昨今は、さまざまなハラスメント行為が問題視されている。道徳や倫理に反する言動によって、相手に精神的な苦痛を与える「モラハラ(モラルハラスメント)」もその一例と言える。ただ、道徳や倫理に反するとは、具体的にはどのようなケースが該当するのかがわかりにくい。これでは、「『モラハラ(モラルハラスメント)』に注意するように」と社員に呼びかけても、何をどうすれば良いのか理解してもらえないかもしれない。そこで、今回は「モラハラ(モラルハラスメント)」を取り上げ、意味や特徴、具体例も含めて詳しく解説していきたい。
「モラハラ(モラルハラスメント)」の意味や特徴とは? 職場で起こる実際の具体例も解説

「モラハラ(モラルハラスメント)」の意味とは

まずは、「モラハラ(モラルハラスメント)」の意味やもたらす影響などから説明しよう。

●「モラハラ(モラルハラスメント)」とは

「モラハラ(モラルハラスメント)」とは、道徳や倫理から外れた言動や態度による嫌がらせを意味する。無視をする、暴言を吐く、特段の理由もなく不機嫌な態度を取るなどの精神的な暴力が当てはまる。いずれも、職場の従業員同士で起こりえる可能性が十分にある。その特徴としては、2点挙げられる。1つが物理的な暴力行為は伴わないこと。もう1つが相手に精神的なダメージをもたらす行為であることだ。

●「パワハラ」や「セクハラ」との違いについて

職場で問題となりえる「ハラスメント行為」としては、「モラハラ(モラルハラスメント)」以外にも「パワハラ」や「セクハラ」などがある。それぞれが、「モラハラ(モラルハラスメント)」とどう違うのかも紐解いてみたい。

まずは、「パワハラ」とはパワーハラスメントの略語である。職場においては、以下の3つの要件を満たしている言動をいう(労働施策総合推進法30条の2第1項)。

(1)上司と部下、集団と個人など職場上の優越的な立場・関係を背景に行われる
(2)業務上必要であるとともに、相当な範囲を超えて行われる
(3)被害者の就業環境を害する

「パワハラ」と「モラハラ(モラルハラスメント)」との違いとしては、前者は優越的な地位・立場に立つ人が行うが、後者は職場で働く誰もが起こす可能性がある。ちなみに、上司からの「モラハラ(モラルハラスメント)」は、「パワハラ」にも当てはまる。

一方、「セクハラ」とはセクシャルハラスメントの略語で、日本語では性的な嫌がらせと訳される。具体的には、体を触ったり、公の場で性的画像を示したりなどの行為を指す。同じ嫌がらせであっても、「セクハラ」は性的な部分に限定される点が、「モラハラ(モラルハラスメント)」との違いとなる。

●「モラハラ(モラルハラスメント)」がもたらす影響について

「モラハラ(モラルハラスメント)」がもたらす影響について、職場と個人に分けて考えてみたい。

・職場
1点目としては「離職率の増加」が挙げられる。被害者が離職を考えるだけでなく、他の社員にとっても気持ち良く働ける職場とは思えないからだ。2点目は「職場の環境悪化」。雰囲気が悪くなり、従業員のモチベーションも低下してしまう。3点目は「企業イメージの低下」。「モラハラ(モラルハラスメント)」行為がSNSなどを通じて社会に広く知られてしまうと、企業に対する不信感を持たれてしまう。4点目が法的責任だ。「モラハラ(モラルハラスメント)」対策を講じなければ、企業として安全配慮義務や損害賠償責任を問われかねない。

・個人
1つが「ストレスによる体調の悪化」である。精神的なストレスが大きいことが原因で身体も不調になりがちとなり、仕事でのミスが目立ち、それにより自分をますます追い込んでしまう。悪化すると、自殺に至ることもあり得る。たとえ、回復できたとしても後遺症が残ってしまう人もいる。もう1つが「仕事への影響」だ。従来通りに働けず休職せざるを得なかったり、退職してしまったりするケースも珍しくない。

「モラハラ(モラルハラスメント)」とはどんな行為や言葉なのか? 職場で起こる具体例をわかりやすく解説

次に、職場における「モラハラ(モラルハラスメント)」の具体例を取り上げたい。

●仲間外れや無視をする

単独で行うことが前提となるが、特定の同僚を仲間外れにしたり、話しかけられても無視をしたりすることは、「モラハラ(モラルハラスメント)」に該当する。「会議に呼ばない」「会話をしない」「飲み会に誘わない」なども具体例となる。

●仕事の嫌がらせや邪魔をする

必要な情報や備品などを与えない、期間内でこなすのは到底無理な仕事量を課すなど、仕事への妨害行為も「モラハラ(モラルハラスメント)」になりえる可能性がある。高い成果を上げている同僚の悪口を上司に伝え、昇進させなようにすることもその一例だ。

●プライベートに介入する

職場で必要以上にプライベートを暴いたり、愚辱したりするのも、「モラハラ(モラルハラスメント)」に当たる可能性があるので注意を要したい。本人がコメントしたらがないのに、同僚に対して実家の資産額、資産内容を執拗に聞き出そうとするのもNGだ。

●侮辱したり暴言を吐いたりする

相手の人格を否定したり、暴言を吐いたりすることも「モラハラ(モラルハラスメント)」に当たる。例えば、仕事の進め方が非効率的な同僚に向かって「給料ドロボー」「解雇候補」「ばか社員」などと発言することを言う。

「モラハラ(モラルハラスメント」をしやすい加害者の特徴

実は、「モラハラ(モラルハラスメント)」に該当する行為をしやすい人には、いくつかの特徴が見られる。それらを紹介しよう。

●自分に対する自信のなさ

自分に自信がない人ほど「モラハラ(モラルハラスメント)」をしやすい。自信がないからこそ、無視や暴言によって他人を攻撃し、被害者よりも精神的に優位に立ちたいと考えるからである。

●自己中心的

自己中心的な性格で、他人への思いやりに欠ける人は、「モラハラ(モラルハラスメント)」をしやすいと言える。自分が思っている通りにならないと気が済まない。そんな気持ちが言動となって現れてしまうからだ。

●プライドの高さ

プライドの高さも「モラハラ(モラルハラスメント)」をしやすい人に共通している。仕事で実績を上げている同僚がいると、「どうしたら蹴落とすことができるか」と考えてしまう。自分以外が活躍していることを許せないという気持ちになるようだ。

●支配傾向

他人を支配しようとする傾向も窺える。自分の思う通りに操りたいと考えているからだ。そのため、他人の気持ちや人権は度外視し、あたかもモノのように扱ってしまう。

●他責思考

仕事などで上手くいかないことがあった時に、その原因を自分ではなく他人に求めることを他責思考という。この傾向が顕著な人も「モラハラ(モラルハラスメント)」を起こしやすい。イライラしていたり、不満な気持ちを他人にぶつけたりしがちであるからだ。

●感情のコントロールが苦手

感情をコントロールする、しっかりとした理性を持ち合わせていれば「モラハラ(モラルハラスメント)」とは縁遠いはずだ。逆にコントロールが苦手だと、つい衝動的な行動を取ってしまう。

企業や職場における「モラハラ(モラルハラスメント」の対策法

それでは、どうしたら企業や職場における「モラハラ(モラルハラスメント)」を防止することができるのか。対策法を考えてみたい。

●継続的なハラスメント研修の実施

専門家を講師に招いてハラスメント研修を実施することは、有益な施策と言える。どんな言動が「モラハラ(モラルハラスメント)」にあたるのかを理解してもらうだけでも、従業員の意識を一気に高められる。

●ハラスメント防止策の方針の具体化と周知

「モラハラ(モラルハラスメント)」を含め、あらゆるハラスメントを禁止する方針を明確にし、従業員に周知徹底を図ることも有効だ。啓発手段としては、就業規則や社内報、ホームページ、パンフレット、文書、ポスターなどが挙げられる。

●相談の窓口を設置

「モラハラ(モラルハラスメント)」には迅速かつ的確な対応が重要となる。そのためにも、社内にハラスメント全般の相談窓口を設置するようにしたい。被害に遭った従業員が一人で悩んでも、なかなか解決先を導くのは難しいものだ。社内で選任した担当者はもちろん、外部の協力会社(法律事務所、社会保険労務士事務所など)を活用して安心して相談できる体制を作るようにしたい。

●罰則の明示や対応体制の整備

実際に、従業員から「モラハラ(モラルハラスメント)」を受けたという相談が寄せられた際に、会社としていかに対応するかという体制を整備しておくことも重要だ。誰が何を担当するのか、手続きはどうするか、事実関係を確認できた段階で行為者をどう罰するか、さらには再発防止のために何をするのかなども決めておきたい。

「モラハラ(モラルハラスメント」が発生したらどう対処すればよいか

最後に、万が一「モラハラ(モラルハラスメント)」が起きてしまった場合の対処法をまとめておきたい。

●調査やヒアリングなど当事者への事実確認

まず重要なのは、事実関係を調査・確認することだ。「モラハラ(モラルハラスメント)」があったのか・なかったのか、あったとしたらいつどのような行為がなされたのか、誰が加害者または被害者なのか、などを正確に把握する必要がある。

調査に際しては、当事者へのヒアリングを行うべきである。もちろん、被害者だけではない。証拠などを揃えたタイミングで加害者に対しても行うようにしたい。その際には、一方的に悪いと決めつけるのではなく、弁明の機会を設けることも重要となってくる。必要があれば、第三者に話を聞くことも考えたい。

●被害者に対するケア

「モラハラ(モラルハラスメント)」の被害者は、心身でダメージを負っている可能性がある。精神的なショックが大きいようだと、業務にも支障が起きかねないのでしっかりとケアする必要がある。また、もし加害者と被害者が同じ部署であったり、デスクが近かったりする際には、配置転換を行い両者を引き離すようにしたい。いずれも、プライバシーの保護には留意する必要がある。

●加害者に対しての処分

「モラハラ(モラルハラスメント)」に関する事実認定ができた段階で、加害者に対する処分を検討したい。具体的には出勤停止や自宅待機、最悪の場合には懲戒処分も視野に入れなければいけない。その際には、以下の要件を満たしているかどうかをしっかりと確認するようにしたい。

(1)就業規則で懲戒の種類と懲戒事由が定められていて、しかもその内容が従業員に周知されていること。
(2)従業員の行為を踏まえると、懲戒処分は妥当だと認められること。

もし、懲戒権の乱用と見做されてしまうと労働契約法15条に違反することになるので、慎重に検討することが望まれる。

●再発防止に向けた対策

同じ過ちを繰り返さない。これも「モラハラ(モラルハラスメント)」対策としては、定番と言える。そのためにも、再発防止策を策定し実行することが重要となってくる。

検討にあたっては、「モラハラ(モラルハラスメント)」がなぜ発生したのかを徹底的に究明する必要がある。その原因を摘むためには何をしたら良いかを、社内だけでなく弁護士などの外部の専門家も交えて議論するようにしたい。社内のしがらみや論理にとらわれず、より合理的な判断ができるはずだ。また、策定した再発防止策はその内容を従業員向けに周知するとともに、迅速に実施することもポイントとなる。場合によっては、規則の改正を余儀なくされることもあるかもしれないが、スムーズに対応することが重要となる。

まとめ

昭和、令和、平成と時代が変わるに連れて、ハラスメントに対する社会全体の意識はだいぶ高まってきている。旧態依然のままでは、被害者はもちろんのこと、会社にも大きな影響を及ぼしかねないと言っても良い。「モラハラ(モラルハラスメント)」もその代表的な例である。「この程度のことで、こんなにも問題になるとは思ってもみなかった」「自分たちが入社した頃には、これぐらいのことは日常茶飯事だった。騒ぎ過ぎではないか」などの声も聞かれるが、それでは認識が甘い。小さな芽の段階で摘み取っておかないと、予想もしないダメージを受けることになる。人事やマネージャーは、日頃からそうしたリスクに対するアンテナを張っておくようにしたい。
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