休憩・着替え・喫煙・持ち帰り残業に賃金支払は必要?「労働時間と賃金」について解説/社労士監修コラム集

申告・送検状況から見える労務管理の問題
東京労働局が公表した2025年の申告事案(5,056件)のうち、賃金不払によるものが3,996件で全体の約73%に達しています。次に多いのが解雇で539件(約10%)となっており、どちらも前年よりも件数が増えています。ちなみに、業種別で見ると、商業が984件でトップとなっており接客娯楽業(832件)、保健衛生業(581件)と続いています。これらの業種は、シフト制の勤務形態をとっている事業所が多く、勤怠管理が複雑化し、賃金不払の要因となりやすいことが考えられます。
一方、2025年度に東京労働局が送検した司法事件は75件で、申告事案と比較するとごく少数ですが、重大・悪質である事件であると言えます。
送検した理由で一番多いのは、賃金・退職金の不払(15件)で、危険防止措置違反(安衛法違反 11件)と続いています。ただし、労働基準監督署の申告事案が送検にダイレクトに繋がるわけではなく、申告事案の多くは、監督署の指導や是正勧告により改善を促されます。ですが、是正勧告に従わなかったり、悪質な違反を繰り返したりする場合には送検される可能性が高くなります。
したがって、申告事案に該当しないためには、常日頃から「労働基準法」等のルールを理解して運用をすることが重要なのです。
休憩・着替え・喫煙・持ち帰り残業に賃金支払は必要?「労働時間と賃金」について解説/社労士監修コラム集
申告・送検の対象となる「労働基準法」のルール
今回の申告事案で一番多かったのは賃金不払ですが、これは「労働基準法」第24条違反です。(以下、「法○条」と呼びます)法24条では、賃金全額払の原則が定められており、賃金は、税金や社会保険料など所定の控除項目を除いて全額を労働者に支払う必要があります。これは、会社の経営状態に左右されることはなく、また、労働者の勤務態度が悪いからといって一方的に賃金カットをすることが許されないことを意味します。
また、時間外労働(残業)や休日労働を行わせるためには、法36条に基づいた36協定を労使で締結し、所轄労働基準監督署に届け出るプロセスが必須で、法37条に基づいた率以上で計算した割増賃金の支払義務があります。
次に、労働者を解雇する場合には法20条のルールを知っておかなければなりません。つまり、労働者を解雇するときには、原則として解雇日の30日前までに予告をするか、30日分以上の平均賃金に相当する額の解雇予告手当を支払わなければ解雇は成立せず、ルールに則ったものでないと法違反の可能性が発生します。
それでは職場で具体的にどのようなリスクが潜んでいるのか見てみましょう。
職場に潜む法違反のリスクとは
まず、賃金不払について考えられるのは、残業に対する企業の考え方です。たとえば、労働者に対して「始業の30分前までに出勤しなさい」という指示をしていた場合、早出残業として労働時間であると指摘され賃金の支払義務が発生する可能性があります。現在の社会情勢では、制服への着替えの時間も労働時間であると判断される裁判例も出てきていることから、タイムカードを打刻するタイミングも含めて対策を講じる必要があります。
また、たとえば残業時間は毎日30分経過しないと計上しない、という事業場も見られますが、基本的に労働時間は1分ごとに算定されますので、残業時間の計上方法も見直しが必要です。
次に、労働者を万が一解雇する時は、「○月○日をもって、あなたを解雇します」と具体的に通告することが必要で、「明日から来なくていい」などといった、退職勧奨なのか解雇通告なのかどちらにも取れるような発言をしないように注意が必要です。企業側にとっては退職勧奨のつもりであったとしても、労働者から解雇通告と受け取られると、誤解を解くのに非常な労力が必要となります。
いかがでしょうか。労働基準監督署の申告や送検を防止するためには、トラブルが発生してからでは遅いです。日頃から法律に対する正しい知識を身につけて職場の運用に落とし込み、必要に応じてアップデートをすることが求められています。
たとえば、就業規則の定期的な見直しや、職場の勤怠管理のルールのチェックなどを行うと、意外と「これがうちのやり方だ」の要素が残っている可能性があります。
ただ、労働関係の法律は数が多く、複雑に絡み合っていますので、労務管理の改善はお近くの社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。
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