人事には採用、育成、労務など、それぞれの領域で高度な専門性が求められる。しかし、専門知識や経験を積み重ねるだけで、本当に経営や事業の成長に貢献できる人事になれるのだろうか。そのヒントとなる書籍『法務の現場でつかんだ「ビジネスがわかっていない」と言われたら読む本―専門性を組織の力に変える思考法』が6月23日に出版された。同書の著者であり3Mジャパン元社長の経歴を持つ弁護士の宮崎裕子氏は、著書の中で、「重要なのは、専門性を持つことではなく、それを組織やビジネスを動かす力へと変えていくことだ」と語る。そこで今回、宮崎氏にインタビューを敢行し、書籍の中で示されている考え方をもとに、「人事の専門性」をはじめ、事業貢献に向けて人事が持つべき視点や、組織・経営層との向き合い方などを伺った。

プロフィール

  • 宮崎 裕子 氏

    宮崎 裕子 氏

    弁護士法人GIT法律事務所
    弁護士・ニューヨーク州弁護士

    日本および米国の法律事務所で約10年間、企業法務の実務に携わった後、企業の法務部門へ転身。法務リーダーとして組織を牽引したのち、スリーエムジャパン株式会社の代表取締役社長を務める。現在はこれまでの経験を活かし、弁護士として実務を行うとともに、企業の社外取締役や大学講師などを務める。近著に『法務の現場でつかんだ「ビジネスがわかっていない」と言われたら読む本』(中央経済社)がある。

3Mジャパン元社長宮崎氏に聞く「ビジネスがわかっている人事」とは――経営に貢献するうえで大事な「事業・社員との向き合い方」や「対話の仕方」

人事の「専門性」とは何か

――この度出版されたご著書では、「専門性を組織の力に変える思考法」をテーマにされています。人事の方々に向けて、本書はどのようなヒントを与えてくれるのでしょうか。

この本は専門性を持つ人が会社の中でどうすればその力をビジネスに活かし、成果に繫げられるのかを、私自身の経験をもとにまとめたものです。専門性というと、知識や経験を思い浮かべる方も多いでしょう。もちろん、それらは専門性の土台になりますが、知識や経験を持っているだけでは、ビジネスを前に進めることはできません。その間には大きな溝があり、その溝をどう埋めていくのかが、この本には書かれています。とりわけ人事の方には、以下の2つの観点で読んでいただきたいです。

1つ目は、自身の専門性の活かし方です。例えば異動や転職によって環境が変わると、それまで成果を上げてきた知識や経験が思うように活かせなくなるケースがあります。また、ずっと同じ部署で仕事をしていても「自分の専門性があまり役に立っていないのでは」と、何となくモヤモヤされている方もいらっしゃるでしょう。ただ、ここで自分の専門性そのものを疑ってはいけません。大切なのは、「その専門性をいかに組織の力に変えていくか」という視点を持つことです。これは人事の皆さんにも共通する話だと思っています。

そしてもう1つは、人事という立場で専門人材をいかに活かすかということ。最近は専門人材を自社で育成せず、即戦力として外部から採用する企業が増えています。しかし、採用した後は現場任せになってしまい、その人が十分に力を発揮できないケースも少なくありません。現場からは「現場のやり方を無視した正論を押し付けられている」という声があがる一方、採用された専門人材側も「自分の専門性を理解してくれない」と孤立してしまう。それでは組織の力にはなりませんよね。だからこそ人事には、「採用したら終わり」ではなく、専門人材の力を会社の成果に繫げるところまで伴走する役割が求められるのです。この本には、そのためのヒントも提示されています。

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