努力が結果に結びつかない経験が積み重なると、人は「変えられる」という感覚そのものを手放していく。それは組織も同じだ。
人的資本経営の開示義務化、戦略人事への転換。経営課題と直結するテーマが人事部門に降り注ぐなか、ダイバーシティ推進を「制度として導入した」はずなのに、組織の空気は変わらない。

人事として、思い当たる場面はないだろうか。会議で誰も異論を言わない、少数意見が「空気を読んで」引っ込む。無自覚なすれ違いや同調圧力、集団浅慮(グループシンク)が静かにイノベーションを阻んでいる。その根底にあるのが、「ここにいていい」という所属感の欠如だ。メンバーが心理的に「居場所がある」と感じているかどうかが、エンゲージメントを大きく左右する。

そこで、本書が提唱するのは、DEIB(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性、Belonging:所属感)という考え方である。従来のDEIに「所属感」を加えたこの概念を、理念や施策論にとどめず、組織開発の実践方法論として体系化している。エンゲージメントが世界最低水準にとどまる構造的背景を解き明かしたうえで、チームに必要な「9つの視点」と、経営戦略から人事制度まで動かせる「5つの取り組み」を提示する。資生堂・JTB・丸井グループの事例を通じて、多様性を「配慮すべき課題」から「競争優位の源泉」へ転換した軌跡も具体的に示されている。

【書籍基本情報】
書籍名:異質を認め合う組織 ~多様性に違和感を感じないためのDEIBのすすめ
出版社:日本能率協会マネジメントセンター
書籍発売日:2026年5月27日
『異質を認め合う組織』加藤守和 (著), 吉田亜希子 (著)(日本能率協会マネジメントセンター)

▼内容紹介

第1章では、日本企業のエンゲージメントが世界最低水準にとどまる背景を、権力格差の大きさ、ハイコンテクスト文化、サイロ化した組織構造などの構造的要因から読み解く。多様性が「諸刃の剣」である理由を示しつつ、先進企業が取り組み始めた「ビロンギング(居場所感)」の要諦を提示する。

第2章では、多様性を組織の力に変えるための「9つの視点」を提示。フォールトライン(断層)への対処、多元的無知の克服、心理的安全性の確保、アンコンシャス・バイアスの克服、EQの育成など、価値創造の基盤となるメカニズムを明らかにする。

第3章では、経営戦略・啓発施策・マネジメント改革・推進体制・人事制度の5領域から実践策を詳述。管理型から支援型へのマネジメント転換、ERGの活用、公平性と透明性を組み込んだ制度設計など、現場で実行可能な施策を網羅する。
(出版社ホームページより/HRプロ編)

▼目次

第1章 なぜ多様性はうまく機能しないのか
日本企業のエンゲージメントレベルは世界の最下位レベル
日本企業のエンゲージメントが低迷する背景と課題
多様性は諸刃の剣 
いま求められる組織開発のカギが「ビロンギングス」 

第2章 これからの組織開発に求められる9つの視点
第3章 DEIB推進のための5つの取り組み

事例編
Case1 個性を組織の力へと転換し、付加価値を創出——株式会社資生堂
Case2 CDEIBOの下に「DEIB推進協議会」を設置——株式会社JTB
Case3 理念・制度・文化を一体で捉えるDEIB経営戦略——株式会社丸井グループ

▼著者プロフィール

【加藤 守和(かとう もりかず)】
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター。事業会社の人事部の他、日系および外資系のファーム数社を経て現職。製造、製薬、広告、ITなど幅広い業界に対して、約20年間の人事コンサルティング経験を持つ。組織設計、人事制度構築、退職金制度構築、M&A、リーダーシップ開発、各種研修企画・運営など、ハードとソフトの両面からの組織・人事改革を支援する。著書に『リーダーになったら知っておきたい12のこと』『日本版ジョブ型人事ハンドブック』『ジョブ型人事制度の教科書』(共著)、(以上日本能率協会マネジメントセンター)、『「日本版ジョブ型」時代のキャリア戦略』(ダイヤモンド社)、『Future of Work』『ウェルビーイング・マネジメント』(以上日経BP)など。

【吉田 亜希子(よしだ あきこ)】
シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社 
DEIB(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン&ビロンギング)関連では、ビジネス戦略・サステナビリティ戦略に基づくダイバーシティ戦略策定、KPI設計、施策検討・推進支援、働き方改革、グローバル人材マネジメント、エンゲージメントサーベイなど、さまざまなテーマに携わる。
また、社内におけるI&Dイニシアチブのコアメンバーとして、方針策定から施策具体化、現場への浸透に至るまで一貫してダイバーシティの検討推進に携わる。社内外のイベントやセミナーにおいても数多くの登壇実績を有する。


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