6月の株主総会シーズンが近づいている。ESG説明会やIR Dayの場で、投資家は経営層・人事担当役員に対してこんな質問を投げかけている。「エンゲージメントスコアを役員報酬に紐づけた結果、事業方針に変化は起きましたか」「女性管理職比率が同業他社より低い。このギャップをどう分析していますか」。人的資本に関する質問は今や株主対話の定番テーマだ。その回答を実質的に支えるのは、人事部門が持つデータと分析力にほかならない。

今回は、HR総研・HRテクノロジーコンソーシアム・人的資本と企業価値向上研究会が、2025年9月〜12月に160社を対象とした「人的資本調査2025」を実施調査結果をもとに、株主総会シーズンを前に、その主要結果から人事部門が押さえておくべきポイントをお届けする。詳細な調査結果・図表はレポート本編をご覧いただきたい。
【ダイジェスト】人的資本調査2025――株主総会・IR Dayで投資家は何を聞くのか。人事が今すぐ備えるべきデータと開示の現在地

投資家が注目する「人材戦略の重心」【図表2-1】

人材戦略で最も重視する指標として「エンゲージメント」を挙げた企業は50%に達し、前回調査(2024年)から10ポイント上昇した。育成(28%)、ダイバーシティ(26%)への関心も底堅く、人的資本を競争力の源泉として位置づける姿勢は広がっている。

しかし、エンゲージメントを「測定して改善アクションまで実施している」企業が多い一方、効果検証まで踏み込んでいる割合には業種間で大きな差があり、重視度の高さと実行深度の間にはギャップが残る。育成についても、スキル習得と処遇改善を連動させている企業は4割以下にとどまる。投資家の問いに「施策を実施しています」以上の言葉で答えられるかが問われている。

【図表2-1】人材戦略の中で重要視している指標

【ダイジェスト】人的資本調査2025――株主総会・IR Dayで投資家は何を聞くのか。人事が今すぐ備えるべきデータと開示の現在地

「語れる企業」から「数字で示せる企業」へ【図表3-2】

経営層の関与を示すスコアは3.18と調査項目中最高値を記録し、施策実行は前進している(図表)。61%の企業が経営戦略と連動した人材戦略を外部開示しており、「ストーリーとして語れる企業」は確実に増えた。

【図表3-2】各領域における中項目の取り組み水準平均値

【ダイジェスト】人的資本調査2025――株主総会・IR Dayで投資家は何を聞くのか。人事が今すぐ備えるべきデータと開示の現在地

SSBJ対応の核心、財務接続は1割強にとどまる【図表5-1】

ところが、SSBJ基準が求める「人的資本の取り組みと財務指標の定量的な接続・開示」を実現している企業は、わずか13%。「採用・育成への投資が収益性や成長性にどう影響しているか」を数字で示せる企業は、ごく一部にとどまっているのが現実だ。KPIのリアルタイム可視化ができている企業は8%、データ集計の完全自動化も8%にすぎず、語るための基盤がまだ整っていない。

【図表5-1】財務等へのインパクト可視化

【ダイジェスト】人的資本調査2025――株主総会・IR Dayで投資家は何を聞くのか。人事が今すぐ備えるべきデータと開示の現在地

IR Dayで問われる法定開示3指標の現在地

有価証券報告書への記載が義務づけられ、投資家の比較分析に使われる3指標の現状も確認しておきたい。
●女性管理職比率は全体平均11.9%と微増。金融(18.4%)とメーカー(8.6%)の間には約10ポイントの業種間格差が存在
●男女賃金差異は対男性比71.6%で前回からほぼ横ばい。金融は女性管理職比率が高い一方で賃金差が62.4%と最大の乖離を示しており、「登用」と「報酬」の分断が鮮明に
●男性育休取得率は78.6%と前回比11ポイントの大幅上昇。ただし金融96.7%に対しサービスは65.7%と、業種間で最大30ポイントの差が
※3指標の具体的な調査結果(2024年調査との経年比較と業種ごとの傾向の違い)は本レポートで確認できる。
【調査レポート本編はこちら】人的資本調査2025 結果報告 女性管理職比率は11.9%に上昇も、依然2割未満が中心

人事部門が今すぐ取り組むべきこと

株主総会・IR Dayを前に、人事部門に求められるアクションは明確だ。経営層が投資家の問いに答えるための「根拠データ」を準備するのは人事の仕事である。自社のKPIが現在どの頻度で可視化できているか、財務指標との関連をどこまで言語化できているかを今一度点検したい。開示対応を義務として捉えるのではなく、自社の人材戦略の実効性を高める機会として活かせるかどうかが、これからの人事の腕の見せどころだ。

本記事は「人的資本調査2025」の主要結果をもとに構成した概要版である。業種別・従業員規模別の詳細データや、SSBJ基準・内閣府令改正への対応状況、データ基盤整備の実態など、全設問の結果は調査レポート本編で公開している。自社の現在地を業界水準と照らし合わせる際にぜひご活用いただきたい。

調査レポートの全文はこちらから
【HR総研】人的資本調査2025 結果報告|今後のSSBJ基準等の適用を踏まえた人的資本経営の現在地と、企業価値創造への転換点

【調査概要】
調査名称:人的資本調査2025
調査期間:2025年9月10日〜12月8日
有効回答:160件
調査主体:一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム/一般社団法人 人的資本と企業価値向上研究会/HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場企業・非上場企業を含むすべての企業・団体

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