厚生労働省は2026年5月13日、労働条件分科会において「裁量労働制に関する実態調査(案)」を提示した。2024年4月に施行された制度改正の定着状況を把握することを目的とし、同年7月〜8月に事業場・労働者の双方を対象とした調査を実施する予定だ。

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厚生労働省、約7年ぶりに「裁量労働制の実態調査」を実施へ。令和8年7月から企業・労働者双方を対象に

調査の背景——2024年改正から2年、実態把握へ

2024年4月、裁量労働制に関する省令・告示が改正・施行された。専門業務型では新たに本人同意の取得が義務化され、不同意者への不利益取り扱いの禁止、同意撤回手続きの整備、記録の3年間保存が労使協定の必須事項に加わった。企画業務型でも、賃金・評価制度の変更時に労使委員会への説明義務が新設されるなど、労働者保護の観点から制度が大幅に強化された。さらに、専門業務型の対象業務に銀行・証券会社におけるM&A関連の調査・分析・助言業務が追加され、対象業務は計20業種となっている。今回の調査は、こうした改正が現場でどの程度適切に運用されているかを検証するために設計された。調査は独立行政法人・労働政策研究・研修機構が実施主体となり、前回の実態調査(令和元年実施)以来、約7年ぶりの大規模な全国調査となる。

調査の対象と主な調査項目

調査は「事業場調査」と「労働者調査」の2軸で構成される。事業場調査では、裁量労働制を導入している事業場(令和5〜7年に専門業務型の協定を届け出た事業場、令和7年に企画業務型の報告を行った事業場)に加え、制度は未導入でも対象業務に従事する労働者が在籍している事業場も対象に含まれる。労働者調査では、各事業場から専門業務型・企画業務型それぞれ最大10名を無作為抽出する予定だ。主な調査項目は以下の通り。

●みなし労働時間の設定状況
●健康・福祉確保措置(設定内容、措置の結果として適用を外した事例の有無、外れた労働者の処遇)
●本人同意・撤回の運用実態(撤回申出先・方法の設定、撤回後の配置・処遇など)
●労使委員会・過半数代表への説明状況(賃金・評価制度の変更時の説明有無)
●業務遂行における裁量の程度

回答方法は、事業場調査は郵送またはオンライン、労働者調査はオンラインで実施される。

人事部門に求められる、制度運用の再点検

今回の調査は単なる実態把握にとどまらず、今後の制度見直しや行政指導の方向性を左右する可能性がある。特に注目されるのは「本人同意の運用が形骸化していないか」「健康・福祉確保措置が実質的に機能しているか」という点だ。2024年改正への対応が完了していない企業や、記録保存・労使委員会の運営規程の整備が不十分な企業は、調査対象となる前に自主的な見直しを進めることが求められる。裁量労働制の適正運用は、労働者の健康確保と働きがいの両立に直結する重要な経営課題として、引き続き優先的に取り組むべきテーマといえる。

出典:厚生労働省 労働条件分科会(第209回)資料No.2-2「裁量労働制に関する実態調査(案)について」(令和8年5月13日)


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