厚生労働省によると2025年に発生した労災で死傷した60歳以上の高齢者は41,000人を超え過去最多を更新し、20年間で倍増している。今後も人手不足や経済的理由から働くシニアは増え続けることが予想される。高齢者は筋力やバランス感覚の低下、視力の衰えなどによって、思わぬ事故に巻き込まれやすく、症状も深刻化しやすい。

【2026年4月施行】「高齢労働者の労災防止」が努力義務化に。職場の再設計と安全衛生実務が“誰もが安全に働ける職場”につながる

高齢者の働く環境を整え、人手不足の保管へ

こうした背景を受け、2026年4月から「改正労働安全衛生法」が施行され、高齢労働者の労災防止策を講じることが事業者の努力義務とされた。

改正法に罰則はないものの、労災への的確な対応を怠っていると企業は労働契約法上の安全配慮義務違反を問われる可能性も高くなる。高齢者の働きやすさを高めることは、人材不足を補完することにもつながるわけで、努力義務を求められる企業として、どのような視点で対策を講じれば良いのかを検討してみよう。

求められるのは「高齢者の特性を前提とした職場の再設計」

2026年4月の「改正労働安全衛生法」の施行は、企業にとって単なる「義務への対応」ではなく、労働環境のあり方を根本から再定義する大きな転換点でもある。

60歳以上の死傷者が過去最多を更新し続ける現状を打破するためには、従来のような「手すりをつける」、「段差をなくす」といった対症療法的なハード面の整備だけでは不十分である。企業が今後、持続的にシニア人材を活用し、同時に法的リスク(安全配慮義務違反)を回避するために重要なのは、「高齢者を守る」という発想から、「高齢者の特性を前提に職場そのものを再設計する」という視点への転換に他ならない。順を追って説明していこう。

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