジメントスキルが求められる。しかし、これらのスキルは自然に身につくものではない。

その点、管理職研修はマネジメントに必要な知識や考え方を体系的に学び、ケーススタディやグループディスカッションを通じて実践的に習得していくことが可能となる。属人的なマネジメントから脱却し、組織として一定水準のマネジメント力を担保するためにも、研修の役割は大きい。

●次期経営人材の選抜・能力開発

「管理職研修」は、単に現場マネジメント力を高めるだけでなく、将来の経営を担う人材を見極め、育成する場でもある。管理職層は、経営層への登竜門とも言える存在であり、ここでの育成の質が企業の将来を左右すると言っても過言ではない。そのため、多くの企業が「管理職研修」を次期経営人材育成の一環として位置付けている。

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階層別管理職研修の種類

管理職研修は、階層や役割に応じて目的や内容が異なる。昇格直後の基礎習得から、組織を牽引する上級層の戦略思考まで、求められるスキルは実に幅広いものだからだ。ここでは、代表的な4種類の研修を目的別に紹介する。

●新任管理職研修

新任管理職研修とは、初めて部下を持つ新任管理職を対象に、マネジメントの基礎を体系的に学ぶ研修だ。プレイヤーからリーダーへと役割が変わる転換期において、「個人としての成果」から「チーム全体の成果」を意識する視点が欠かせない。新任管理職研修では、管理職としての役割理解や目標設定、評価の仕方、部下育成や面談スキルを中心に学んでいくことが一般的だ。さらに、リーダーとしての自覚を高め、組織全体の方針を踏まえた判断力を養うことも重視される。昇格直後に受講することで、早い段階から自信を持ってリーダーシップを発揮できる基盤づくりが可能となる。

【新任管理職研修の例】
・管理職としての役割理解ワーク
・基礎マネジメントスキルの学習
・1on1ミーティング実践
・マネジメントシミュレーション演習
・自己分析/キャリアビジョン策定

●中間管理職研修

中間管理職研修とは、課長・課長代理といった、現場の運営を担う層を対象にした研修。中間管理職には、上層部の方針を理解しつつ現場へ落とし込み、チームを動かす実行力が求められる。そのため中間管理職研修では、チームマネジメントや業務改善、部下の自律支援、部門間の調整力などを中心に養っていく。あわせて、部署を超えたコミュニケーションや、次世代リーダーとしての視座を養う要素も取り入れることが多く、また現場の課題を題材としたケーススタディを通じて、「戦略を現場で形にする力」を磨く内容となる。

【中間管理職研修の例】
・部門横断の課題解決プログラム演習
・業績目標に対するKPI設計
・リーダーシップスタイル診断
・1on1ミーティングスキル強化
・業務改善提案プレゼンテーション

●上級管理職研修

上級管理職研修とは、部長や事業責任者、経営幹部候補など、より経営に近い層を対象にした研修である。組織を大局的に見渡しながら判断する「戦略的思考力」や「変革リーダーシップ」の強化が主なテーマとなり、経営戦略の理解と意思決定、リスクマネジメント、人材ポートフォリオの最適化など、より高度なマネジメント能力を磨いていく。また、経営層との対話や事例討議、経営シミュレーション演習などを通じて、実践型の経営感覚を養うプログラムも多く見られる。

【上級管理職研修の例】
・経営戦略シミュレーション
・事業ポートフォリオ再構築ワーク
・経営層または外部講師とのダイアログセッション
・リスクマネジメント/危機対応シナリオ演習
・事業戦略立案ワークショップ

管理職研修における主なテーマ例

管理職研修では、階層や業種にかかわらず共通して求められるテーマがある。ここで、現場で役立つ主要なテーマを8つ取り上げ、その目的と内容の一例を紹介する。

●経営戦略・方針の理解と浸透

管理職には、経営層が描く方針を現場で実現する「橋渡し役」としての力が求められる。そのため、自社の企業理念やビジョン、中期経営計画がどんな市場環境や競合状況を踏まえて立てられたのかを読み解いていくテーマが一般的だ。そのうえで、全社戦略を自部門の具体的な数値目標やアクションプランに翻訳し、メンバーが納得できる形で伝える技術を磨く。

ここで特に大切なのが「戦略を自分ごととして語れるか」という点だ。ただ上から降りてきた方針を伝えるのではなく、「なぜ今この戦略なのか」、「自分たちの仕事が会社の成長にどうつながるのか」をストーリーとして語れるようになると、メンバーの当事者意識は大きく変わる。実際の経営方針を題材に、部門目標への落とし込みと説明のロールプレイを繰り返すことで、組織全体に戦略を浸透させる力が身についていく。

●業務マネジメント・改善手法

業務の効率化と成果の最大化を両立させるマネジメント力を鍛えるテーマだ。研修では、PDCAサイクルの実践的な回し方や、成果を測るKPIをどう設定するかといった基本から入ることが多い。例えば、業務フローを図にして滞りを見つける「プロセスマッピング」や、ムダ・ムラ・ムリを洗い出す「業務棚卸し」の演習を通じて、改善のポイントを見極める目を養うものだ。

また、特定の人しかできない属人的な業務を標準化するマニュアルづくりや、データを基に判断するための数値分析の基礎も扱う。ただ効率を上げるだけでなく、チーム全体のパフォーマンスを継続的に高める仕組みをつくることがゴールだ。自部門の実際の課題を題材に、現状分析から改善策の立案、実行計画の策定まで一気通貫で演習するため、すぐに活用できる実践スキルを身につけることができる。

●部下の育成・OJT指導スキル

部下を育てながら同時に成果も出すための指導・支援スキルを磨く研修だ。具体的には、一人ひとりのスキルレベルや性格に合わせたOJT計画の組み立て方、短期・中期・長期で成長を描く育成ロードマップのつくり方を学ぶ。さらに、部下の強みを引き出す「承認」と「質問」の使い方、成長につながるフィードバックの伝え方、キャリアを一緒に考える1on1面談の進め方なども実践的に身につけていく。

最近注目されているのが、答えを教え込むのではなく「考えさせる育成」、つまりコーチング型のアプローチだ。「この件についてどう思うか」、「次はどうしたいか」といった問いかけで、部下が自分の頭で考えて動く力を引き出す。そうしたロールプレイを交えながら自分の指導スタイルを振り返り、組織に育成文化を根づかせる力を養っていく。

●チームビルディングと組織マネジメント

多様な価値観を持つメンバーをまとめ、高い成果を生み出すチームをつくる力を養う研修だ。チームの目標を明確にし、メンバー全員が「何のために働くのか」を共有できる目標設定の技術から、各メンバーの強みや役割を可視化し、最適な役割分担を設計する方法などを習得していく。

ここで欠かせないのが、心理的安全性の高いチーム文化づくりだ。メンバーが率直に意見を出し合え、失敗を恐れず挑戦できる空気をつくるために、リーダーとしてどう振る舞うべきかを具体的に学ぶ。チームの状態を測る「チームサーベイ」の使い方や、意見を引き出して合意形成につなげるファシリテーションスキルも実践的に扱う。ただ仲が良いだけのグループではなく、目標達成に向けて機能する"チームマネジメント"の実践知を、ケーススタディやグループワークを通じて自分のものにしていけるテーマだ。

●コミュニケーション・傾聴力・対話力

管理職に欠かせない「伝える」、「聴く」、「対話する」という3つの力を鍛えるテーマだ。研修内容は、指示や依頼が正確に伝わる言葉の選び方から、表情や声のトーンといった非言語のコミュニケーション術まで幅広い。特に重視されるのが、部下の本音を引き出す「傾聴」のスキルだ。相づちやうなずき、あえて沈黙を活用する方法、相手の感情に寄り添う共感的な姿勢、部下自身の気づきを促す「オープンクエスチョン」や、話の意図を深掘りする質問技術も磨くものが多い。

リモートワーク環境でどうコミュニケーションを工夫するか、ハラスメントと受け取られないための配慮のポイントなどを含めたプログラムもある。コミュニケーションスタイルを客観的に見つめ直し、部下の成長を後押ししながら組織を活性化させる対話力を高めていくことができるテーマと言える。

●コンプライアンス・リスクマネジメント

企業の信頼を支える土台とも言えるコンプライアンス意識とリスク対応力を高める研修だ。法令遵守や社内規程の理解はもちろん、実際に起こりうるリスクシーンを具体的に学んでいくケースが多い。例えば、パワハラ・セクハラの境界線はどこにあるのか、SNSでの情報漏えいリスク、過重労働による健康被害、取引先との不適切な関係など、多様なケーススタディを通じて「何が問題で、どう対処すべきか」をディスカッションしたりする。

また、部下からの相談や異変に気づく観察力、問題を早期に組織として報告・共有する体制づくり、危機が起きたときの初動対応の判断基準なども含む。管理職には「知らなかった」では済まされない責任があることを改めて認識し、倫理観をベースにしたマネジメントスタイルを確立していくことも一つの目的と言える。

●戦略立案と実行力の強化

組織の未来を見据えて、戦略的に考え行動できる力を養うテーマだ。SWOT分析やPEST分析といったフレームワークを使って市場環境や競合の動きを把握し、自部門が今どこに立っているのかを客観的に評価する方法を学びながら、現状と理想のギャップから本質的な課題を見つけ出し、具体的な打ち手に落とし込む思考プロセスを体得していく。

数値とデータをベースに判断する技術や、メンバーを納得させながら巻き込んでいく推進力の磨き方に重点を置いている内容が多く、自社が抱えている実際の課題を題材に、戦略の立案から実行計画の策定まで一貫して演習するものもあるため、学んだ内容を翌日からすぐに現場で使える実践力が身につきやすい。

●多様性対応・女性管理職の育成

ダイバーシティ推進が進む中、管理職自身が多様性を受け入れ、それを組織の強みに変えていくリーダーシップを学ぶテーマだ。性別・国籍・世代・働き方・価値観といった違いを理解し、それぞれの強みを引き出すマネジメント手法を習得していく。

中でも重要視されているテーマが、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)への気づきだ。「女性は補佐的な役割が向いている」、「外国人は言葉の壁がある」といった無意識の思い込みを自覚し、フラットな視点でメンバーを評価・育成する力を養うプログラムが近年増えている。

一方、女性管理職のキャリア形成を支える具体的な取り組みや、ロールモデルとなる先輩管理職の事例、育児や介護と仕事の両立を前提としたマネジメントの工夫など、多様性がイノベーションや競争力の向上につながるという考え方を、ケーススタディやディスカッションを通じて実感し、日々の実践へとつなげていける内容だ。

管理職研修の企業事例10選

ここからは、実際に、管理職研修を実施している企業の具体的な事例を紹介する。それぞれの企業が抱える課題や目的に応じて、研修内容や手法が工夫されている点に注目してほしい。

●事例1:キヤノン「キヤノン アクティブマネジメントプログラム」


キヤノンが実施する「キヤノン アクティブマネジメントプログラム」は、部長と課長が同じテーブルに着き、部署単位で議論を行う半日対面型の管理職研修である。人事本部がプログラムの開発・設計から講師までを一貫して担っている点が特徴だ。

プログラムは二部構成。第一部では外部のアセスメントを活用し、自身の特性やマネジメントスタイルを客観的に把握する。また第二部では、部下一人ひとりの誇りややりがいをどのように高めていくかについて管理職同士で議論し、最終的に部署単位のアクションプランを策定する。

参加者からは「職場の実態を定量的に把握できた」「管理職として新たな視点を得られた」といった声が多数寄せられており、実践につながる研修として高く評価されている。

【関連取材記事】全管理職1,900名を巻き込んだキヤノンの職場改革――エンゲージメント向上と職場風土改善を促進する「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」

●事例2:花王「花王テクノスクール」

花王では、生産現場の中核を担うエンジニアリング・オペレーター(現場リーダー)の育成を目的に、1989年から「花王テクノスクール」を運営している。対象は工場長推薦の30歳前後の若手社員で、研修期間は8カ月(当初は6カ月)に及ぶ。研修場所は、花王和歌山工場内に設けている。

同スクールが目指しているのは、まじめで基本を徹底できる人財や向上心のある人財、問題発見・課題解決能力が高い人財など。そのために、専門知識や技能の習得に加え、茶道や坐禅、ボランティア活動などを通じて精神面を鍛えていく点が特徴だ。また、研修で学んだ内容を現場の課題解決に結び付ける実践的なプログラムも用意されている。

これまでに国内外で1,000名以上が修了し、その半数以上がリーダー職層以上へ昇格している点からも、同スクールの育成効果の高さがうかがえる。

【参考】日本化学工業協会:花王の生産部門を支えるリーダー育成(花王テクノスクール)

●事例3:LINEヤフー「DE&Iマネジメント研修」

LINEヤフーでは、2022年度からDE&I推進を重要テーマとして位置付けて「面」で打ち、女性活躍は「点」で打つ、二面アプローチで取り組んでいる。DE&Iマネジメント研修もその一環だ。対象は、本部長・部長・リーダー層などの管理職約1,800名。90分のオンライン集合研修で、全管理職の受講を必須としている。

研修は、「DE&I領域全般のインプット」「具体的シーンを切り取ったケーススタディ」「DE&Iマネジメントにおける対話(1on1)の重要性」「部下との現状を把握するための個人ワーク」「行動アップデート宣言」など、5つの内容で構成されている。「自分事として考えさせる」設計がなされており、受講後アンケートではポジティブな評価が多数寄せられている。

【参考】パーソル総合研究所:ヤフーのダイバーシティ&インクルージョン「多様性は、可能性だ。」~手探りで積み上げてきた10年と、全管理職2,000人との研修を実現するまで~

●事例4:セイコーエプソン「アンガーマネジメント研修」

セイコーエプソンでは、パワーハラスメント防止を目的として2016年からアンガーマネジメント研修を導入している。その背景には、社内でパワハラ行為が続出してしまい、会社として再発防止に向けた対応が求められていたことがある。

研修メニューとしては、アンガーマネジメント研修基礎編・実践編、アンガーマネジメント診断などに大別されており、それらをまずは経営層が受けた後、階層別・職場別・自己啓発(任意申し込み型)などへと展開してきた点が特徴だ。これまでの開催回数は800回超。自社および国内関係会社で延べ1.3万人余りが受講している。研修受講者の満足度はかなり高く、「アンガーマネジメント」や「6秒ルール」が共通言語に位置付けられるようになったことが成果として挙げられる。

【参考】日本アンガーマネジメント協会:企業研修事例-セイコーエプソン株式会社

●事例5:積水ハウス「ウィメンズ カレッジ」

積水ハウスでは、女性活躍推進を目的として2014年に「積水ハウス ウィメンズ カレッジ」を開設した。カレッジの目的は三点ある。第一に、管理職に相応しい経営視点・実力の向上。第二に、管理職資格昇格への意欲・自覚の醸成。第三が、ロールモデルづくりだ。受講生は毎回20名。各営業本部の本部長や本社各部場所の職責者などから、近い将来に管理職に登用する期待のある従業員として推薦を受けた者の中から選定される。

カリキュラムの期間は約2年。1年目に経営視点を養うスキル学習により、マネジメントの本質を学び、2年目には職場の課題を解決する経験学習により、問題解決力を強化。最後に経営層へのプレゼンテーションを行うという段取りだ。その結果、女性管理職数は大幅に増加しており、長期視点での人材育成の成功事例と言える。

【参考】積水ハウス:管理職に相応しい経営視点や実力を備えた人財を計画的に育成

●事例6:三菱UFJ銀行「DX推進人材育成研修」

三菱UFJ銀行は、2020年からDXコア人材の育成プログラム「DEEP研修」をスタートさせており、500名 以上のDXコア人材を育成してきた。先端技術のビジネス活用がますます求められる中、従来のコア人材育成だけに留まらず、より多くの行員がDXマインドやスキルを習得していく必要があると判断。さらなるDX推進を目的に、2024年11月から本部管理職の約2,200名を対象とした「BASE研修」を実施している。

期間は一人当たり1ヵ月間(インターバル含む)。プログラムは、DXを推進するために必要なマインドセットを習得するだけでなく、自らの業務を題材にDXプロジェクトを企画・推進する実践型研修と言える。銀行全体のDXを加速させ、先進的な価値創造や社会に多大なインパクトをもたらすソリューションの創出を目指している。

【参考】三菱UFJフィナンシャル・グループ:全行員が変革を主導する時代へ 2,000名規模のDX推進人材育成研修が始動

●事例7:グリコ「Co育てトライアル」

江崎グリコでは、育休を取得する際の社員と上司との相互理解や多様な働き方への理解促進を目的に、保育の現場において育児の当事者目線で疑似体験をしながら「ワークインライフ」を考える「Co育て(こそだて)トライアル」を行っている。第一回は、2023年11月に東京都品川区にある「Gakkenこどもえん」にて実施。当日は同社の管理職社員数名が参加した。

体験者からは、「一人ひとりの違いを受け入れることが重要だと感じた」、「何事も相手の立場に立つことが大事だと思った」など、さまざまな気づきを得られたという声が寄せられている。同社ではこうした体験者の意見や知見を踏まえ、社内制度や関連ツールの改善、社外への情報発信をさらに進め、育休制度の有効活用を図っていきたいと考えている。

【参考】江崎グリコ:江崎グリコは上司・部下の相互理解と多様な働き方の理解促進を目指します!

●事例8:大成建設「リベラルアーツ思考ビジネスプログラム」

大成建設はNTTドコモの協力の下、次世代リーダー向け企業研修「リベラルアーツ思考ビジネスプログラム」を実施している。

目的は、リベラルアーツなどの学びを通じて社員の全人格的な育成を進めていくことだ。プログラムの内容としては3つある。一つ目が「リベラルアーツ思考ビジネスプログラム」。新任部長が対象となり、反転学習の手法を駆使して、講義動画の事前学習やグループワークの結果発表などといったケースラーニングを行う。二つ目が「リベラルアーツビジネスカフェ」。新任職位者を対象として、学ぶ習慣づけと多様な知識習得を目指す。もう一つが、「リベラルアーツ動画による自己学習」だ。こちらは全管理職が対象。講義動画が見放題になっている。多様な学習手法を取り入れている点が、このプログラムの特徴だ。

【参考】大成建設:大成建設、ドコモgaccoの『リベラルアーツ思考ビジネスプログラム』を導入

●事例9:メルカリ「無意識バイアスワークショップ」

メルカリでは社内のD&I推進に向けて、2019年から自社内製による独自研修プログラム「無意識バイアスワークショップ」を実施してきた。さらに、2020年初からは、同プログラムを全マネージャー受講必須の研修として位置づけている。同プログラムの目的は、「無意識バイアス」(無意識の偏見)によって意思決定やコミュニケーションが影響されていないかを本人が自覚すること。

目指すべきゴールは3つある。一つ目は、知識(無意識バイアスの理解)。二つ目が、意識(自分の無意識バイアスの意識)。そして三つ目が、スキル(自分と他者に存在する無意識バイアスの意識付け)だ。プログラムでは、「無意識バイアスとは?」「よくある無意識バイアス」「無意識バイアスのセルフチェック」などを学んでいく。

【参考】メルカリ:メルカリ、「無意識(アンコンシャス)バイアス ワークショップ」の社内研修資料を無償公開

●事例10:日清食品「無人島サバイバル研修」

日清食品ホールディングス株式会社では、2003年から新任管理職研修を実施してきた。無人島研修、山修行、被災地ボランティアなど、その形態はかなりユニークだ。敢えて過酷な状況に立ち向かわせて、生き抜く力を養い精神面や肉体面を鍛え上げ、「骨太の管理職」の育成を目指していくのが狙いだ。

例えば、無人島研修の場合には、日清食品グループの新任管理職十数名が参加し、瀬戸内海にある "無人島" という何もない環境で2泊3日を仲間と共に過ごす。参加者からは、「食の大切さを再認識した」「チームワークの重要性に改めて気づけた」などの声が寄せられている。

【参考】日清食品:「骨太の管理職育成」無人島サバイバル研修 日清食品グループ 新任管理職研修 実施のお知らせ

【関連記事】リスキリングの企業事例10選! DX推進・AI人材育成などの取り組みを紹介

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管理職研修を成功させるためのポイント

単に管理職研修を実施したからと言って、社内のマネジメントが上手くいくわけではない。研修の事前準備から実施後のフォローまでを綿密に計画して研修の効果を最大化する必要がある。ここでは、管理職研修を成功させるために押さえておきたい5つのポイントを紹介していく。

●課題分析と目的の明確化

まずはなにより「なぜ今、研修が必要なのか」を明確にすることが肝心だ。マネジメントにおける課題や組織全体の傾向を見極め、何を改善すべきかを定義しておく。課題と目的を曖昧にしたまま進めると、研修内容が表面的になりがちだ。

現場の実態を丁寧に分析し、「研修後にどんな行動変化を期待するのか」を設定することで、目的と成果軸がぶれない設計ができる。

●実践的なカリキュラム設計

管理職研修では、座学中心よりも実践に近い形で学ぶ設計が効果的だ。業務課題をテーマにしたケーススタディやロールプレイなどを取り入れることで、参加者の当事者意識が高まる。

さらに自社の実例に基づく内容を盛り込むと理解が深まり、学びを現場ですぐに活かせるようになる。実務との関連性を意識した構成が、定着度を大きく左右すると言っても過言ではない。

●研修後の振り返りと定着施策

研修は受けて終わりではなく、「その後どう活かすか」が重要だ。受講直後に学んだことを整理し、実務での活用計画を立てる機会を設けると効果が高まる。人事や上司との面談、受講者同士の共有会などで振り返りを支援する仕組みも有効だ。フォローアップ研修やアンケート分析など、成果を見える化するプロセスを組み込むと良いだろう。

●上層部・人事との連携体制づくり

研修の成否を左右するのは、受講者だけでなく、上層部や人事部門の関与とも言える。経営層が「なぜこの研修を行うのか」をメッセージとして発信することで、受講者の意識が大きく変わり、また人事が進行役として現場の声を拾い上げ、企画と実施をつなげることで、組織的な学びが促進されるからだ。上層部・人事・受講者、それぞれの連携が一体となることで、継続的な成果へとつながるのである。

●現場での実践・フォローアップ体制

研修で得た知識を現場で実践に移すためには、フォローアップ体制が欠かせない。受講後のアクションプランを上司と共有し、進捗を確認する仕組みを整えると効果的だ。また、社内SNSやメンター制度を活用して、学びを実践に移す際の相談機会を設けるのも良い方法と言える。研修を単発のイベントで終わらせず、現場での「行動変革」として根づかせる仕掛けを意識したいところだ。

まとめ

本稿では、管理職研修の企業事例やテーマ例を紹介した。いずれも企業の課題や戦略に即した取り組みであり、管理職研修の多様なあり方を示している。ただし、どんな管理職研修であっても、それを成功に導くカギは、「研修後の行動変容」をいかに生み出すかにある。

多くの企業が階層別・テーマ別に工夫を凝らしているが、重要なのは自社の課題を的確に捉え、実践的なカリキュラムに落とし込むことだ。さまざまな事例からは、座学を超えた「現場との接続」の重要性がうかがえる。研修は実施して終わりではない。振り返りの場を設け、上司や人事がフォローし、学びを日常業務に定着させる仕組みがあって初めて組織の力となる。まずは自社の管理職が抱える課題を洗い出し、研修後の行動変化を具体的にイメージすることから始めてみてはいかがだろうか。
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