賃上げが「当たり前」になりつつある時代に、格差もまた広がっている。厚生労働省が2026年5月8日に公表した「毎月勤労統計調査 2026年3月分結果速報」では、現金給与総額が51ヵ月連続プラス、実質賃金も4ヵ月連続プラスと、賃金改善の流れが数字に表れた。連合の春闘集計でも賃上げ率5.26%・ベースアップ3.85%と過去最高水準を更新している。だが、この「過去最高」は、すべての職場に等しく届いているわけではない。自社の数字は、どこに位置しているか。
春闘5.26%の実態——厚労省3月勤労統計でわかる「賃上げが届いた会社・届かなかった会社」、自社はどちらか

2つの調査が示すもの。大手と中小・非正規雇用者の実態は?

厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年3月分結果速報」(2026年5月8日公表)では、労働者1人あたりの現金給与総額が前年同月比+2.7%・31万7,254円となり、51ヵ月連続のプラスを記録した 。特に注目すべきは基本給を含む「きまって支給する給与」が3.0%増と、33年11ヵ月ぶりに2ヵ月連続で3%以上の伸びを記録した点だ 。物価上昇を差し引いた実質賃金も+1.3%と4ヵ月連続プラスに転じており、賃金改善の流れが続いていることが政府統計として確認された 。

一方、連合「2026春季生活闘争 第1回回答集計結果」(2026年3月23日発表)では、労働組合の交渉現場でも賃上げが加速していることが示された 。1,100組合の加重平均で賃上げ率は5.26%・17,687円を記録。うちベースアップ(基本給の恒久的な引き上げ)だけで3.85%・13,013円と、2015年の集計開始以来の過去最高水準を更新した 。非正規労働者(有期・短時間・契約等)の時給引き上げ率も6.89%と、正社員を上回る伸びを示している 。

なぜ「賃上げが届かない会社」が生まれるのか

春闘の数字は主に労働組合のある企業の集計だ。組合加入率が低い中小企業・サービス業・介護福祉業では、交渉の土台そのものが存在しないケースも多い。また事業所規模30人以上では現金給与総額が3.2%増と平均を上回る一方 、規模の小さい事業所ほど賃上げの浸透が遅れやすい構造がある。「5%超の賃上げ」という見出しが躍るなかでも、その恩恵が均等に届いているわけではない。

人事が押さえておきたい3つの視点

まず確認したいのが、自社の所定内給与が業種平均と比べてどの位置にあるかという点だ。今回の勤労統計には産業別の賃金データが含まれており、自社の水準と照らし合わせることで、採用競争力や離職リスクを客観的に把握する手がかりになる。「なんとなく賃上げした」で終わらせず、市場との相対感を持っておくことが重要だ。

次に、非正規労働者の時給引き上げ水準も見直す機会にしたい。今春闘では有期・短時間・契約等労働者の賃上げ率が6.89%と、正社員の5.26%を上回った。スポットワーカーや派遣スタッフの確保競争が激化するなか、業界平均から大きく外れた水準が続くようであれば、人材の流出や採用難につながりかねない。

そして、賃上げを「実感できるもの」にする設計も課題として浮かぶ。実質賃金がプラスに転じたとはいえ、物価上昇率との綱引きは続いている。金額を上げるだけでは従業員の生活改善感につながりにくいケースもあり、物価連動型の手当や一時金など、賃上げの「見え方」を工夫することがエンゲージメント維持の一手になるだろう。

賃上げそのものは、今や「やるかどうか」ではなく「どう設計するか」の段階に入っている。春闘の数字が過去最高を更新した今こそ、統計データを自社の処遇設計を見直すきっかけとして活用したい。数字と向き合うことが、次の一手を考える起点になる。

出典:
厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年3月分結果速報」(2026年5月8日公表)

連合「2026春季生活闘争 第1回回答集計結果」(2026年3月23日発表)

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