そこで本レポートでは、本調査の全体傾向についてHR総研で分析・考察した結果を以下に報告する。
※『エンゲージメントコンパス』とは
人事のプロを支援するポータルサイト「HRプロ」(ProFuture株式会社)が無料で提供するエンゲージメントサーベイ。国内エンゲージメント研究の第一人者の学習院大学の守島基博教授を監修に迎え、「9つの規定要因(原因)」「エンゲージメント(現在の状態)」「6つの結果変数(行動・成果)」を分析し、改善ポイントを提示します。設問は46問まで絞り、HR領域の課題に特化した対策を打てるように設計、自社の経時変化や他社(全社・同規模)との比較も可能になっています。
本調査の回答者属性
調査に参加した回答者の属性として、所属する企業の従業員規模と業種の内訳について以下に示す。
【回答者の所属する企業の従業員規模 内訳】

【回答者の所属する企業の業種 内訳】

「信頼・互恵」「評価プロセス」は昨年同様高水準
まず、エンゲージメントレベルに影響を与えうる9つの「規定要因」について、5段階評価の平均値を確認する。なお、規定要因は、主に従業員体験の項目で構成されている。
今回調査(2025年度)と前回調査(2024年度)の結果について、各調査に参加した新入社員全員の平均値を比較すると、9つの項目いずれもレベル3〜4の間にあり、前年と比較して大きなスコアの変化は見られなかった。
今回調査において最も高い値となっているのは「信頼・互恵」で3.97、逆に最も低い値となっているのが「自律性」で3.43と、昨年と同様の傾向となっている(図表1-1)。「信頼・互恵」が高いことから、入社1年目という早い段階から、上司・先輩・同期とのコミュニケーションを通じて職場内の人間関係が着実に育まれていることがうかがえる。「自律性」が低い点は、まだ業務知識やスキルを習得している段階にある新入社員においては、自らの裁量で仕事を進める機会が限られることが影響していると考えられる。そのため、この時期の「自律性」の低さはある程度避けがたい面もあるだろう。また、「評価プロセス」(3.88)が「信頼・互恵」に次いで高い水準となっており、上司が自分の仕事ぶりを丁寧に見て評価し、その結果について納得いく説明がなされているとの実感が比較的強く、入社1年目においても評価への納得感が醸成されつつあることがうかがえる。
【図表1-1】「規定要因」項目別スコアの平均値(5段階評価)

この規定要因項目別スコアの平均値について、従業員規模別に1,001名以上の大企業、301〜1,000名の中堅企業、300名以下の中小企業の3区分に分けて比較する。
企業規模別に各項目を比較してみると、今回調査では中堅企業が多くの項目で最も高い平均値となっていることが分かる。中でも「評価プロセス」(4.06)と「信頼・互恵」(4.08)については4を超える高水準で、上司からの評価への納得感や職場内の信頼関係が、特に良好な状態にあることがうかがえる。
スコアの下位の項目に目を向けると、全ての規模で前述のとおり「自律性」が低い傾向にある。ただし、興味深いことに中小企業の「自律性」(3.52)は3区分の中で最も高くなっている。規模が小さい分、新入社員が早期から自らの判断で動く機会を比較的得やすい環境にある可能性が示唆される。一方で中小企業では「フィードバック」は3.35、「処遇」は3.30と他規模・他項目と比べて低い水準にあり、自身の仕事の成果についてのフィードバックが返ってくる機会の少なさや、処遇への納得感の低さが課題として浮かび上がっている。大企業については多くの項目で中堅企業に次ぐ水準にあるが、「明確性」(3.60)が中小企業(3.78)や中堅企業(3.87)と比較してやや低く、業務の役割や期待成果が新入社員に十分に伝わりきっていないものと推察される(図表1-2)。
【図表1-2】従業員規模別 「規定要因」項目別スコアの平均値(5段階評価)

業種別に見ると、最も高い値となっているのが「商社・流通」の「信頼・互恵」で4.22、次いで同じく「商社・流通」の「評価プロセス」(4.21)となっている。「商社・流通」は、多くの項目で他の業種に比べて規定要因スコアが高水準にあるが、特に職場メンバーとの信頼関係や評価の納得感といった点で新入社員の満足感が高いことがうかがえる。「マスコミ・コンサル」も「会社支援」(4.14)、「評価プロセス」(4.14)、「信頼・互恵」(4.11)、「明確性」(4.03)、「多様性」(4.03)と多くの項目で4を超えており、新入社員の働く環境の充実度が高い業種といえる。
一方、最も低い値は「運輸・不動産・エネルギー」の「フィードバック」で2.81と3を下回っており、次いで同じく「運輸・不動産・エネルギー」の「処遇」と「会社支援」がいずれも2.93と際立って低い水準にある。日本社会にとって不可欠なインフラ産業に従事しているにもかかわらず、自身の仕事への評価や反応が得られにくく、会社からのサポートも十分に感じられていない状態にある新入社員が少なくないと推察される。また、「メーカー」の「フィードバック」(3.22)も他業種と比べて低い水準にあり、成果に関する情報が新入社員に届きにくい状況が一定程度存在することがうかがえる(図表1-3)。
【図表1-3】業種別 「規定要因」項目別スコアの平均値(5段階評価)

3項目のエンゲージメントが総じて向上、中堅企業が全項目で高い
次に、「エンゲージメント」の3項目について5段階評価の平均値を確認する。
エンゲージメントコンパスでは、エンゲージメントを、主に自身の仕事に対する愛着や熱意などを示す「職務エンゲージメント」、実際に仕事で関わる頻度の高い職場環境に対する愛着や貢献意識などを示す「職場エンゲージメント」、会社全体に対する愛着や貢献意識などを示す「組織エンゲージメント」の3項目に分けて計測している。前述した規定要因の状態が、エンゲージメントの向上にどのように影響しているかを分析で把握し、エンゲージメント向上に効果的なポイントを抽出することができる。
まず全体傾向として、3項目いずれも前回調査より平均値が上昇している。「職場エンゲージメント」が3.70と最も高く、「職務エンゲージメント」が3.61、「組織エンゲージメント」が3.51と続いている(図表2-1)。
この順位は前回調査と同じ傾向であり、日頃から直接関わりのある職場メンバーや自分の仕事への愛着は高い一方、会社全体への愛着や帰属意識はやや醸成されにくい状態にあることが、2025年度新入社員においても示されている。ただし、「組織エンゲージメント」は前回から0.12ポイントと3項目中で最も大きく上昇しており、他の2項目との差はやや縮小している。
【図表2-1】「エンゲージメント」項目別スコアの平均値(5段階評価)

従業員規模別に見ると、中堅企業が「職務エンゲージメント」(3.71)、「職場エンゲージメント」(3.71)、「組織エンゲージメント」(3.57)の3項目全てで最も高い値となっており、図表1-2で確認した規定要因の高さがエンゲージメントにも反映されていることがうかがえる。一方、最も低いのは大企業と中小企業の「組織エンゲージメント」で、いずれも3.49となっている(図表2-2)。いずれの規模においても「組織エンゲージメント」が3項目中で最も低い傾向は共通しており、新入社員に会社全体への愛着や誇りを育む取り組みが、企業規模を問わず課題として残されているといえるだろう。
【図表2-2】従業員規模別 「エンゲージメント」項目別スコアの平均値(5段階評価)

業種別に見ると、「マスコミ・コンサル」が「職務エンゲージメント」(3.90)、「職場エンゲージメント」(3.83)、「組織エンゲージメント」(3.92)の3項目全てで最も高い値となっている。図表1-3で確認した通り、同業種は規定要因でも多くの項目が高水準にあり、これがエンゲージメントにも着実に反映されていることがうかがえる。特に「組織エンゲージメント」が3.92と全業種の中で突出して高く、会社全体への帰属意識や愛着が育まれていることが分かる。
一方、「運輸・不動産・エネルギー」は、3項目全てにおいて他業種よりも低い水準となっており、「組織エンゲージメント」については2.85と唯一3を割り込む水準となっている。図表1-3で見たとおり、同業種は「フィードバック」「処遇」「会社支援」などの規定要因項目がいずれも低く、エンゲージメントが他業種に比べて低い原因となっていると推察される。また、「情報・通信」については「職務・職場エンゲージメント」は中程度の水準にありながら、「組織エンゲージメント」が3.30と相対的に低い点が特徴的で、仕事や職場への関心は持ちつつも、会社全体に対する帰属意識が育ちにくい状況にあることがうかがえる(図表2-3)。
【図表2-3】業種別 「エンゲージメント」項目別スコアの平均値(5段階評価)

満足しているが留まるとは限らない、残留意図が低い傾向は今年も継続
「結果変数」についても、5段階評価の平均値を見てみる。
なお、結果変数とは、エンゲージメントが高まることで期待される行動や意思としての成果を表す6つの指標である。期待する成果が得られない場合、これらの行動を阻害する要因がないかを検討するなど、成果に繋げるための分析により、効果的な施策ポイントを得ることができる。
全体を見ると、6項目の中で最も高いのは「満足度」で3.85となっている。会社や上司、同僚など、仕事生活全般に対する満足度を表す項目であり、従業員満足度は高い水準にあることが分かる。次いで高いのは「達成志向行動」で3.73となっており、目標達成に向けて粘り強く取り組む姿勢が入社1年目の新入社員においても比較的よく見られることがうかがえる。
一方、最も低いのは「残留意図」で3.29となっている。「満足度」が高いにもかかわらず、「残留意図」が最も低いというこの構造は前回調査と同様であり、現在の仕事や職場には満足しつつも、将来的な転職の可能性を排除していない新入社員が一定数存在することを示している。これはZ世代の特徴の一つとして引き続き注視すべき傾向といえるだろう。また、「残留意図」の標準偏差は0.97と他項目より顕著に大きく、個人によってばらつきが大きい項目であることも特徴的である。入社1年目の段階で「残留意図」の高さが大きく分かれていることを踏まえると、自社の新入社員にとって何が離職リスクに強く影響しやすいのかを分析したうえで、早期からの個別的なキャリア対話や職場環境の整備が、離職リスク低減に向けて重要な意味を持つといえるだろう(図表3-1)。
【図表3-1】「結果変数」項目別スコアの平均値(5段階評価)

比較対象として、エンゲージメントコンパスに関する従業員階層を幅広くとったモニターによるサーベイ結果と本調査の結果を比較してみる。モニターサーベイの結果では6項目がいずれも3.00〜3.16の範囲に収まり、項目間の差がほとんど見られないのに対し、新入社員の本調査結果では「満足度」(3.85)と「達成志向行動」(3.73)が特に高く突出していることが分かる。入社1年目という新鮮な環境でのモチベーションの高さや適応意欲が、これら2項目に顕著に表れていると考えられる。
一方、「残留意図」については新入社員(3.29)とモニター(3.09)の差が0.20と6項目中で最も小さく、他の項目と比べて新入社員特有のスコアの高さがそれほど見られない点が特徴的である(図表3-2)。
【図表3-2】モニターによるサーベイ結果との比較 「結果変数」項目別スコアの平均値(5段階評価)

本調査における結果変数の平均値について、従業員規模別に見てみると、中堅企業が「達成志向行動」(3.79)、「満足度」(4.01)、「残留意図」(3.43)の複数項目で最も高い値となっており、規定要因やエンゲージメントと同様の傾向となっている。
一方、大企業は「残留意図」が3.21と全規模の中で最も低い値となっている。また、中小企業の「支援行動」(3.17)が全規模・全項目の中で最も低い点も特徴的で、自分の役割を全うしながら周囲をサポートするまでの余裕がまだ生まれにくい状況にある可能性が考えられる(図表3-3)。
【図表3-3】従業員規模別 「結果変数」項目別スコアの平均値(5段階評価)

業種別に見ると、「マスコミ・コンサル」が「満足度」(4.19)と「達成志向行動」(3.96)でともに最も高い値となっている。「満足度」の高さは仕事や職場への充実感を示しており、「達成志向行動」の高さは目標や役割の達成に向けて粘り強く取り組む姿勢が強いことを示している。「メーカー」も「満足度」が4.12と高水準にあり、仕事や職場への充実感という点では良好な状態といえる。
一方、「運輸・不動産・エネルギー」の「残留意図」は2.81と全業種の中で唯一3を下回っており、早期離職リスクという観点でやや懸念がある状態となっている。「満足度」(3.16)や「プロアクティブ行動」(2.86)も全業種の中で最低水準であり、図表1-3・図表2-3で確認した規定要因やエンゲージメントの低さが結果変数にも影響していることが推測される(図表3-4)。
【図表3-4】業種別 結果変数項目別スコアの平均値(5段階評価)

新入社員の残留意図は「会社支援」が鍵、キャリアを重ねると「自律性」「処遇」が重要に
ここからは、規定要因と組織エンゲージメント、結果変数との関係性を確認していく。まず、組織エンゲージメントレベルによる規定要因スコアの違いを見てみる。組織エンゲージメント(4項目5段階評価の平均値)について、レベル1~4未満を「低い」、4以上を「高い」として2区分に分け直し、組織エンゲージメントが「高い」回答者群と「低い」回答者群の規定要因スコア平均値を比較している。
いずれの規定要因についても組織エンゲージメントが「高い」回答者群の方が「低い」回答者群より高い値となっており、最もスコアの差が大きいのが「会社支援」で0.85ポイントの差異が生じている。従業員が会社からの支援を実感できているかどうかが、組織エンゲージメントの高低に関係している可能性が考えられる。次いで「信頼・互恵」(0.74)、「重要性」(0.70)のスコア差も大きく、会社全体への愛着や帰属意識が強い社員ほど、職場での良好な人間関係を築けており、自身の仕事に対しても意義・重要性を認識しながら取り組んでいることがうかがえる。一方、スコアの差が最も小さいのは「自律性」で0.43ポイントにとどまっており、次いで「明確性」が0.47ポイントとなっている。「自律性」は新入社員の段階では全体的にスコアが低く、組織エンゲージメントの差に影響しにくいことが推測される。「明確性」については高低両群ともに比較的高いスコアを維持しており、上司や先輩から業務遂行に必要な情報が組織エンゲージメントの状態にかかわらず適切に提供されていると推察される(図表4-1)。
【図表4-1】組織エンゲージメントレベルによる、規定要因スコア平均値の違い

次に、組織エンゲージメントレベルによる結果変数スコアの違いを見てみる。
規定要因と同様の傾向として、いずれの結果変数についても組織エンゲージメントが「高い」回答者群の方が「低い」回答者群より高い値となっている。この中で特に差が大きくなっているのが「残留意図」で0.95と、他の項目と比べて顕著に大きい差異が生じている。組織エンゲージメントが高い新入社員ほど「残留意図」も高くなる傾向が今回も明確に示されており、会社全体への帰属意識が定着行動に直結していることがうかがえる(図表4-2)。
一方、「支援行動」(0.42)や「プロアクティブ行動」(0.51)については差異が比較的小さい。新入社員の段階では、組織エンゲージメントが高くとも自身の業務を全うすることで精一杯で、職場メンバーを支援したり業務改善に取り組んだりする余裕はまだ生まれにくいのが実情と考えられ、この傾向は前回調査と同様である。
【図表4-2】組織エンゲージメントレベルによる、結果変数スコアの違い

新入社員の定着を図るために注視したい「残留意図」レベルと関係性のある規定要因を把握するため、残留意図レベルによる規定要因スコアの違いを見てみる。残留意図(1項目)のレベル1~4未満を「低い」、4以上を「高い」として2区分に分け直し、残留意図が「高い」回答者群と「低い」回答者群の規定要因スコア平均値を比較してみる。
いずれの規定要因についても残留意図が「高い」回答者群の方が「低い」回答者群より高い値となっており、最もスコア差が大きいのが「会社支援」で0.75ポイントの差異が生じている。会社が自分に対して配慮してくれていると実感している人ほど、残留意図も高いことが分かる。また、「処遇」(0.59)と「評価プロセス」(0.58)のスコア差も比較的大きく、給与・待遇への納得感や評価プロセスへの納得感が残留意図に影響する規定要因として注目される。スコア差が最も小さいのは「自律性」で0.22にとどまっており、次いで「明確性」が0.32となっている(図表4-3)。
【図表4-3】残留意図レベルによる規定要因スコアの違い

比較対象として、モニターサーベイの場合の残留意図レベルによる規定要因スコアの違いを見てみると、全体的に残留意図が高い回答者群の方が規定要因のスコアも高くなっており、この点は新入社員の傾向と同様である。ただし、新入社員との大きな違いとして、モニターサーベイでは「自律性」(0.65)と「処遇」(0.81)のスコア差が新入社員(それぞれ0.22、0.59)と比べて顕著に大きくなっている(図表4-4)。在籍年数や職級が上がるにつれて、自分の仕事に対する思い入れが強くなり、仕事における裁量権や処遇への納得感が残留意図の高さにより強く関係するようになることが推測される。入社当初は自律性や処遇よりも職場の人間関係や会社からのサポートが定着に影響しやすいが、キャリアが深まるにつれてその重点が変化していくという観点は、各社が段階に応じた施策を検討するうえで参考になるだろう。
【図表4-4】モニターによるサーベイ(従業員階層の区分なし)の場合
残留意図レベルによる、規定要因スコアの違い

規定要因→組織エンゲージメント→残留意図、定着につながる連鎖の起点とは
続いて、規定要因、エンゲージメント、残留意図の相関関係から、新入社員の残留意図を効果的に高めるために必要な施策ポイントを探ってみる。
ただし、本調査全体の傾向であり、各社ごとに各要素間の関係性は異なるため、的確に自社新入社員の傾向を把握するためには各社別の分析が必要であり、本結果はあくまでも参考データとして見ていただきたい。
なお、相関関係とは、二つ以上の事象について一方の数値が増加すると、もう一方の数値が増加または減少するような関係のことである。一方の数値が増加したときに、もう一方の数値も増加する関係にある場合、「正の相関がある」といい、反対に減少する関係にある場合には「負の相関がある」という。相関関係を数値で表す「相関係数」は-1.0~1.0の範囲で値をとり、この相関係数の値が大きいほど強い正の相関があり、0に近づくほど相関が弱い関係であることを表している。
まず、規定要因-エンゲージメント-残留意図の相関係数ヒートマップを見てみると、残留意図と最も高い相関があるのは「組織エンゲージメント」で相関係数0.737と高い値となっている。「職務エンゲージメント」(0.574)、「職場エンゲージメント」(0.527)も残留意図とやや高い相関を示しており、エンゲージメント3項目間の相関も0.647〜0.721と高くなっている。一方、規定要因と残留意図の直接的な相関については、最も高い「会社支援」でも0.555にとどまり、規定要因と残留意図の関係性を把握するには、エンゲージメントを介した間接的な経路が重要であることがうかがえる。
規定要因と各エンゲージメントの相関を見ると、「会社支援」(組織エンゲージメントとの相関0.646)と「信頼・互恵」(同0.604)が比較的高くなっており、これらが組織エンゲージメントと特に関係している様子が見て取れる(図表5-1)。
このような相関関係を踏まえ、数値だけで規定要因、エンゲージメント、残留意図の関係性を読み取るのはやや困難であるため、相関関係を分かりやすく図示したのが図表5-2になる。
【図表5-1】規定要因-エンゲージメント-残留意図の相関係数ヒートマップ

左側に規定要因9項目、中央にエンゲージメント3項目、右側に残留意図を配置し、それぞれがつながっている線の色が相関の高さを表している。線が表す相関係数のカラースケールは、相関関係図の下に示すとおりである。
まず、「残留意図」とエンゲージメントの関係性を見ると、「組織エンゲージメント」が紫色の線で残留意図とつながっており、残留意図と最も高い相関を示していることが分かる。「職務エンゲージメント」と「職場エンゲージメント」も赤色の線で残留意図とつながっており、これら2項目も組織エンゲージメントに比べると相関は低いながら、残留意図の向上に一定程度関係していることがうかがえる。
次に、規定要因とエンゲージメントのつながりを見ると、「会社支援」と「信頼・互恵」が組織エンゲージメントと赤色の線でつながっており、これらの項目のスコアが高い新入社員ほど組織エンゲージメントが高い状態にある。(図表5-2)。
これらの関係性を踏まえると、新入社員の残留意図を高めるためには、まず「組織エンゲージメント」の向上を図ることが最も効果的と考えられ、そのためには「会社支援」「信頼・互恵」の評価を高める施策が重要な起点となる。具体的には、新入社員が安心して働けるよう会社としての支援体制を整えるとともに、職場内の信頼関係の構築を促すことが上司・組織に求められるといえるだろう。
【図表5-2】規定要因-エンゲージメント-残留意図の相関関係図

<相関係数カラースケール>
規定要因とエンゲージメント、さらに残留意図との関係性の強さについて、相関係数に基づき図で表示している。

組織エンゲージメント向上のエンジンは「会社支援」や「信頼・互恵」、ネックは?
最後に、残留意図に強く影響する「組織エンゲージメント」の向上に必要な規定要因のポイントを、重回帰分析の結果をもとに解説する。
重回帰分析の結果について、図表6-1で規定要因の各項目の右に記載されている各数値が、「組織エンゲージメントの向上」に対する各項目の相対的な影響の強さを表す標準化偏回帰係数である。この数値が高いほど、影響が強く施策ポイントとなる項目であるといえる。
「組織エンゲージメント」の向上に特に影響が強い規定要因の項目を抽出したところ、最も影響が強いのは「会社支援」(標準化回帰係数0.357)で、他の項目を大きく引き離している。会社が従業員のウェルビーイングや業務上の支援についてどれだけ配慮しているかという実感が、組織エンゲージメントの向上に対して大きな影響力を持つことが改めて示された結果といえる。次いで「信頼・互恵」(0.201)、「処遇」(0.177)、「フィードバック」(0.146)、「重要性」(0.132)の順となっている。「処遇」と「重要性」については、新入社員が自身の仕事の重要性を認識するほどそれに見合う処遇を求める傾向があることから、双方を合わせてフォローする必要があるといえるだろう(図表6-1)。
【図表6-1】組織エンゲージメントに影響する規定要因の抽出

次に、以下のポートフォリオ図によって、組織エンゲージメント向上へのエンジン(源泉)となっている規定要因とネックとなっている規定要因の確認をする。縦軸の「回答スコア」と横軸の「影響度」がともに高い右上の青いエリアには「信頼・互恵」と「会社支援」「重要性」が入っており、現在、組織エンゲージメントの向上に対してエンジンとなっている比較的良好な状態にある項目であることが分かる。一方、「回答スコア」は低く「影響度」は高い右下の赤いエリアには「処遇」が入っており、現在、組織エンゲージメントの向上に対してネックとなっている項目であることが分かる(図表6-2)。
したがって、2025年度新入社員の早期離職を防止するための全体的なポイントとしては、「信頼・互恵」や「会社支援」、「重要性」については引き続き現状維持もしくはさらなる向上を図ることが重要である。その上で、ネックとなっている「処遇」への対応が優先的な課題となる。処遇を直接引き上げることは容易ではないが、自身の仕事の重要性を丁寧に伝えながら処遇への納得感を高める働きかけを、上司が日頃のコミュニケーションの中で意識的に行っていくことが求められるだろう。
【図表6-2】組織エンゲージメント向上へのエンジンとネック

【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】2025年度新入社員のエンゲージメント合同調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2026年2月3日~27日
調査方法:参加申込した企業の新入社員が、各企業専用URLから『エンゲージメントコンパス』にアクセスして回答
調査対象:参加申込した企業に2025年4月より新卒入社された新入社員の方
参加社数:35社
有効回答数:844件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当調査のURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
・引用元名称(調査レポートURL) と引用項目(図表No)
・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp
※本レポートは全体傾向からの分析であり、個別企業ごとの分析では異なる結果となる可能性があります。個別の分析を希望される場合には、HR総研までお問い合わせください。
※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、HR総研までお問合せください。
- 1
