従業員が50人以上になったので産業医を選任しないといけない。ネットを検索すると次々と産業医紹介会社が出てくるが、どれも似たようないいことしか書いていないので、結局どれを選べばいいかわからない。何とか選んだが、今一つの産業医だった。そんなお悩みはありませんか。今回は「自分たちにあった産業医の選び方のコツ」についてお話しします。
【2026年版:産業医選定】「50人の壁」で迷う人事に向けた「失敗しない産業医の選び方」と「質の高い医師を見極めるコツ」

産業医をしたい医師が増えている~産業医紹介会社と独立系産業医の増加

最近、産業医専業、あるいは産業医活動による収入を主にする医師が増加している印象です。具体的な統計等はないのですが、例えばこの業界で最大の学会である「日本産業衛生学会」の参加人数を見てみましょう。2015年に大阪で行われたときの参加人数は3,000人強でした。今年2026年も大阪で行われましたが参加人数は7,000人以上で、10年で参加者が倍以上になっています。

また日本医師会認定産業医資格を取るための講習会はどこも満員です。まさに「産業医ブーム」が来ています。特に若い医師でその傾向が強い様子です。

これには様々な原因があるのですが、根本には既存のキャリアパスに魅力がなくなっていることがあります。大病院に勤める場合、外来や病棟患者を診ることに加え、当直や夜間の呼び出しもあり、給料も平均的なサラリーマンよりちょっと高い程度。つまりワークライフバランスの面から見ると決して魅力的ではありません。

クリニック開業も過当競争になってきています。そんな中、産業医という職は当直もないですし、自分のペースで仕事ができるので魅力的に見えるのでしょう。

「産業医ブーム」に伴って、産業医紹介会社(産業医サポート会社)が増加してきました。こういった会社は、産業医を行いたい医師を集めるとともに、産業医を必要とする企業に営業をかけます。そして企業から報酬を貰い、その一部を産業医に報酬として渡します。

ここで企業としてはどの紹介会社に頼めばいいかがすごく悩むところだと思います。ネットで検索しても、どの紹介会社のホームページもいいことしか書いていません。

最近では若くして独立して産業医事務所を構える医師(独立系産業医)も増えてきましたが、これも紹介会社の場合と同様、ウェブサイトを上手に作りこんでおり、ネットで検索しただけでは実力はよくわかりません。多くの会社と契約しているからいい先生というわけでもないです。

さて、一体ポイントをどこにおいて選べばいいのでしょうか。

産業医の「3つの選び方」

(1)安さをポイントにして紹介会社や産業医事務所を選ぶ

値段だけで割り切るというのも一つの方法です。つまり産業医に払う金は法令に定められたコストにすぎないと考え、より安い産業医を選ぶというやり方です。ただし、安さで選んだ場合どうしても産業医の質は下がる傾向にあります。アルバイト感覚の医師が来ることすらあります。

(2)安さを売りにしていない産業医を選ぶ

産業医に払うのがコストであるという考えの対極にあるのが、従業員の健康を守ることは投資であり企業価値をあげるという考え方です。これは経産省主導で「健康経営」という形で始まり、現在では「人的資本経営」という形で受け継がれています。

経験豊富な独立系産業医は当然高い報酬を掲げています。ある程度しっかりした紹介会社もそれなりの報酬を医師に渡すので、比較的高額ですがおのずとよい産業医が集まってきます。経験の浅い産業医がそのような紹介会社を通じて紹介される場合もありますが、そんな時は、紹介会社自身が産業医に対して手厚いサポートをすることで質を担保しています。

(3)直接探す(つてや口コミなど)

個人的に知っている医師(例えば社長のかかりつけの病院やクリニック)などに打診してみる方法もあります。また、他企業の人事の口コミで評判のいい産業医に依頼するのも一つの手です。

その先生が手いっぱいで新たな案件を引き受けられない可能性は高いですが、知り合いの産業医を推薦してくれることもありますので、断られた際には聞いてみるといいです。

直接の知り合いに医師や産業医がいない、という場合は地域の医師会に訊いてみるのもよいです。これは地域によって温度差があるのですが、積極的な地域では驚くほど上手なマッチングをしてくれます。

「質のいい産業医」を見極めるコツ

高いお金を出しても果たしていい産業医なのか心配、ということもあるでしょう。

そんな時は「労働衛生コンサルタント」か「産業衛生専門医・指導医」を持っていることを確認しましょう。

通常の日本医師会認定産業医の資格はわずか50時間の座学で必ず取れ、この資格だけでは、都会のオフィスの産業医が何とかできるレベルです。

一方、「労働衛生コンサルタント」はある程度産業医を専門にやろうとしている人がとる資格で、有害物対策や熱中症対策等も学ぶ必要があります。合格率約30%程度という狭き門です。また、「産業衛生専門医」は、師匠について一定期間産業医業務を行うことで受験資格が得られるもので、「指導医」はさらにそれの上級資格です。

下記の「これから産業衛生学会専門医を目指す方へ」で地域別の名簿の確認ができます。



どちらも最低限の能力を持っていないと取れない資格ですし、“当たり”の確率もそれなりに高くなります。

産業医と企業の相性が悪いことは両方にとって不幸です。今回書いたことは僕の私見ですが、納得できる産業医を選ぶ一助になれば幸いです。
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