プロフィール

山崎 万里子 氏
株式会社ユナイテッドアローズ
上席執行役員 CHRO
山崎万里子(やまさき・まりこ)1993年、大学時代にユナイテッドアローズで学生アルバイトからスタートし、1996年に入社。販売促進部、広告宣伝部を経て、2006年、広報宣伝部部長、2008年、経営企画部部長。2010年に執行役員就任。2014年に経営戦略本部副本部長、2016年ユナイテッドアローズ本部副本部長などを経て2018年に人事部部長に。2023年、執行役員CHRO人事本部本部長、2026年、上席執行役員 CHRO 人事本部本部長に就任。

従業員エンゲージメントの回復と向上に取り組んだ「人的資本経営1.0」
――貴社が人的資本経営に本格的に取り組むようになられたのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。当社はコロナ禍において長期の店舗休業を余儀なくされ、その影響から上場来初の最終赤字に加え、平均年収の低下などにより、アルバイトを含むおよそ1000人の従業員が大量退職するという危機に直面しました。そうした中、従業員4000人のうち1000人が入れ替わった結果、何が起こったかと申しますと、従業員エンゲージメントが大幅に低下したんですね。
当社では、従業員が自分の職場を友人や家族にどれくらい勧めたいかを数値化するeNPSを導入しているのですが、コロナ禍になってスコアが15ポイントも悪化しました。一般的に従業員エンゲージメントは、顧客ロイヤリティや企業業績へと循環すると言われていますが、まさにコロナ禍において、その悪循環を立証してしまったというわけです。そこで業績を回復させるために、まずは下落してしまったエンゲージメントの回復・向上への取り組みに着手しました。
――具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。
まず、従業員意識調査とeNPSを同時に行い、双方の相関関係を明らかにしました。つまり、「報酬」「やりがい」「マネジメント」などに対する満足度が、エンゲージメントにどれだけ影響しているかを見るわけです。そして、エンゲージメントとの相関が高い項目に人事施策を集中的に投資する。このようにエンゲージメントを中心において人事戦略を考えました。ちなみにここでポイントとなるのは、エンゲージメントと相関が強い項目は時代や事業環境によって変動するということなんですね。
というのも、コロナ禍以前に実施した調査では、「仕事そのもの」「仕事量のストレス」「報酬」との相関が高かったのですが、コロナ禍以降の調査では「経営方針」と「教育機会」が影響度の高い項目のトップ2に変わっています。さらに、従業員意識調査のフリーコメントを見ると、例えば「経営方針」に関しては、「会社の現状を包み隠さず教えてほしい」といった回答や、「教育機会」に関しては、「会社の再成長に貢献したい。そのために店舗運営だけでなく、サプライチェーンについても勉強させてほしい」「デジタルマーケティングについて学びたい」といったことが記述としてありました。
――とても前向きで気概のあるコメントが多いですね。
そうなんです。実は退職者が1000人を超える中、転職することができる市場価値の高いメンバーが辞めていって、そうでないメンバーばかりが残るのではないかと仮説を立てていたのですが、実態としては「会社を再建させるのが自分の使命だ」と思っている従業員が残ってくれていたんですね。であるならば、彼らの意志に答える必要があるだろうということで、「リスキリングを主とした教育機会の拡充」や、「ジョブローテーションを中心とした業務機会の提供」、「タウンホールミーティングなどを通じた経営方針の共有」などに集中的に投資した次第です。結果、eNPSは16.4ポイント改善し、離職率も15%から10%に引き下げることができました。ここまでが「人的資本経営1.0」の取り組みになります。

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この後、下記のトピックで、インタビューが続きます。
●人材価値を財務価値や企業価値に繋げていく「人的資本経営2.0」
●正しい経営や人事を実践するのが「人的資本経営」の本質
●これからの人材戦略のキーワードは「成長」と「品格」
