従業員エンゲージメントの向上は、近年多くの企業にとって重要性が増している。だが、現場での改善行動につなげるための研修が、一過性に終わり、形骸化してしまうケースも少なくない。こうした中、キヤノン株式会社では、全ライン管理職1,900名が参加する「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」を通じて、個別情報をデータで裏付けし、新たな人材開発の実践に挑戦している。人的資本経営の文脈においても意義のある本プログラムの特徴や成果のほか、進める上で直面した課題、管理職の巻き込み方などについて、キヤノン株式会社 人事本部 人事統括センター 人事部長 橋本大介氏、人事本部 課長代理 山岸英大氏、健康支援室 課長代理 髙橋瞳氏にお話を伺った。

第14回 日本HRチャレンジ大賞『人材マネジメント部門優秀賞』

キヤノン株式会社

エンゲージメントを可視化し、1,900名の全管理職が参画する「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」

「Think Engagement」をテーマに、全ライン管理職1,900名が参画する大規模かつ体系的な職場改革プログラムを構築。従業員意識調査データの多面的分析と最新HRセオリーを融合させ、各職場単位での具体的な行動計画策定を実現。研修開催にとどまらず、好事例集配布やeラーニング展開、大規模イベント実施など多角的アプローチにより、管理職主導で部下のエンゲージメント向上と組織風土改善を促進する優れた取り組みであると高く評価されました。

プロフィール

  • 橋本 大介 氏

    橋本 大介 氏

    キヤノン株式会社
    人事本部 人事統括センター
    人事部長

    2000年キヤノン株式会社に新卒入社。複合機事業の開発・生産拠点における総務業務を経て、2003年人事部に異動し人事制度企画、労政関連業務に従事。2011年オランダの物流統括拠点へ出向、2013年イギリスのヨーロッパ販売統括会社へ異動し、職務評価手法の変更や企業風土改革および域内出向政策等の業務を主導。2018年より採用課長、2021年人事第一課長を経て2025年1月より人事部長に就任。人事制度の運用および企画や労使協議の統括に加え、全社研修や若手支援プロジェクトなど複数の人事本部横断プロジェクトをリードしている。

  • 山岸 英大 氏

    山岸 英大 氏

    キヤノン株式会社
    人事本部
    取手人事部 取手人事課
    課長代理

    2012年キヤノン株式会社に技術者として入社し、次世代レーザービームプリンタの開発に従事。2014年よりキヤノン労働組合の執行委員として活動し、コロナ禍には事務局長として様々な労使協議や人事制度改革を牽引。2023年9月に人事本部へ異動し、組織風土改革プロジェクトや最適な要員体制の構築を主導。

  • 髙橋 瞳 氏

    髙橋 瞳 氏

    キヤノン株式会社
    安全衛生部 健康支援室
    課長代理(保健師/公認心理師)

    2010年キヤノン株式会社に入社し、研究開発事業所に配属。2014年下丸子本社に異動し2024年より現職。キヤノングループの健康経営推進企画を担当し、主にメンタルヘルス傷病者対応および海外健康支援等に従事している。

全管理職1,900名を巻き込んだキヤノンの職場改革――エンゲージメント向上と職場風土改善を促進する「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」

社員のエンゲージメント向上につなげる全管理職研修「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」とは何か

――まずは今回受賞されました、大規模な組織改革プログラム「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」の実施背景を教えていただけますでしょうか。

橋本氏:
「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」自体は、2022年に初回を実施し、今回が2回目となります。前回は人事制度改定を浸透させる目的での実施でしたが、今回は従業員意識調査の現場への落とし込みを目的とし、メインコンテンツを大きく変更しています。会社全体として、「人的資本経営」を推進していく上で現場からのボトムアップ型の取り組みにつなげることが求められています。そうした背景から、職場風土や文化に深く入り込むことを意識し、従来とは異なる切り口で研修を再構築しています。
全管理職1,900名を巻き込んだキヤノンの職場改革――エンゲージメント向上と職場風土改善を促進する「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」

プロジェクト全体概要

全管理職1,900名を巻き込んだキヤノンの職場改革――エンゲージメント向上と職場風土改善を促進する「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」

キヤノンアクティブマネジメントプログラム概要

――「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」の取り組み内容について具体的に教えてください。

橋本氏:
「キヤノンアクティブマネジメントプログラム」は、部長と課長が同じテーブルで車座で議論する部署単位の半日対面型の管理職研修です。人事本部が基本的に内製でプログラムの開発・設計にあたっており、講師も人事部門の部長・課長が担当します。

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