近年、猛暑日や大型台風、集中豪雨などの異常気象が頻発しています。それに伴い、交通機関の運休や道路の冠水、熱中症リスクの高まりなど、従業員が通常どおり出社することが困難になるケースも増えています。特にこれからの季節、従業員の安全確保と事業継続の両立は、企業の課題の1つと言えるかもしれません。そこで今回は、異常気象時に備え、企業が整備しておきたい制度を解説します。

猛暑・台風時の出社判断基準は? 安全配慮義務の境界線と当日の朝に慌てない「4つの社内制度」の作り方

企業に求められる従業員の「安全配慮義務」

企業には、従業員が心身ともに安全に働けるよう配慮する「安全配慮義務」があります(「労働契約法」第5条)。通勤は業務中ではないため安全配慮義務はないと考えられていますが、過去の裁判例では、過労事故死事件ではあるものの「通勤中の事故にも企業側に安全配慮義務がある」と認められたものがありました。

例えば、気象庁が危険な暑さや暴風雨を警戒するよう呼び掛けているにもかかわらず、特段の配慮なく通常どおりの出社命令を出した結果、従業員が熱中症や事故に遭った場合、企業の対応が問題視される可能性があります。

安全配慮義務の議論を置いておくにしても、通勤災害と認定されることは十分に考えられますし、熱中症や怪我で従業員が長期間休職することは事業にとっても痛手でしょう。信義則上、従業員の安全を第一に考えるのは当然のこととも言えます。

もちろん、事業内容によっては通常どおりに出社させざるを得ない場合もありますが、少しでも危険を回避するための措置を検討し、従業員へ適切な指示を行うことが求められます。

また、近年では夏の気温上昇に伴い、通勤中を含めた熱中症リスクへの対応も重要な課題となっています。気温や湿度が高い日に長時間の徒歩通勤や屋外移動を伴う場合、出社そのものが従業員の健康リスクとなることがあります。2025年6月からは職場における熱中症対策の義務化が始まっています。内容を改めて確認し、今年も従業員への周知をしておきたいところです。

事前に整備しておきたい「4つの社内制度」

出社が困難な場合の制度として、次のようなものが挙げられます。

●テレワーク制度

最も有効な制度の1つがテレワーク制度です。出社を要しないため、従業員は安全を確保しながら業務を継続できます。テレワーク時のルールと共に、ノートPCやクラウドシステムなどの設備も併せて整備しておく必要があります。

●時差出勤制度

台風通過後や交通機関の復旧状況に応じて、始業時刻や終業時刻を柔軟に変更できる制度も有効です。混雑時間帯や気象状態が危険な時間帯を避けて出退勤できるため、通勤時のリスク軽減に繋がります。

●フレックスタイム制

従業員自身で出退勤時間を調整できるため、気象状況や交通機関状況により各々が安全な出退勤時間を決めることができます。異常気象日のみに適用することはできませんが、働きやすさ向上の一環で導入する企業は少なくありません。

●特別休暇制度

異常気象や公共交通機関の運休により出社できない場合に利用できる特別休暇を設ける企業もあります。異常気象時に年次有給休暇の取得を企業が強制することは違法ですし、かといって取得を推奨すると従業員の不満に繋がります。

災害時専用の休暇制度を整備しておくことで安心感を与えることができますし、有給休暇にすれば無理な出社を防ぐ効果も期待できます。

緊急時の判断ルールをあらかじめ決めておく

これらの制度があっても、発動条件が曖昧だと使われないままになりかねません。気象庁の気象警報・注意報や熱中症警戒アラートなども用いながら、具体的な判断基準を定めておくことが重要です。このとき、部署ごとの判断に任せると対応がばらつきやすいため、全社共通ルールとして明確化する運用が望ましいです。

また、通勤時間帯に影響が出そうな気象予報の際には、翌朝の状況を見て判断するのではなく、前日の時点で「明日はテレワーク」「明日は11時出社」のように決めてしまうのも、判断する部門の負担軽減や従業員の安心・働きやすさに繋がります。

退勤時間帯に影響が出そうであれば、帰宅困難者を出さないよう早めの判断を行うことも重要です。帰宅を促すことが危険な状態であれば、施設内待機の必要も出てきます。大型台風時には停電・断水等の発生もあり得るため、判断ルールと併せて、防災備蓄の確認もしておきましょう。

猛暑日や台風などの異常気象は、もはや特別な出来事ではなく、企業が日常的に備えるべきリスクとなっています。災害発生時に慌てて対応を検討するのではなく、出社が難しい日でも安心して働ける環境を平時から整備しておくことが大切です。
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