本コラムにて過去に掲載した、『「賃金のデジタル払い」に向けて企業が準備すべきことや、企業と労働者双方のメリット・デメリットを解説』では、2022年11月時点の情報で、「賃金のデジタル払い」に関するご案内をいたしました。その後、2022年11月28日に新たな情報が更新されましたので、改めて2023年3月時点の情報としてご案内いたします。

【2023年3月最新情報】「賃金のデジタル払い」に向けて企業が準備しておくこと

企業と労働者それぞれのメリット・デメリット

改めて、「賃金のデジタル払い」における企業と労働者双方のメリット・デメリットを確認しましょう。
「賃金のデジタル払い」のメリット・デメリット
なお、メリットの一つと考えられていた「銀行口座の開設が困難な外国人労働者については、代わりに給与をデジタルマネー払いにする」といったことは不可能になりました。口座残高が100万円を超えた場合でも速やかに100万円以下にするための措置として、労働者はあらかじめ送金先となる預貯金口座、または証券総合口座を指定しておく必要があるためです。

「賃金のデジタル払い」に向けて企業が準備しておくこと

2023年4月1日から、資金移動業者が厚生労働大臣に指定申請を行うことができますが、厚生労働大臣が指定した資金移動業者が決定するのは、それから数ヵ月後です。これは、「厚生労働省が申請を受け付けた後に審査を行い、基準を満たしている場合にその事業者を指定する」という過程に数ヵ月かかることが見込まれているためです。

よって、まずは社内アンケートなどで労働者の意識調査をしたり、給与システムの対応の確認をしたりすることから始めてみてはいかがでしょうか。

(1)労働者の意識調査
Q1.資金移動業者口座への賃金支払い(給与のデジタルマネー払い)の希望の有無
Q2.普段利用しているデジタルマネー(全て)
Q3.Q2の中で、頻繁に利用するデジタルマネーと月あたりの利用金額

(2)使用している給与システム等がデジタルマネー払いに対応する予定か確認
対応可能な場合は、手続の流れや費用負担等を確認

(3)企業として、デジタルマネー払いを導入するかどうかを検討
導入する場合は、どの資金移動業者を対象とするのかを確認
(○○PAYと△△PAYなど)

(4)「就業規則(賃金規程)」の改定
賃金に関するルールは、就業規則(賃金規程)に記載

(5)「賃金の口座振込に関する協定書」を結ぶ
賃金デジタル払いの対象となる労働者の範囲や、取扱指定資金移動業者の範囲等について、労働者代表と書面による協定を結ぶ

(6)希望する労働者は「口座振込同意書」を提出
賃金のデジタル払いを希望する個々の労働者は、留意事項等の説明受け、制度を理解した上で、同意書に賃金のデジタル払いで受け取る賃金額や、資金移動業者口座番号、代替口座情報等を記載して、使用者に提出することが必要


(7)賃金支払日に給与明細書を出す
個々の労働者に対しては、所定の賃金支払日に、賃金の支払いに関する計算書(給与明細書)を発行(以下、書面例。筆者作成)

給与明細書 書面例
厚生労働省は、リーフレット、周知用資料、指定資金移動業者一覧等を随時掲載することになっています。また、指定資金移動業者も、企業に振込先として検討してもらえるようなサービスや、労働者が振込先として希望したくなるようなサービスを用意する可能性もありますので、今後の情報を確認していただければと思います。

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