しかし、HR総研が2025年10月に実施した「ウェルビーイングとAI時代の働き方に関するアンケート【AI時代の働き方編】」(有効回答215件)では、「AIを入れてもウェルビーイングが浸透しない企業」と、「AI活用が社員の幸福感やエンゲージメント向上につながっている企業」の違いが、くっきりとデータに表れた。 分岐点となっていたのは、単なるツール導入の有無ではない。「どの領域で、何を最適化する目的でAIを使うのか」という設計の違いである。本記事では、AI時代における人事の新たな役割について、調査レポートの一部をダイジェストで紹介する。
【HR総研】ウェルビーイングとAI時代の働き方 調査結果レポート【AI時代の働き方編】
大企業ではAI導入が7割超、人事分野での活用が進展【図表2-1、2-2】
人事分野におけるAI・HRテックの導入状況を見ると、企業規模による差が顕著である。 従業員1,001名以上の大企業では「導入している企業」が74%と7割を超える一方、中堅企業(301~1,000名)では37%、中小企業(300名以下)では26%にとどまる。【図表2-1:企業規模別 人事分野へのAIやHRテックの導入状況】

【図表2-2:企業規模別 AIやHRテックを導入している人事分野】

ウェルビーイング浸透企業ほど、AIの「寄与」を実感【図表4-1】
では、AI・HRテック活用は実際にウェルビーイング向上に寄与しているのだろうか。 調査では「AIやデジタルツールの活用が従業員のウェルビーイング向上に寄与しているか」を尋ねている。企業規模別では、大企業の50%が「寄与している」と回答し、中堅企業28%、中小企業29%を上回る。 さらにウェルビーイングの浸透状況別に見ると、差はより鮮明になる。「浸透している企業」では70%が「寄与している」と答える一方、「浸透していない企業」では25%にとどまり、「寄与していない」が4割超に上る。
この結果は、ウェルビーイングが経営戦略・人材戦略と結び付けられ、社員にとっての意味づけがなされている企業ほど、AI活用の効果をポジティブに捉えていることを示している。 単にツールを導入するだけでなく、「ウェルビーイングという目的」から逆算して設計・活用しているかどうかが分かれ目になっていると言えるだろう。
【図表4-1:企業規模別 AIやデジタルツールの活用による「従業員のウェルビーイング向上への寄与」に関する所感】

カギを握るのは「タスク最適化の質」【図表5-4】
調査ではさらに、「事業推進へのAI等活用」「人事分野へのAI等活用」がウェルビーイング推進の社内浸透にどのような影響を与えるかを、媒介分析によって検証している。 ここで注目されるのが、「AIによるタスク最適化」の在り方である。AIによるタスク最適化は、「ルーティンワークからの解放」「ビッグデータからの示唆の抽出」「より迅速かつ適切な意思決定の実現」という3種類に分けて分析されたが、ウェルビーイング浸透に統計的に有意な正の影響を持っていたのは「ビッグデータからの示唆の抽出」のみであった(標準化係数β=0.252)。 一方、「ルーティンワークからの解放」と「迅速な意思決定」については、有意な影響は確認されていない。
この結果は、「業務を効率化する」「処理を速くする」といった表層的な自動化だけでは、ウェルビーイングの社内浸透には直結しにくいことを示唆している。 社員の行動データやサーベイ結果、キャリア情報、勤怠・働き方データなどのビッグデータから有益な示唆を抽出し、それを育成・評価・配置・働き方設計といった具体的施策に落とし込むことで初めて、AI活用がウェルビーイング向上に寄与しやすくなるという構図である。
言い換えるなら、「何を自動化するか」よりも「どのようなインサイトを得て、どの打ち手につなげるか」が問われていると言える。人事がデータに基づき、社員一人ひとりの経験やキャリア、コンディションを立体的に捉えたうえで、適切な施策を設計できるかどうかが、AI時代のウェルビーイング推進における新たな役割となりつつある。
【図表5-4:「ウェルビーイング社内浸透」に影響があるAIによるタスク最適化の種類】

キャリア開発・働き方・コミュニケーションでのAI活用に広がる可能性
人事分野へのAI等活用をもう一段細かく見ると、「キャリア開発支援」「働き方の自由度向上」「社内コミュニケーション自由度向上」という3つのテーマが、ウェルビーイング浸透との関係で分析されている。 本記事で紹介したのは、HR総研「ウェルビーイングとAI時代の働き方に関するアンケート」のうち、AI・HRテック活用とウェルビーイング浸透の関係性に焦点を当てた一部である。 本編レポートでは、企業規模別の詳細データや、浸透企業と非浸透企業の違い、経営層・管理職の関与度合いなど、経営・人事・現場それぞれの打ち手を検討するうえで有用な示唆が多数掲載されている。 自社のウェルビーイング施策とAI活用の「今」を点検し、次の一手を描くためにも、ぜひ全文レポートを参照してほしい。<<メールアドレスだけの無料会員登録をする>>
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