2025年度の年末調整は、これまでと大きく変わります。これまでのいわゆる「103万円の壁」は、“所得税がかからない、扶養のままでいられる状態”を守ろうとすると、賃上げにより労働時間をかなり抑えなければならなくなりました。人手不足の現状も重なり、いよいよ、基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、特定親族特別控除が新設されることで、「103万円の壁」が押し上げられます。2026年1月以後には、給与計算の源泉徴収事務に「源泉控除対象親族」という新しい概念も導入されます。
年収の壁問題や、扶養については、従業員の関心が高いため、人事担当者は問い合わせに回答できるようおさえておきたいところです。ここでは、従来からの変更点と、新しい制度はどのようなものなのかをわかりやすくご説明します。なお、2025年11月までの給与計算や年の途中の年末調整は従来どおり。変わるのは、12月の年末調整からです。

「2025年 年末調整」変更点と新制度まとめ。「年収の壁」引き上げ&特別控除で大学生世代が稼ぎやすく

「基礎控除」、「給与所得控除」の引き上げで従業員本人の「103万円の壁」が引き上げに

「基礎控除」は、改正前は納税者の合計所得金額に応じて「48万円・32万円・16万円」の3段階で控除されていましたが、改正後は合計所得金額に応じて「95万円・88万円・68万円・63万円・58万円」の5段階での控除額に引き上げられます。さらに2027年以降は、合計所得金額に応じて「95万円・58万円」の2段階での控除額となる予定です。

たとえば、合計所得金額が150万円の従業員の基礎控除は88万円、500万円なら63万円が基礎控除額となります。2025年の年末調整では、従業員から提出された「基礎控除申告書」に基づき改正後の基礎控除額で年税額を計算します。自社システムで年末調整計算を行っている場合は、念のためシステムが基礎控除の改正に対応しているか確認しましょう。
基礎控除額
また、「給与所得控除」は、2025年以降、最低額が55万円から65万円に引き上げられました。さらに最低額となる給与収入の水準は、162万5千円以下から190万円以下に変更されます。

結果、アルバイトやパートなどで給与収入が190万円以下の場合の給与所得控除額は65万円となり、基礎控除額95万円を加算すると、160万円までは所得税は非課税となります。したがって、従業員の「103万円」の壁は「160万円」となるわけです。

なお、給与収入が190万円超の場合の改正はありませんので、昨年度と変更ありません。また、この給与所得控除の拡大は、「年収の壁」の所得要件の判定にも影響します。


給与所得控除額

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