【カスハラ対策】判断基準・企業に求められる対応・事例を徹底解説/社労士監修コラム集

「カスハラ対策マニュアル」策定における4つのポイント
そこで、各企業が「カスタマーハラスメント防止対応マニュアル」を策定するに当たって避けて通れないのが、「正当なクレーム」と「カスハラ」の線引きをどうするかである。実は、この線引きを「お客様の要求が正しいかどうか」だけで判断するのは極めて危険な対応となる。例えば、「購入した商品が壊れているので交換してほしい」という要求は、通常は正当なクレームだ。一方、その要求を実現するために、従業員を長時間拘束したり、大声で怒鳴ったり、人格を否定する発言を繰り返したりすれば、問題は「要求の内容」から「要求の手段・方法」へと移ってしまう。
したがって、マニュアル策定に当たっては、次のような「4つの確認ポイント」を設けると、現場での判断が容易になる。
(1)要求の内容は何か
(2)要求の手段・態様は社会通念上相当か
(3)時間・回数・継続性に問題はないか
(4)従業員の就業環境を害する状況になっていないか
【カスハラ対策】判断基準・企業に求められる対応・事例を徹底解説/社労士監修コラム集
「最終判断」をするのは現場の従業員ではない
例えば、「説明してほしい」という要求そのものは正当でも、同じ説明を何度も求めて長時間拘束する、深夜や休日に繰り返し電話する、担当者の交代を要求し続ける、といった状況になれば、カスハラに該当する可能性が高まることになる。ここで重要なポイントは、現場の従業員に法律上の最終判断をさせないことである。お客様から強い苦情を受けた従業員が、その場で「これはカスハラです」と判断し、「これ以上対応できません」と言ってしまえば、かえってトラブルを助長する結果にもつながる。そこで、マニュアルには判断基準だけでなく、「迷ったときの行動基準」を明確にしておく必要がある。
例えば、
(1)まず相手の話を聴く
(2)事実関係を確認する
(3)要求内容を整理する
(4)暴言・脅迫・長時間拘束などがある場合は一人で対応しない
(5)上司・責任者へ引き継ぐ
(6)対応経過を記録する
という一連の流れである。
つまり、従業員に求めるのは「カスハラか否かを即断すること」ではなく、「一定の兆候を認識したら、適切にエスカレーションすること」なのである。また、マニュアルには「カスハラの可能性が高い行為」を具体的に例示しておくと効果が高まる。例えば、「大声・威圧的な言動」、「人格を否定する発言」、「脅迫」、「暴力」、「土下座など過度な謝罪の要求」、「長時間の拘束」、「同じ要求の執拗な繰り返し」、「従業員の個人情報を要求する行為」、「SNS等への投稿をほのめかして対応を迫る行為」などである。
ただし、これらの行為だけを見て機械的に判断させないことが重要である。例えば、事故や重大なサービス上の問題が発生し、顧客が強い口調で抗議している場合でも、直ちにカスハラと決めつけるべきではない。カスハラ対策の目的は、「苦情を言わせないこと」ではない。むしろ、正当な苦情を企業の経営改善につなげながら、従業員を不当な要求や攻撃から守ることにあるのである。
フローチャートでエスカレーションのルートを可視化
したがって、企業が整備・運用する「カスタマーハラスメント防止対応マニュアル」は、単なる禁止事項の一覧ではなく、「正当な苦情には誠実に対応する。一方、社会通念上相当な範囲を超える行為には組織として対応する。」ための現場で使いやすい判断・行動ツールとして設計しなければならない。「カスハラの定義」を説明するだけでなく、現場の従業員が迷ったときに「一人で抱え込まず、上司につなぐ」仕組みまで含めてマニュアル化することが、実効性のあるカスハラ対策につながることになるだろう。参考として、マニュアルに次のような現場判断のフローチャートなどを掲載すると、より従業員の理解が進むことになろう。

株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ作成
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