今年も熱中症の季節がやってきます。2025年、熱中症対策が安衛則上の義務(安衛則第六百六十二条の二)となりました。2026年、その結果などを受けて厚生労働省が熱中症対策をアップデートし、3月18日に「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を作成しました。今回はこのガイドラインの概要をご説明します。最新の熱中症対策について学んでいきましょう。

【2026年版】職場の熱中症対策はどう変わる? 厚生労働省の新ガイドラインに見る実務の要点

熱中症対策は「早期発見と措置」から「早期発見と措置および発症者の抑制」へ

昨年の安衛則改正時、熱中症対策は早期発見と措置に重点が置かれました(基発0520第6号令和7年5月20日)。

具体的には「WBGT値28℃以上または気温31℃以上の環境で、1日4時間または連続1時間以上働く」労働者対象に、「(1)体制整備」、「(2)手順作成」、「(3)関係者への周知」が定められました。この結果、熱中症による4日以上の休業者は前年に比べ4割増となったものの、死亡者は30人から15人と半減しました。


職場における熱中症による死傷者数の推移
これについて、厚生労働省の「職場における熱中症防止対策に係る検討会」では「昨年の取り組みは一定の効果をあげた」と評価しており、昨年の取り組みを引き続き行うとともに、さらに発症者の抑制に取り組むガイドラインを発表しました。

そこに書かれている取り組み作業は、「1.特にリスクの高い職場、作業の状況把握」、「2.対策づくり」です。

1.特にリスクの高い職場、作業の状況把握

まずは日頃から「あの場所(作業)は暑いよね」と認識されている職場や作業について、リスク要因の有無とWBGT値を確認します。

主なリスク要因は、「(1)高温・多湿な作業環境」、「(2)連続作業」、「(3)通気性や透湿性の低い衣服・保護具」、「(4)身体作業負荷の大きい作業」の4つです。

WBGT値は、直射日光下における作業、炉等の熱源の近くでの作業、冷房設備が無く風通しの悪い屋内における作業については実測が必須です。上記以外の作業の場合は、可能なら実測が望ましいですが、環境省熱中症予防情報サイト等に示される地域を代表する値を参考にしてもよいと思われます。

ここで大切なポイントは、必ず黒球のついている、JIS Z 8504規格の測定器を使用することです。

ちなみに、熱中症の発症者数は、建設業、製造業の他に、運送業、商業、警備業なども多くなっています。オフィスワークメインの職場においても、例えば社の倉庫や外回りなど、意外なところに熱中症リスクが隠れています。空調の効いたオフィスに常にいられる人以外は、職場の熱中症リスクがあると考えましょう。

熱中症対策づくりのポイントは、労使で認識を共有していること

2.対策づくり

特にリスクの高い職場や作業の状況を把握したら、次に対策を立てます。対策は以下の6つに分類されます。

(A)体制の整備
これにはまず中心となる責任者を決めることが重要です(熱中症予防管理者)。衛生管理者(小規模事業場では衛生推進者)が熱中症予防管理者となるのが適当です。

また熱中症、またはその疑いのある者がいるときの報告体制と手順に関しても再度確認しておきましょう。昨年の法令改正に伴ってすでに策定されている場合はそれで十分ですが、未策定の場合は新たに作成する必要があります。

(B)作業環境管理
熱中症予防に一番重要なのはWBGT値を可能な限り下げることです。熱源があれば遮蔽版、通風設備や散水などを考慮します。また休憩場所を整備します。

(C)作業管理
以下のものから状況に応じて行います。

●作業時間の短縮等:WBGT値に合わせて作業の休止時間や休憩時間の確保。
●暑熱順化:暑熱環境に慣れた人は熱中症のかかりにくくなることを暑熱順化と呼びます。暑熱順化には1週間程度かかるので計画的な暑熱順化プログラムを作ります。
●プレクーリング:作業開始前にあらかじめ深部体温を下げ、作業中の体温上昇を抑制することです。作業中の飲水やアイススラリーによるクーリングも有効です。
●水分及び塩分の摂取:作業前後および作業中の定期的な時間に摂取します。
●服装による身体冷却:透湿性・通気性の良い服や身体を冷却する機能を持つ服(空調服や水冷服)による冷却です。
●作業中の巡視:高温多湿作業場所での作業中は巡視や声掛けを頻繁に行い、労働者の健康状態を確認します。ウェアラブルモニターなどの使用も考えていいでしょう。

(D)健康管理
「(1)糖尿病」、「(2)高血圧症」、「(3)心疾患」、「(4)腎不全」、「(5)精神・神経関係の疾患」、「(6)広範囲の皮膚疾患等の持病がある従業員」、また「(7)健康診断で高血圧・血糖異常・尿検査異常のある従業員」については、産業医等に聞いたうえで熱中症リスクのある作業を行わせて問題ないかを判断します。

また睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝食の未摂取等も熱中症発症リスクをあげるので、労働者自身が健康管理に努めるとともに、職長は毎日作業前にこういった熱中症リスクの高い状況にないことを確認します。

(E)労働衛生教育
「(1)熱中症予防管理者」、「(2)職場のリーダー」、「(3)労働者個人」にわけ、それぞれの衛生教育を行います。詳しくはガイドラインをお読みください。特に労働者個人に対する教育は繰り返し行うことが必要です。

(F)異常時の処置
昨年の法改正の時に作ったフローチャートを利用すればよいでしょう。熱中症は初期に軽いと思っても、時間とともに重症化することがあります。決して甘く見ないことが大切です。

以上の対策のうちのどれをどの程度採用するかは事業場によって変わります。重要なのは安全衛生委員会などで労使が共に話し合い、お互いの認識を共有することです。

なお「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド 令和8年3月 ver2.0」もご覧ください。
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