日本労働組合総連合会(以下、連合)は2026年5月21日、採用選考における就職差別の実態を把握するために実施した「就職差別に関する調査2026」の結果を発表した。調査期間は2026年4月10日~15日で、直近3年以内に新卒または中途採用試験を受けた15~29歳の男女1,000名を対象に実施されている。調査結果から、採用選考における応募書類や面接での質問内容、学歴フィルターや男女差別の実感、またAI活用への評価やSNSアカウント調査の実態などが明らかになった。

“見えない就職差別”は増えているのか? SNS調査・学歴フィルター・男女差別…採用選考を巡る応募者の本音が浮き彫りに

応募書類で「本籍地」や「家族構成」などの記入を求められたとの声

生成AIの活用やオンライン選考の普及により、企業が応募者に関する情報を取得する手段は多様化している。一方で、採用選考の場では公平性やプライバシーへの配慮がこれまで以上に求められるようになった。応募者の適性や能力を見極めるための選考は、本当に適切な範囲で行われているのだろうか。

まず「応募書類やエントリーシートで記入を求められた内容」について尋ねたところ、「性別」が74.2%で最多となった。続いて、「本籍地や出生地に関すること」が45.6%、「家族に関すること」が38.6%、「生活環境・家庭環境に関すること」が28.3%となっている。

以下の項目では、「労働組合に関する情報や学生運動など社会運動に関すること」が25.1%、「思想に関すること」が22.4%となるなど、応募者の適性や能力とは直接関係しない事項についても一定数の回答者が記入を求められた経験を持つことが分かった。

なお、前回調査との比較では「住宅状況に関すること」、「支持政党に関すること」、「宗教に関すること」などの項目で7ポイント以上の上昇がみられており、個人情報に関する質問の増加傾向も確認されている。
応募書類やエントリーシートで記入を求められた内容

面接でも「家族」や「本籍地」への質問。応募者との認識ギャップが浮き彫りに

「採用面接で質問された内容」については、「転勤ができるかどうか」が41.7%で最も高く、「残業や休日出勤ができるかどうか」が39.2%で続いた。

一方で、「家族に関すること」が36.9%、「本籍地や出生地に関すること」が35.4%に達しており、私的な事項に関する質問も少なくない実態が明らかになった。

さらに、「結婚後や出産後の継続就労希望の有無」が22.7%、「結婚の予定」が19.9%、「性的指向の確認」が16.1%、「性自認への違和感の有無」が15.4%と続いている。
採用面接で質問された内容
一方で、「面接官が聞いてはいけないと思うもの」を尋ねた設問では、「宗教に関すること」が48.4%で最多となり、「支持政党に関すること」(45.7%)、「思想に関すること」(38.2%)、「家族に関すること」(35.1%)などが続いた。

応募者が不適切と感じる質問と、実際に面接で聞かれている内容との間にギャップが存在していることがうかがえる結果となっている。
面接官が聞いてはいけないと思うもの

「他社の選考状況は知られたくない」応募者が最多

応募書類や面接において「企業に示す必要がない」と感じる内容について尋ねたところ、「他社の選考状況」が35%で最多となった。以下、「趣味・特技」が16.1%、「学校生活・学生生活に関すること」が15.6%、「顔写真」が14.7%、「自己PR」が13.2%となっている。

企業側では一般的に質問されることの多い項目であっても、応募者の一定数は不要と感じていることが分かる。採用活動においては、質問の目的や評価との関連性を明確に伝えることも重要になりそうだ。
応募書類や面接において「企業に示す必要がない」と感じる内容

学歴フィルターを感じた人は44.3%。前年調査より上昇

就職活動において、いわゆる「学歴フィルター」を感じたことがあるかを尋ねたところ、「ある」と回答した人は44.3%となった。前回調査の40.4%から3.9ポイント上昇しており、特に中学校卒業者や高校卒業者では8ポイント以上の上昇が見られた。

この結果に対して連合は、応募者が「学校名によって選考対象を限定されている」と感じるケースが増えている可能性を指摘している。採用広報や選考案内の設計においても、企業には透明性の高い情報発信が求められそうだ。
就職活動において「学歴フィルター」を感じたことがある

男女差別を感じた人は36%。男性での増加も目立つ

「就職活動で男女差別を感じた経験」について尋ねた結果、「ある」と回答した人は36%だった。

特に男性では37.4%と、前回調査から7.3ポイント上昇している。
就職活動で男女差別を感じた経験
男女差別を感じた内容としては、「男女で採用職種が異なっていた」が39.2%で最も高く、「採用予定人数が男女で異なっていた」が34.4%、「男性のみ、または女性のみの募集だった」が30.3%で続いた。

採用活動におけるダイバーシティ推進が進む一方で、応募者側には依然として男女による扱いの違いを感じるケースが残っていることがうかがえる。
男女差別を感じた内容

AI面接経験者は20.6%。公平性への評価は賛否が拮抗

「企業が実施するAI面接を受けた経験」を尋ねた質問では、「ある」とした人が20.6%となった。

また、併せて「企業がAIを用いて選考を実施することへの印象」を尋ねると、「よい印象」が29.4%、「よくない印象」が27.1%とほぼ拮抗した。
企業が実施するAI面接を受けた経験・AI面接への印象
さらに、「AI選考は公平な評価につながると思うか」について尋ねたところ、「つながると思う」と回答した人が39.5%だった一方、「つながらないと思う」は20%となった。

AI活用による効率化への期待がある一方で、人間性の評価やアルゴリズムの偏りに対する不安も根強く、選考プロセスの透明性も今後の重要なテーマになりそうだ。
AI選考は公平な評価につながると思うか

SNSアカウント調査の通知経験は20.8%。実際の調査経験は21.8%に増加

近年注目を集める「SNS裏アカ調査」について、「採用選考過程で企業からSNSアカウントを調査する旨の通知を受けた経験」を尋ねると、「ある」と回答した人は20.8%となった。

前回調査の11.7%から9.1ポイント上昇しており、調査実施の事前通知は増加傾向にあるようだ。
採用選考過程で企業からSNSアカウントを調査する旨の通知を受けた経験
また、「実際にSNSアカウントを調査された経験」についても尋ねると、「ある」とした人は21.8%で、前回調査の10.7%から11.1ポイント上昇した。

SNS利用が日常化するなか、企業によるオンライン上の情報収集は今後も広がる可能性がある。一方で、採用選考における公平性やプライバシー保護の観点からは、調査範囲や運用ルールの明確化が求められそうだ。
実際にSNSアカウントを調査された経験
本調査では、学歴フィルターや男女差別の実感に加え、応募書類や面接での不適切な質問、さらにはSNSアカウント調査の拡大など、採用選考を巡るさまざまな課題が浮き彫りとなった。特にSNS調査経験者の増加は、採用活動のデジタル化が進むなかで新たな論点として注目される。今後、企業には法令やガイドラインを踏まえた適切な選考設計に加え、応募者から「公平で納得感のある選考」と受け止められる運用が求められるだろう。

出典:https://www.atpress.ne.jp/news/598319

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