HR総研:「若手社員の育成」に関するアンケート 結果レポート~若手育成でAIを使う企業は4割。本格活用は1割未満、現状は教材・資料づくりにとどまる~
企業の将来を担う若手社員の育成は、持続的な成長や組織活性化を実現する上で欠かせない経営課題である。近年は生成AIの登場によって育成のあり方そのものが変わる可能性も指摘されているが、実際の現場ではどこまで浸透しているのか。本調査では、若手社員に求められるスキルの現状、育成成果、具体的な取り組み状況、施策と成果の相関、そしてAI活用の広がりを明らかにするためのアンケートを実施した。調査結果をフリーコメントも含めて以下に報告する(本調査における若手社員は新卒入社5年以内の社員と定義している)。
若手社員の優れている点は「デジタル関連スキル」、企業は「専門知識・コミュニケーション力」を重視
まず、「近年の若手社員について優れていると感じるスキルや能力」については、「デジタルリテラシー・スキル」が最多で35%、次いで「AI・デジタルツール活用力」が32%などとなっている。デジタル関連スキルが、若手社員の強みとして認識されていることがうかがえる(図表1-1)。
【図表1-1】若手社員のスキル評価(優れている点)
次に、「物足りないと感じるスキルや能力」については、「ストレスマネジメント」が最多で39%、次いで「リーダーシップ」が34%、「課題解決力」が31%などとなっている。デジタル関連スキルが高く評価されるのに対し、社会人基礎力やストレスへの対処に関する能力には課題感が示されている(図表1-2)。
【図表1-2】若手社員のスキル評価(物足りない点)
企業が若手社員の育成で重視している能力・スキルについては、「業務の専門知識・技術」が最多で43%、次いで「コミュニケーション力」が42%、「課題解決力」が34%などとなっている。「デジタルリテラシー・スキル」は11%、「AI活用力」は2%であり、若手社員の強みとして評価されるデジタル関連スキルは、企業が重視する能力・スキルの上位には挙がっていない(図表1-3)。企業は専門知識やコミュニケーション力といった業務の土台を固める育成を優先していることが分かる。一方で、「物足りない」の最上位に挙がった「ストレスマネジメント」は重視する能力の上位には入っておらず、不足を感じている能力が必ずしも育成の重点になっていない点は注目される。
【図表1-3】若手社員育成において重視している能力・スキル
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【調査概要】
アンケート名称:【HR総研】「若手社員の育成」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2026年8月19日~25日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・担当者
有効回答:202件(前回238件)
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当調査のURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
・引用元名称(調査レポートURL) と引用項目(図表No)
・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp
※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。
著者:
HR総研
HR総研は働き方・採用・人材育成・マネジメントなどの領域で広く調査を実施し、 その結果を広く社会に共有する調査機関です。
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次に、若手社員育成の成果に対する評価について見てみる。「自社の育成成果」について「成果が出ている」と回答した割合は、「定着率(離職率)」が58%で最も高く、次いで「業務遂行能力」が49%となった。これに対し、「キャリア意識」は31%、「リーダー育成(中核人材育成)」は28%で、10項目中で最も低く、「定着率(離職率)」との差は30ポイントに上る(図表2-1)。「定着率(離職率)」については6割近くの企業が成果を実感している一方、「キャリア意識」や「リーダー育成(中核人材育成)」といった中長期的な成果指標は低位にとどまる。「辞めずに一人前になる」段階までは成果が出ているが、その先の「次の中核を担う人材へ育つ」段階に壁があることがうかがえる。【図表2-1】自社の育成成果の評価続いて、「若手社員育成における課題」について見てみると、「育成効果の見える化ができていない」が44%で最も高く、「体系的な育成計画の策定・実施が不十分」が41%、「育成を担当する上司・先輩の指導力不足」が38%で続いた。育成の仕組みづくりと、現場で指導にあたる人材の力量の両面に課題がみられる(図表2-2)。【図表2-2】若手社員の人材育成の課題(全体)若手社員の人材育成の課題について企業規模別に見てみると、従業員規模301~1,000名の中堅企業では「体系的な育成計画の策定・実施が不十分」が51%、「育成効果の見える化ができていない」も49%と1,001名以上の大企業(49%)と並んで高く、中堅企業における課題感の強さが示された。「十分な予算が確保できない」は300名以下の中小企業で26%となり、大企業の8%を18ポイント上回った。企業規模によって、直面している課題の内容には違いがみられる(図表2-3)。中堅企業は、人員規模の拡大に伴い現場任せの育成では立ち行かなくなる一方で、大企業のような育成体系は整っていない、いわば仕組み化の過渡期にあることが、課題感の強さの背景にあると推察される。【図表2-3】若手社員の人材育成の課題(企業規模別)ここまでの育成成果・課題を踏まえ、企業がどのような体制で若手育成に取り組んでいるかを見てみる。まず、「育成計画の作成有無」については、全体では「作成している」が63%となり、前年調査(67%)からやや低下したものの、大きな変化はないことが分かる(図表3-1)。【図表3-1】育成計画の作成率(全体・経年比較)企業規模別では、育成計画を作成している企業の割合は、大企業で88%、中堅企業で61%、中小企業で43%となった。中小企業と大企業の差は45ポイントであり、企業規模が大きいほど、育成計画を作成している企業の割合が高い(図表3-2)。【図表3-2】育成計画の作成率(企業規模別)次に、「若手社員へのキャリア支援施策」については、「上司との1on1」が最多で63%、次いで「メンター制度の導入」が50%などとなっている。人による対話を中心とした支援が主流であるのに対し、「AIを活用したキャリア面談・キャリア情報提供」は2%にとどまり、AIを用いたキャリア支援はまだほとんど普及していない(図表4-1)。【図表4-1】キャリア支援施策の実施率(全体)企業規模別に見ると、「キャリアデザイン研修の実施」は大企業で54%、中小企業で16%となり、38ポイントの差がみられた。「社内公募制度の導入」も、大企業の42%に対して中小企業は7%で、35ポイントの差となった。研修や公募制度のように人事部門の企画・予算を要する施策は企業規模による差が大きいことが分かる。これに対し、「上司との1on1」は、大企業63%、中堅企業56%、中小企業66%と大きな差はみられず、上司との対話機会は企業規模を問わず実施されていることがうかがえる(図表4-2)。【図表4-2】キャリア支援施策の実施率(企業規模別)「若手社員向け研修の実施内容」では、「業務の専門知識・技術に関する研修」が58%で最も高く、「ビジネスマナー基礎研修」が53%、「コンプライアンス研修」が47%で続く。「AI活用・AIリテラシーに関する研修」は15%にとどまり、研修におけるAI関連の取り組みはまだ限られている(図表5-1)。【図表5-1】若手社員向け研修の実施内容次に、「若手社員育成の具体的な取り組み状況」について、「できている」と回答した企業の割合を見ると、「OJTによる育成体制の整備」が61%、「OFF-JT機会の提供」が59%、「上司との対話機会(1on1・フィードバック等)」が55%となった。OJTやOFF-JT、上司との対話機会といった育成施策は、半数を超える企業で実施されている。一方、「AI活用に関するルールやガイドラインの明示」は40%、「スキルに応じたキャリアパスの明示」は39%、「挑戦的な業務機会の提供」は38%にとどまり、基本的な育成機会は整ってきているものの、育成の個別化や実践的な成長機会の提供はやや手薄になっていることがうかがえる(図表5-2)。【図表5-2】若手社員育成の具体的な取り組み状況次に、若手社員育成の成果と取組み状況との相関関係を見てみる。相関関係とは、二つ以上の事象について一方の数値が増加すると、もう一方の数値が増加または減少するような関係のことである。一方の数値が増加したときに、もう一方の数値も増加する関係にある場合、「正の相関がある」といい、反対に減少する関係にある場合には「負の相関がある」という。相関関係を数値で表す「相関係数」(r)は-1.0~1.0の範囲で値をとり、この相関係数の値が大きいほど強い正の相関があり、0に近づくほど相関が弱い関係であることを表している。10の成果指標のうち、「自己啓発意欲」「組織理解と貢献意欲」「リーダー育成(中核人材育成)」「変化への適応力」の4指標で、最も相関の高い施策は「挑戦的な業務機会の提供」だった。「キャリア意識」でも「スキルに応じたキャリアパスの明示」(0.50)に次ぐ0.46であり、若手の意識や中長期的な成長に関わる成果指標ほど、挑戦機会との関連が強い。一方、「業務遂行能力」「汎用的スキル」といったスキル面の成果は「求めるスキルの定義づけ」との相関が最も高く、何を身につけてほしいかを明示することが能力形成の土台になっていることがうかがえる。「定着率(離職率)」は前年調査と同様、特定の施策と強い相関を示す項目がなく、定着は育成施策だけでなく、処遇や職場環境など育成以外の要因にも左右されることがうかがえる(図表6-1)。【図表6-1】成果指標別 最も相関係数の高い育成施策「挑戦的な業務機会の提供」について、改めて各成果指標との相関を見てみる。幅広い成果指標と正の相関がみられ、特にキャリア意識の向上やリーダー育成を含む中長期的な視点の成果指標と関連が確認できる(図表6-2)。ただし、この施策自体を実施している企業の割合は【図表5-2】で見たように、38%にとどまっており、育成成果との相関が強い「挑戦的な業務機会の提供」という施策が、最も実践されていない施策となっている。若手を中核人材へと育てるには、研修や対話の機会に加えて、現状より少し背伸びを要する業務を意図的に任せる「経験の設計」を組み込むことも重要であると考えられる。【図表6-2】「挑戦的な業務機会の提供」(取り組み)と成果の相関関係続いて、若手育成におけるAI活用の実態について見てみる。若手社員が在籍する企業に育成における「AI活用度」を尋ねたところ、「複数の施策で本格的に活用している」と回答した企業は7%にとどまり、1割を下回った。「一部の施策で試行的に活用している」は35%であり、両者を合わせたAI活用企業は42%となっている。「活用していないが、情報収集・検討を行っている」が28%、「活用しておらず、今後の予定もない」が22%と、全体としては若手育成へのAI活用は導入の入口にある企業が多いことが分かる(図表7-1)。【図表7-1】若手育成におけるAIの活用状況さらに、育成にAIを活用している企業の活用場面を見てみると、「研修の教材や資料づくり」が最多で52%、次いで「研修計画や育成計画づくりのたたき台の作成」が44%、「業務の疑問をAIに質問できる仕組みの導入」「面談・1on1の記録の要約や整理」がともに30%などとなっている。「スキル習得状況の評価・可視化」や「AIを活用したキャリア相談・キャリア情報提供の仕組みの導入」はいずれも1割未満にとどまっている。現時点では、若手本人が学ぶためのAI活用(個別学習の支援や練習相手としての利用など)は少なく、教材・資料作成や育成計画のたたき台作成など、「人事・育成担当者の作業効率化」が主となっている。「若手一人ひとりの成長支援」への活用はこれからの段階にあることがうかがえる(図表7-2)。【図表7-2】若手育成におけるAIの活用場面AI活用度と、育成の個別最適化および育成における上司の負担感との関係を見るため、「複数の施策で本格的に活用している」「一部の施策で試行的に活用している」を合わせたAI活用群と、「活用していないが、情報収集・検討を行っている」「活用しておらず、今後の予定もない」「わからない」を合わせたAI非活用群でクロス集計を行った。その結果、活用群では「能力に合わせた個別育成ができている」が49%であったのに対し、非活用群では37%と、活用群の方が12ポイント高くなっている。また、「上司の負担が軽減できている」はAI活用群では48%に対し、非活用群では30%と、活用群の方が18ポイント高くなっている(図表8-1、図表8-2)。【図表8-1】若手育成におけるAI活用度別の育成の個別最適化状況【図表8-2】若手育成におけるAI活用度別 育成の上司の負担軽減状況最後に、若手社員の育成に関するフリーコメントから、代表的な意見を抜粋して紹介する(図表9)。AI時代の育成については、慎重な活用を求める声と、積極的な活用を進める声の双方が寄せられた。大企業では、ハルシネーションへの警鐘やガバナンスを重視する意見が目立った。中小企業では、積極活用を進める意見と、使用を制限する意見の両方がみられた。【図表9】「AI時代ならではの若手育成」に関する自由意見(一部抜粋)
| AI時代ならではの「若手育成」における工夫 | 従業員規模 | 業種 |
|---|
| 育成や研修のプランニングやアウトプットにおいてAIを用いることはない。そこをAIに頼るならば育成担当者や担当部署は不要である。AIを業務で利活用する際の『在り方』について、本年度から時間をかけてレクチャーし、理解と認識の確認まで行った | 1,001名以上 | メーカー |
| ハルシネーションに関する警鐘が必要 | 1,001名以上 | メーカー |
| AIは答えを出す道具ではなく、自ら考え、検証し、学ぶための『壁打ち相手』として活用する | 1,001名以上 | メーカー |
| Copilot研修を定期的に実施している | 301~1,000名 | 金融 |
| AIが出した答えを自分で検証して確認しないのを防ぎたいので、ある程度使用を禁止している | 300名以下 | 商社・流通 |
| 『AIを使うこと』だけでなく、『AIの回答を確認・判断する力』を身につけてもらうことを重視している。文章作成の下書き等でAIを活用しながら、結果をそのまま使うのではなく、内容の妥当性や根拠を確認する習慣を指導している | 300名以下 | サービス |
| 成果物にAIを使用することはいいが、AI使用前に一度自分で業務の意味を考えるよう指導している | 300名以下 | 電気・ガス・水道・エネルギー |
| 入社時点から生成AIを業務のツールとして利用する前提で、教育計画を作成している | 300名以下 | 情報・通信 |
| AIに代替されない『人間ならではの価値創出』や『AIを使いこなして成果を最大化する実践力』を身につけることを考えて推進している | 300名以下 | メーカー |
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