西日本電信電話株式会社九州支店(以下、NTT西日本)とNTTビジネスソリューションズ株式会社福岡ビジネス営業部は2023年5月25日、福岡県糸島市、株式会社ワールドスタッフィング、障がい者しごと支援センター木の実とともに、2023年3月より、障がい者雇用に向けた「メダカのスマート養殖販売事業」の確立を目指し実証事業を行っていることを公表した。去る5月には、第二弾として定額制販売モデルの調査を開始したとのことだ。併せて、第一弾のトライアルの成果と状況を発表した。
官民連携で“障がい者雇用創出”に向けた「メダカの養殖販売事業」モデルの確立。NTT西日本と糸島市らが協働で、実証は第二弾へ

地域活性化活動として「ICTソリューション」を活用した障がい者支援を目指す

NTT西日本では、西日本30府県域で、地域事業に即した地域活性化活動を展開している。これまでも、地域を取り巻く社会課題の解決に向け、ICTの利活用や地域の顧客・パートナーとの共創を通して、新たな価値創造、持続可能な社会の実現に資する活動に取り組んできたという。その一環として、「福岡県糸島市の自然を活かしたノーマライゼーションの実現」をビジョンに掲げ、糸島市、いとしまちカンパニー合同会社との三者で連携協定を締結。同協定に基づいた取り組みとして、NTTグループが提供するICTソリューションを活用した、障がい者への経済的自立・能力・やりがいを支援する「障害者雇用創出に向けたメダカのスマート養殖販売事業」の確立を目指した本実証事業の実施に至ったとしている。
メダカスマート養殖販売事業の全体イメージ

第一弾のトライアルでは「養殖・障がい者の就業・販売」の観点で実証へ

同事業は、NTT西日本とNTTビジネスソリューションズのほか、福岡県糸満市とワールドスタッフィング、障がい者しごと支援センター木の実との協働で、2023年3月より開始した。

第一弾では、「ICTを活用したメダカの養殖」と「障がい者の就業環境の整備・就業促進」、「販売モデルの確立」の3つを重点に実証を行っている。実際の成果と状況は以下の通りだ。

(1)ICTを活用したメダカの養殖(スマート養殖トライアル)
●ICT利活用による養殖環境の安定化、養殖工程のデジタルマニュアルの整備により、メダカは60匹から1,500匹に増加

(2)障がい者の就業環境の整備・就業促進(障がい者の就業トライアル)
●障がいをもつ人5名を雇用し、就労者の日報作成支援
●健康状態・心理的な気づきを可視化する「成長支援システム」の導入

(3)販売モデルの確立(販売トライアル)
●メダカと水槽のリース、定期メンテナンスをセットにした定額制モデルの販売
●2023年3月、メダカの様子や生産者の想いをWEBで消費者に伝えながら販売する「ライブコマース」を実施、および好評にて終了
●2023年4月より、地域の特産品として「ふるさと納税」の返礼品として出品

第一弾の成果や知見をもとに、先端技術活用を応用した第二弾を開始

こうしたトライアルを経て、2023年5月より、「メダカと水槽のリース」および「定期メンテナンス」をセットにした“定額制販売モデル”(サブスクリプション型ビジネスモデル)の展開を目指し、第二弾の実証事業を開始したとのことだ。

第二弾では、糸満市役所の市長室前に水槽を設置し、来庁者や職員にメダカを鑑賞してもらいながら、水槽のメンテナンスやメダカの世話を障がいのある人が行う。これにより、メダカの鑑賞や市域を通じた社会的価値の効果測定、事業モデルの確認を調査するという。

NTTビジネスソリューションズでは、今後、本実証の成果や知見をもとに、障がいをもつ人が自分の能力を活かしつつ、糸島ならではの環境でメダカを育てることが「糸島しごと」として認知されるよう努めたいとしている。また、スマート養殖のパッケージ化による水平展開やサブスクリプション等による拡大販売、AIやIoTなどの先端技術を用いた新たな価値創造にも取り組んでいきたいとのことだ。

本事例は、ICT利活用と障がい者雇用を組み合わせたモデルケースといえるだろう。事業が確立されれば、新たな雇用創出も目指せるかもしれない。障がい者雇用を推進したい企業では、デジタル技術の活用や自治体・団体との協業も視野に入れながら、障がい者の雇用方法や働き方について検討していきたい。

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