A:まず大切なのは、「早期に気づき、早期に声をかける」ことです。
最初のアクションは、上司や人事担当者が本人と1対1で話す場を設けること。ポイントは「体調面から入る」ことです。「最近、体のほうは大丈夫?」、「しんどいことがあれば話してね」など、プレッシャーを与えない言葉を選びましょう。「気合いが足りない」、「気の持ちようだ」は禁物です。
本人が「病院に行きたい」、「しんどい」と言い出したら、受診を促します。主治医から診断書が出た段階で、就業規則に沿って休職の手続きに入ります(就業規則に休職規定がない場合は整備が必要です)。
休職に入ったら、会社として以下を整理しておきましょう。
●休職期間の上限(就業規則に明記)
●休職中の賃金・社会保険料の取り扱い
●復職判断の基準(主治医の診断書+産業医の意見が望ましい)
あわせて、傷病手当金のことも本人に早めに伝えてあげましょう。業務外の病気・けがで休職し給与が出ないときは、連続3日の待期のあと、4日目以降について健康保険から傷病手当金が支給されます。金額の目安は標準報酬日額の3分の2、期間は支給開始日から通算して1年6か月。「無給でも収入の補償がある」と分かるだけで、本人の不安はずいぶん和らぎます。
厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でステップ1〜5の支援フローを公開しています。対応に迷ったら、まずこの手引きを確認することをおすすめします。
A:2020年6月(中小企業は2022年4月)から、すべての事業主にハラスメント防止措置が義務化されています(「労働施策総合推進法」第30条の2)。規模に関わらず、「うちは小さいから関係ない」は通用しません。
一次対応でまずやるべきことは、相談者の話を「聴く」ことです。この段階でやってはいけないのは、その場で判断を下そうとすること。「それってハラスメントなの?」、「本当に?」という言葉は、相談者を追い詰めてしまいます。
一次対応は、次の3ステップで進めます。
(1)相談を受け止める
「話してくれてありがとうございます」とまず受け止めましょう。勇気を出して打ち明けてくれた気持ちを大切に。
(2)どこまで共有してよいかを本人と決める
相談内容を「誰に・どこまで伝えてよいか」を本人と一緒に確認します。
ここで大切なのは、完全な内密扱いは約束できないと正直に伝えること。事実確認に進めば、行為者や関係者への聞き取りが避けられず、相談があったこと自体は一定の範囲に伝わるからです。相談にきちんと対応しようとすると、相談があった事実が、ごく一部の人には必ず伝わってしまう。「誰にも一切知られないまま解決する」は、現実には約束できないのです。
「誰にも言わないで」という気持ちはしっかり受け止めたうえで、「共有する相手は最小限にし、あなたが不利益を受けないように進めます」と具体的に伝えましょう。守れない約束をしないことが、結局は相談者の信頼につながります。
(3)本人の意向を聞く
「どうしてほしいですか?」と確認しましょう。事実確認を進めてほしいのか、まず話を聞いてほしいだけなのか、人によって異なります。
A:ヒアリング時のNGワードは大きく2つに分けられます。
【相談者を疑うNG】
●「それってハラスメントなの?」
●「あなたにも問題があったんじゃない?」
●「気にしすぎじゃないの?」
事実確認は後のステップです。最初のヒアリングで「本当に?」という疑問を投げかけると、相談者は「信じてもらえなかった」と感じ、それ以上話してくれなくなります。
【安易な約束・行為者への言及NG】
●「絶対に守秘します」(完全な守秘は状況によっては難しい)
●「すぐ対処します」(対処方法は事実確認後に決まる)
●「あの人らしくないな」(行為者を擁護する言葉)
●「(行為者に)注意しておくよ」(窓口担当者が個人で約束できることではない)
ヒアリングの目的は、「相談者が安心して話せる場をつくること」です。判断・決定・対処は次のステップ。この段階では「聴く」に徹することが最大の役割です。
相談者が「話してよかった」と感じられるかどうかが、その後の対応を大きく左右します。