昨今、多くの日本企業でジョブ型人事制度の導入が加速している。ただし、専門性の高い人材の採用や適材適所の配置がしやすくなる一方で、評価基準の固定化や現場浸透の課題もある。そんな中、KDDI株式会社は、独自の「KDDI版ジョブ型人事制度」を設計し、30の専門領域を153のジョブに細分化。さらに「人間力」を評価軸に加えることで、個人主義に陥りがちな点を克服しつつ、自律的なスキル開発を促進している。内製のスキルアセスメントツールやAIプロンプト活用によるフィードバック支援などを連動させることで現場浸透を進め、高い専門性を持つ社員の育成促進や若手管理職比率の大幅な増加などの成果を生み出した。『KDDI版ジョブ型人事制度』の仕組みやさまざまな独自施策の内容や成果、現場浸透の工夫、今後の展望などについて、人事本部 人事戦略部 エキスパート 栗田 龍帥氏と、人事本部 人財開発部 タレントマネジメント推進グループ グループリーダー 木村 健一氏にお話を伺った。

第10回 HRテクノロジー大賞『人的資本経営部門優秀賞』

KDDI株式会社

スキルが拓く!KDDI版ジョブ型人事制度の現場浸透~プロを創り、育てる~

KDDI版ジョブ型人事制度導入時の30の専門領域を153のジョブに細分化し、各ジョブの必要スキルを定義するとともに、内製開発したアセスメントツールで社員のスキルを定量測定する仕組みを構築。併せて、AIプロンプトの配布やHRダッシュボードなどのテクノロジー支援策の実施により、現場主導の自律的スキル開発を促進。注力領域におけるプロ人財*比率は2年(22年度と24年度の比較)で約15%向上し、若手管理職比率も4年(21年4月と25年4月の比較)で約3倍に増加するなど、人材の適材適所配置と組織全体の生産性向上に寄与する優れた取り組みであると高く評価されました。
*プロ人財:経営基幹職と、基幹職のうちテクニカルスキル評価4以上の高い専門性を発揮する人財

プロフィール

  • 栗田 龍帥 氏

    栗田 龍帥 氏

    KDDI株式会社
    コーポレート統括本部 人事本部
    人事戦略部 エキスパート

    HRテックのベンチャー、総合系コンサルティングファームを経て、2022年にKDDIに入社。中長期的な人事戦略の立案、人的資本開示を担当。また、人事制度改訂や人事組織改革などの人事本部横断でのプロジェクトに従事。

  • 木村 健一 氏

    木村 健一 氏

    KDDI株式会社
    コーポレート統括本部 人事本部
    人財開発部 タレントマネジメント推進グループ グループリーダー

    教育サービス会社、企業向け人財育成サービス会社を経て、2020年にKDDIに入社。KDDI版ジョブ型人事制度の導入に際し、DX人財育成・キャリア施策・階層別施策など、全社の人財育成施策全般に従事。「全社員がなりたい姿や深めたい専門性を見つけ、必要なスキルを自律的に学べる仕組みの構築」を目指して、人財の可視化やKDDI DX Universityの拡大に取り組んでいる。

『KDDI版ジョブ型人事制度』の革新的内容と現場浸透の工夫とは――「153のジョブ細分化×人間力評価×AIフィードバック支援」で自律的スキル開発を促進

ジョブ型人事制度の評価基準に「人間力」を含めた背景

――まず、『KDDI版ジョブ型人事制度』と、その浸透における取り組みの概要を教えていただけますでしょうか。

栗田氏:
一般的なジョブ型人事制度は専門性に報いる仕組みで、ややもすると個人主義的な傾向を想起されるかもしれません。我々が『KDDI版ジョブ型』と冠しているのは、評価基準に「人間力」を含めた建付けにしているからです。

“組織力やチームワークに重きを置いて成果創出に取り組むこと”を大事にしており、個人や組織の垣根を超えて共創を促す仕組みとして建付け、人間力も同時に評価する仕組みを作りました。

浸透において目指したのが、1on1を通じた現場主導のスキル開発です。スキルアセスメントを用いた評価・育成プロセスの構築や、専門領域とジョブの細分化、個々の意思を尊重したキャリアパスの可視化・一元化、多面評価などを連動させています。それに加え、AIなどのテクノロジーを活用することで、フィードバックと育成PDCAを高速化・質向上させ、現場の自律的なスキル開発を促しています。

――『KDDI版ジョブ型人事制度』を最初に導入したのは2020年とのことですが、この制度の導入を決めた背景には何があったのでしょうか。

栗田氏:
2020年当時、KDDIではさまざまな内部課題に取り組んでいるところでした。具体的には、年功的な処遇制度であり、若手を中心に挑戦意欲の低下がみられていたため、意識改革が必要でした。

また、法人DXや金融、エネルギーなどの通信以外の事業拡大にテコ入れをしていくタイミングでした。通信事業を核に置きながら、事業を拡大させていくため、DX、事業戦略やマーケティングといった社外の知見とスキルを持つ専門人財を社外からも集めていました。そして、評価制度を活かして事業成長のドライバーとしての機能を強めていくためにジョブ型人事制度が必要だったという背景があります。

木村氏:戦略として事業拡大をしていく中で、新卒採用入社社員が毎年250~300名おり、同じ程度かそれ以上の人数のキャリア採用入社の社員が入社するようになった時期でもあります。その方々に魅力的に感じてもらい、力を発揮したいと思ってもらうために、ジョブ型人事制度を導入する必要があったことも背景のひとつです。

ただし、ジョブ型人事制度でも「KDDI版」なので、いわゆる欧米型の「ジョブ型」とは異なる点もあります。具体的には、ジョブの専門性だけでなく、組織の一員として協働するためのコミュニケーションといった人間力も評価に組み込まれている点などがあります。

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