2026年4月、「改正労働施策総合推進法」の施行により、治療と仕事の両立支援が努力義務となりました。近年、病気を抱えながら働く従業員は増加し、既に多くの職場でその対応が現実の問題になっています。「病気は個人の問題だから考慮しなくていい」や「努力義務だから後回しでいい」と判断するのはリスクがあることも押さえておきたい点です。そこで今回は、法改正の背景をはじめ、設計すべき3つの制度の実務ポイントを解説します。

2026年4月、「治療と仕事の両立支援」が努力義務化へ。人事が整備すべき“3つの実務”

なぜ今、「治療と仕事の両立支援」が重要なのか

厚生労働省の調査によると、がんの罹患者は約3人に1人が就労可能年齢(20〜64歳)に属しています。さらに糖尿病・高血圧・うつ病などの慢性疾患を抱えながら働く従業員は、医療技術の進歩とともに今後さらに増加すると見込まれています。

従来、こうした従業員への対応は「本人の問題」として、積極的な配慮がされない傾向にありました。その結果として起きているのが、「働き続けたいのに職場の配慮が得られず退職を余儀なくされる」という事態です。

治療中の従業員が退職すると、その損失は単なる欠員にとどまりません。採用・育成コストの損失、ノウハウの流出、そして残された同僚への負荷増大が連鎖します。

加えて、法的なリスクも看過できません。安全配慮義務(「労働契約法」第5条)の観点から、病気を抱える従業員への合理的な配慮を怠った場合、損害賠償請求の対象となることもあります。

「治療と仕事の両立支援」を現場任せにすべきでない理由

こうした従業員に対して、現場で臨機応変に対応してもらうこともできますが、両立支援に関しては現場任せにすることは推奨しません。理由は2つあります。
1つ目は、「どこまで配慮していいか」の判断基準を現場が持っていないことです。善意から過剰な配慮をすれば「差別的扱い」と受け取られる可能性があり、逆に配慮が不十分だと安全配慮義務違反を問われます。判断基準を社内で標準化することが重要です。

2つ目は、プライバシーの問題です。病気の情報は極めてセンシティブな個人情報であり、本人が現場に開示したくないケースは少なくありません。「人事・専用窓口に相談できる」という選択肢を整備することで、従業員が支援を求めやすくなります。

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