少子高齢化が加速し労働力不足が深刻化する昨今、女性の活躍推進は企業の持続的成長を支える経営戦略の一手となる。ワークライフバランスの実現や、ライフイベント後も復帰しやすい職場環境、キャリアアップの意欲を高く持てる仕組みが整備されれば、女性が最大限に能力を発揮できるだろう。そのために企業には、家事・育児・介護との両立支援や女性管理職のロールモデルによってキャリアパスを明確化するなど、エンゲージメントを高めるサポート策が求められる。

そこで本稿では、女性活躍推進に関する現状と課題、推進が求められる理由を説きつつ、先進的で独自の取り組みによって成果をあげている7つの企業事例も紹介する。また、女性活躍推進法、えるぼし認定・プラチナえるぼし認定、なでしこ銘柄といった関連制度についても解説していく。
妊娠している女性が働く、女性が活躍する会社のイメージ

女性活躍推進の現状と求められる背景

まずは、なぜ女性活躍推進が必要なのか、基本を押さえておこう。企業での推進の現状と女性活躍が求められる背景について見ていく。

●日本における女性活躍の現状

女性活躍の推進状況を確認できる資料のひとつに、国別の男女格差を数値化した「ジェンダーギャップ指数」がある。2025年の発表では、日本は世界148ヵ国中118位。主要先進7ヵ国だけを見ると最下位という低迷した状況である。

また、「リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)」「エンパワーメント」「労働市場への参加」の3点から男女不平等による潜在的な人間開発の損失を指数化した「ジェンダー不平等指数」では、172ヵ国中22位と高位に入ってしまっている。

国の首相や首都の知事に揃って女性が就任した現在、女性の社会進出は目に見えて進んでいる印象ではあるが、一般従業員として働く人は増えても管理職やマネージャーといった意思決定に携われる女性はまだ少ない。また、女性という性別、妊娠・出産という女性のライフイベントが関連し、社会進出の機会が減少している傾向はあると見ることができるだろう。

【参考】男女共同参画局:男女共同参画に関する国際的な指数

●労働人口の減少

少子高齢化が進み、2030年問題を間近に控えている現在、労働力となる人材確保はどの業種・企業でも直面している喫緊の課題である。この対策として、働く意欲はあるが一時的に仕事から離れている人材の復職や、これまで女性が進出していなかった業種への参画は、労働力確保の大きな一手である。このため女性活躍推進は、企業・社会にとって力強く進めるべきテーマと言える。

●女性活躍推進法の施行

2025年12月23日に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令の一部を改正する省令」及び「事業主行動計画策定指針の一部を改正する件」が公布された。これを「女性活躍推進法」と呼ぶ。

同法は、女性の社会進出だけでなく、男女格差の是正も目的とされており、2022年7月から301人以上の従業員規模の企業は「男女間賃金差異」の情報公表が義務づけられた。2026年4月1日からは、101人以上300人以下の規模でも男女間賃金差異を公表する必要がある。

女性活躍推進法によって企業が受けるのは義務だけでなく、優良企業として認定されることでメリットを得られるものもある。厚生労働省が認める「えるぼし認定」「プラチナえるぼし認定」と、経済産業省の「なでしこ銘柄」である。

【参考】厚生労働省:女性活躍推進法特集ページ

・えるぼし認定・プラチナえるぼし認定とは

「えるぼし認定」とは、女性活躍推進法に基づき一般事業主行動計画の策定と届出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良であるといった一定の条件を満たした企業に与えられる厚生労働省の認定である。認定は、企業の取り組み実績に応じて3段階に分けられている。

企業は、都道府県労働局へ申請し、厚生労働大臣から「えるぼし認定」を受ける。認定企業は、「えるぼし認定マーク」を商品や広告、名刺などに掲示でき、女性活躍推進事業主であるとPRできるだけでなく、優秀な人材の確保に役立ち、企業イメージの向上にもつながる。

2020年6月からは、えるぼし認定を受けた企業の中で、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が特に優良な場合は、最上位の「プラチナえるぼし」に認定される。最優良企業として評価は、主に以下のような項目で基準を満たしているかどうかを見られる。

・男女の採用競争倍率や女性の雇用割合
・女性の管理職比率
・継続勤務年数
・働き方(労働時間、昇進状況など)

【参考】厚生労働省:えるぼし認定とは(PDF)

・なでしこ銘柄とは

「なでしこ銘柄」は、女性活躍推進に関する取り組みに優れた上場企業対し、2012年度から経済産業省と東京証券取引所が共同で選定・付与している認定である。「中長期の企業価値向上」を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として、女性活躍の推進に優れた取り組みを実施している企業を紹介することで、企業への投資を促進する。

企業側としても、なでしこ銘柄として選定されることは、投資を得やすい状況につながるため、女性活躍推進に一層力を入れることが期待される。

【参考】経済産業省:女性活躍に優れた上場企業を選定「なでしこ銘柄」

女性活躍に向けた3つの課題

日本国内で女性活躍推進が遅々として進まない理由として、主に3つの社会的・心理的課題が挙げられる。

●昇進意欲が低い女性が多い

昇進によって管理職に就くとなると、責任や業務負担の大きさ、時間的拘束のために、子育てや家事とのワークライフバランスを保った働き方は難しいと考える女性は多い。

また、パートナー間での「家事分担」という言葉が一般化してだいぶ経つ昨今でも、家事・育児・介護など家庭運営に関わる事柄は女性側が主として担うべきだという「性別役割分担」への意識はまだまだ根強く、社会的にもそのような思考傾向がなくなったとは言えない。

また、内閣府によると、女性は男性に比べて自らの能力を過小評価する傾向があるという調査もある。ブランクの後、自身が管理職を担うだけの能力があるのかという不安や、不当に低い自己評価を抱えがちである。職場復帰への意思はあっても、昇進や管理職候補になることへの意欲は低いという、キャリアの停滞を招いている。これは、後に紹介する「ロールモデルの少なさ」にも結び付いた課題である。

●出産・育児の制度が整っていない

法的・制度的には、出産・育児に対する後押しは促進されていると言えるだろう。1992年に施行された「育児休業法」は、95年には「育児・介護休業法」に改正され、子どもをもつ男女への権利が拡充された。これに伴い、両親ともに育児休業する場合で、子どもが1歳2ヵ月までの間に、母親・父親は最長1年間の育児休業を取得できる「パパ・ママ育休プラス」という制度も始まった。

それにもかかわらず、企業個々を見ると、産休・育休の取得がしにくい風土が根強かったり、乳幼児期の子を抱える人にはつきものとも言える突発的な欠勤発生に対する擁護・フォロー態勢やルールが整っていなかったりというケースは多い。

特に女性側は、産後期・育児期にフルタイムや正社員としての就業、管理職候補となり業務にも重点を置く生活は厳しいと考えてしまう。ワークライフバランスを保ちながら仕事と家事・子育てを両立する困難さが生じているため、社会進出や活躍の場に出ることが叶いづらいのが現状である。

【参考】厚生労働省:パパ・ママ育休プラス

●ロールモデルが少ない

出産・育児というライフイベントを迎えることを決めた女性は、どうしても一度キャリアから離脱せざるを得ない。そのため、男性よりも就業継続期間は短くなる。女性が、育児が落ち着いたころに再就職・キャリア継続の意思を持っても、就業継続期間が短いという傾向から、企業側の採用へのハードルは上がってしまう。さらに、女性の中途採用求人を見ても、管理職候補である総合職は少ない。

こうした背景から、ライフイベントを経て復職したり、中途採用として入社して昇進したりという女性管理職の数は、圧倒的に少ない。ロールモデルとしての女性人材がない職場環境では、「どのようにして業務に携わればよいか」「自分が昇進し、管理職としてやっていけるのか」という未来像が不透明で、挑戦意欲は削がれてしまう。復職はするが、昇進は望まないというジレンマが生じ、昇進意欲の低下も招いている。

女性活躍推進の企業事例

ここからは、独自の取り組みやルール整備などによって女性活躍の推進を大きくリードする企業7社の事例から、その取り組み内容を紹介する。

(1)メルカリ
人事データ活用で、男女間の「説明できない賃金格差」縮小に成功

2022年7月の「女性活躍推進法」改正により、常時雇用する労働者が301人以上の事業主を対象に「男女の賃金差異」を公表することが義務化された。これを受けて、メルカリでは「人事データを活用した男女賃金格差の是正プロジェクト」を発足。

背景として、男女の賃金格差についての議論は20年から開始されており、21年には、スイスに本拠地を置く、職場における多様性・公平性・包括性に関する主要な基準であるEDGE認証の運営団体「EDGE Certified Foundation」が制定した「EDGE Assess(ジェンダー平等のためのグローバル認証)」の取得を目的として社内モニタリングが始まっていた。22年12月、実際に「EDGE Assess」認定取得を果たしている。

男女で賃金格差が生じる理由についての分析から、最大の原因は「入社時のオファー年収の差」であることが判明する。メルカリは中途採用が多い人員構成のため、中途入社時の給与額は前職の年収をベースとして決定していた。この「前職の年収」自体が、女性の方が低年収であるという社会的な傾向に依拠しているため、初任給額の決定時点で、「男女間の説明できない賃金の差」が生じてしまっていた。

採用時のオファープロセスが「説明できない賃金格差」が存在する原因だと特定できたため、前職の年収をベースとしないルール整備を行い、現在でも徹底して運用している。これによって、当時は7%もの開きがあった男女の賃金格差を、2.5%にまで減少させることができた。

【もっと詳しく】取材記事:男女間の「説明できない賃金格差」を7%から2.5%までに縮小――メルカリが挑戦した前例のないデータ活用と報酬制度

(2)資生堂
子育て支援サービス「KANGAROOM+」をはじめ、女性のライフイベントを支援する制度・支援策の整備

資生堂グループは社員の80%以上が女性の企業である。2025年1月時点では、国内グループ会社の女性管理職は41.1%にのぼる。取締役会での女性比率は、同年4月時点で54.5%と半数を超えている。

資生堂グループは、法整備に先駆けて1990年代の初めから「育児休業制度」や「育児による時短勤務制度」を導入しており、女性のライフイベントを支援する制度や支援策をさまざまな形で推進してきた実績がある。その流れの中で、23年4月に「KANGAROOM+(カンガルームプラス)」を開始した。これは、シッターサービスを中心とした総合的な保育サービスだ。

一般的に保育園・こども園などで行われる集団保育ではなく、「KANGAROOM+」は1対1の保育サービスで、時間と場所に自由度が高い。また、小学校就学時に起こりがちな、子どもの帰宅時間の早まりによって勤務時間を短縮せざるを得なくなる、いわゆる「小1の壁」といった問題を克服。育児者のニーズに沿い、保育対象を未就学児から小学生までカバーしている。また、2007年には、美容職社員のなかで、育児のために時短勤務となっているスタッフの代替要員確保の施策として「カンガルースタッフ体制」を導入した。

このような継続的な取り組みの結果、国内の資生堂グループ内では、育児休業後の復職率は93.9%にも登る高水準を維持する結果を出している。

【参考】資生堂:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

(3)イオンモール
子育てしながら働ける事業所内保育施設「イオンゆめみらい保育園」設置

イオンモールでは、複合商業施設という場で、主たる顧客層である女性の持つ思考や意見を理解しやすい女性従業員の管理職登用を重要視している。女性活躍推進への取り組みを開始し、2013年に「女性の働き方委員会」を発足した。

まずは、女性従業員の活躍に必要な制度・体制とは何かを社内で協議し、社外研修への参加や他社の取り組み事例といった情報を収集。さまざまな女性活躍推進の施策の中で設置されたのが、事業所内保育園「イオンゆめみらい保育園」である。「イオンゆめみらい保育園」は、一部のイオンモール施設内に事業所内保育として施設されており、女性従業員が育児をしながら働くことができる環境整備と、スムーズな復職を促している。

また、イオンモールは、この他にも女性がキャリアを断念せず働き続けられる機会の創出、女性活躍推進への取り組みを実施し、女性のライフイベントに配慮し、産後・育児期も働き続けられる環境整備を推進している。代表例としては以下が挙げられる。

・女性の管理職研修やマネジメント研修
・中学校就学前までの子どもがいる人が利用できる育児短時間勤務制度
・週休3日制度

こうした充実した取り組みによって、イオンモールは2023年3月に、女性活躍推進法に基づく厚生労働大臣による「プラチナえるぼし認定」を取得している。

【参考】イオンモール:女性活躍推進法に基づく優良企業として「プラチナえるぼし」認定を取得
【参考】厚生労働省・女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集:イオンモール株式会社

(4)丸井グループ
「女性イキイキ指数」導入で、女性活躍に関する取り組み・進捗状況を見える化

丸井グループは、2023年3月時点で全社員の約45%が女性社員という人員構成。約半数が女性であるため、「意識改革」と「制度作り」の2本立てで女性活躍を推進に対する取り組みを進めてきた。「女性活躍推進に関する行動計画」を策定し、その施策のひとつが「女性イキイキ指数」の設定である。

「女性イキイキ指数」は、2014年3月から丸井グループ内に設定された女性活躍浸透度を測る重点指標である。目標数値を掲げ、取り組みの進捗度合い数値化・可視化することで、女性活躍浸透度は99%まで上昇する結果をもたらした。この副産物として男性社員の育児参加も加速し、男性社員の育休取得率は3年連続で100%を達成する成果を生んだ。

さらに、目標は一度達成したら完結というものではなく、2026年3月を期限とした新たな項目と目標を策定。その結果、男性社員育休取得率100%を6年連続で達成し、男性の育休取得は当たり前という社内文化の定着に至った。

取り組みのさらなる加速のため、育休取得でも特に“出産後間もないタイミング”で一定期間の育休を取得することが、男女ともに、仕事と家庭の持続的な両立には必要である方針から、「産後8週以内の男性の産休取得率」と「男性の育休1カ月以上取得率」の向上を新たな目標値として設定している。

数字という可視化によって、女性活躍を計画的に推進するとともに、男性側の意識改革や社内カルチャーの醸成に成功した例である。今後は、女性が、意思決定層である管理職、マネージャーへ参画できる機会を増やすことを目標としている。

なお、丸井グループの取り組みは「女性活躍推進法」への対応に限らず、「次世代育成支援対策推進法」に基づいた、社員が仕事と育児を両立できる環境整備のための行動計画も定めている。

【参考】マルイグループ:女性の活躍推進
【参考】厚生労働省・女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集:株式会社丸井グループ

(5)味の素
「AjiPanna Academy(アジパンナ・アカデミー)」による女性のキャリア開発・育成

味の素は、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進を掲げる企業であり、日本が、世界各国の中で、日本が特に低い数値・順位で停滞を続けている「ジェンダーギャップ指数」を女性活躍の大きな課題ととらえている。女性活躍の機会を広げる取り組みとしてグループ会社と連携し、2020年7月から、女性人財への機会提供・育成支援施策「AjiPanna Academy(アジパンナ・アカデミー)」を開始した。

「AjiPanna Academy」では、女性が抱えがちだとされている「自己肯定感の低さ」や「過剰に低い自己評価」という心理的課題と、ロールモデルとなる女性管理職がいないという人事構造的な課題、そのような職場環境では挑戦意欲が削がれ昇進意欲も生まれないという悪循環に対し、以下の2点を重点とした対策を講じた。

・管理職登用を見据えた育成プログラムを整備
・身近にロールモデルを持ち、管理職となる未来像を現実的に描ける環境作り

この取り組みは、企業や組織・グループの上司・上長にあたるメンバーからの協力を必須とし、女性社員の初級・上級管理職、単位組織長への登用を着実に進めている。また、女性社員の心理的ハードルを下げ、昇進も考慮に入れた就業姿勢とマインド醸成に効果を発揮している。

【参考】味の素:女性活躍推進
【参考】味の素 ストーリー:女性の基幹職比率30%をめざす!30% Club Japanとは?

(6)小柳建設
建設業初の「プラチナえるぼし認定」取得。衛生パトロールや生理研修による働きやすさの向上

小柳建設は、2023年に、建築業界で初の「プラチナえるぼし認定」を得た企業だ。熟練技術者の高齢化や若手技術者の減少は、技術継承を困難にし、事業継続が危ぶまれるような建設業全体の大きな課題である。まずは、建設業に興味を持ってもらうため、女性や若手が敬遠しがちな建設業の「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージを払拭し、「新3K(給与・休日・希望)」の実現を目指した取り組みを開始した。

・女性目線の現場パトロールで環境改善
・技術者へのキャリアチェンジで活躍の幅が拡大
・生理研修で従業員の意識改善

女性目線を入れて危険で汚い現場を改善するにあたり、「建設現場はこういうものだ」という旧態依然の放置をやめた。このパトロールを通じて女性でも内勤から現場へと配置転換の希望者が現れたこともポジティブな変化だった。現場に女性が出ることで、女性特有の必要な配慮があることを男性従業員が認識したことも、環境改善に大きな影響をもたらした。

これらの改善によって、従業員の男女割合、勤続年数、女性の管理職比率などの項目で、「性別による差が少ない」「従業員の誰もが活躍できる職場環境」として高い評価を得た小柳建設は、「プラチナえるぼし認定」を受けた。

さらに、育児と仕事が両立できる職場環境への認定「プラチナくるみん」、若者が活きいきと活躍し続けられる職場環境として認定される「ユースエール」も獲得。「プラチナくるみん」は、「プラチナえるぼし」と同様に、厚生労働省が認定する「くるみん認定」の中で最上位である。男性が主たる労働力であると考えられがちな建築業界において、女性活躍、若年層の起用、既存従業員のエンゲージメント向上に対して非常に優良な対策を継続的に行っていることがうかがえる。

【参考】小柳建設:全国の建設業で唯一!「プラチナえるぼし」認定!
【参考】厚生労働省・女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集:小柳建設株式会社

(7)ヤマハコーポレートサービス
「New One!!(ニューワン)プロジェクト」による継続的なキャリアアップ支援

ヤマハコーポレートは、「女性活躍推進法」施行を契機に、女性従業員が長く働き、活躍できる雇用環境の整備を開始。当時は、女性従業員比率は高い一方で、女性の管理職割合が低く、管理職を目指す人材も少ない点が課題だった。2019年に少人数の勉強会として発足した「女性活躍推進委員会」が、2024年に若手を中心としていた「New One!!(ニューワン)プロジェクト」に統合。女性のみだった構成メンバーは、性別・年代に関係なく参加できるものとなり、全従業員の活躍のために目指すべき会社像を検討するプロジェクトへと発展した。実績を残した大きな取り組みとしては、以下が挙げられる。

・育児休業の復職直後に直属の所属長と面談、その後に社長と面談
・持続的成長スパイラル継続のための「3つの提言」

上長面談ではフォローアップを兼ねたキャリア面談を行い、復職から1~2カ月後には社長に直接要望を伝えられる機会を設けた。

また、3つの提言とは「社内でキャリアパスを公開する座談会の企画(キャリアパス大公開)」と「グループ会社・工場見学ツアー」、そして「メンタリング」。メンタリングは、事業部長との面談を通して自身のキャリア意識を高めていく取り組みである。入社6年~15年目の女性従業員を対象としていたが、現在は全従業員を対象とし、希望者全員が受けられる。

キャリアアップを支援する取り組みによって、キャリア形成や目標を自発的に思考するマインドが生まれ、浸透した。社長による積極的な関与もあり、働きやすい環境整備や女性活躍推進が加速できた結果、2021年に「プラチナえるぼし認定」を取得した。

【参考】厚生労働省・女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集:株式会社ヤマハコーポレートサービス

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女性活躍推進の5つのポイント

女性活躍推進に取り組みを効果的に行うためには、多角的な視点が重要になってくる。先進企業の事例にも共通している、5つの押さえておくべきポイントを解説していこう。

(1)経営トップによるコミットメントとビジョンの発信

女性活躍推進は、人事部門が主導する施策である以前に、企業の持続的成長を左右する経営課題だ。取り組みを機能させる第一歩は、経営トップ自身がその意義を明確な言葉で示し、社内外に発信し続けることにある。

「なぜ自社に女性の視点が必要なのか」「それがどのように事業競争力につながるのか」——こうしたロジックをトップ自らが語ることで、管理職や男性社員を含めた組織全体の意識変容が促されるはずだ。数値目標の提示にとどまらず、組織文化そのものをアップデートする「構造改革」として位置づけることが、現場の納得感を引き出す鍵となる。

(2)アンコンシャス・バイアスの解消と管理職の意識改革

現場で女性の活躍を阻む要因の一つが、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)である。「育児中の女性に負担をかけてはいけない」という善意の配慮が、結果として重要な業務機会や昇進のチャンスを遠ざけてしまうケースは少なくない。

対策として有効なのは、評価権限を持つ管理職を中心とした全社的な教育だ。性別ではなく、個々の能力やキャリア志向に基づいた配置・評価を徹底するよう、マネジメントのあり方をアップデートしていく必要がある。自分の中にバイアスが存在することを認識したうえで、事実に基づいた客観的な判断を積み重ねる組織文化の醸成が求められる。

(3)ライフイベントに左右されない柔軟な働き方の整備

出産・育児・介護といったライフイベントに直面しても、キャリアの継続を可能にする仕組みの整備は不可欠だ。時短勤務やテレワーク、フレックスタイム制の導入はその基盤となるが、「制度がある」状態から「誰もが気兼ねなく使える」文化へと育てることがより重要になる。

ここで意識したいのは、こうした制度を「女性向けの特例」として運用しないことだ。男性の育児参画を促し、全社員が多様な働き方を選択できる環境を整えることで、業務の属人化が解消され、組織全体の生産性向上にもつながる。制約のある状況でのパフォーマンスを正当に評価する仕組みとあわせて導入することで、安心してキャリアを歩み続けられる環境を整えることができる。

(4)キャリア開発支援による自己効力感の醸成

女性社員が抱えやすい「自信の欠如」や「自己評価の低さ」は、個人の資質の問題ではなく、組織が十分な経験機会や期待を伝えてこなかった結果である場合が多い。将来の管理職登用を見据えた階層別研修や、戦略的な教育投資によるスキルアップ支援が、こうした課題の解消に有効だ。

特に、育休明けの復職直後はキャリアへの不安が高まりやすい時期でもある。フォローアップ面談の実施や、中長期の視点でのキャリアデザイン支援を通じて、個々の歩みを丁寧に後押ししたい。早い段階から期待役割を明示し、ストレッチな経験を積ませることが、「自分にもできる」という感覚を育て、上位職への挑戦意欲を引き出すことにつながる。

(5)多様なロールモデルの可視化とネットワークの構築

「自分に近い境遇で活躍している先例」が見えない環境では、具体的なキャリアパスを描くことは難しい。特定の「スーパーウーマン」だけでなく、育児と両立しながらチームを率いるリーダーや、専門性を深めて活躍するスペシャリストなど、多様なロールモデルを社内で積極的に可視化していくことが重要だ。

あわせて、女性社員同士が悩みを共有し、知見を交換できる社内ネットワークやコミュニティの場を設けることも効果的だ。横のつながりを通じた「代理経験」は、孤独感の解消とキャリア継続への意欲維持に寄与する。社外の交流機会を積極的に設けることも、視野を広げ、管理職としての将来像をよりリアルに描くための刺激となるだろう。

まとめ

女性活躍推進を目指す企業は、ライフステージによって変化せざるを得ない女性のワークライフバランスを理解したうえで、エンゲージメント向上施策を打ち出すことが重要だ。女性の働きやすさに配慮することで、男性を含む全社員の意識や企業カルチャーにポジティブな変化が生まれたケースも多々ある。

女性活躍の推進に必要な取り組みは、大きく分けると「女性従業員の育成」「コミュニティの形成」「働き方(労働時間や環境)の見直し」「制度の見直し」の4項目だと言える。どう働くか、将来的にどのようになりたいかを自律的に思考できるよう人材育成をし、企業に希望を伝えやすいコミュニティを形成することが必須である。人事に携わる人は、女性側の要望と企業が望む人材像をすり合わせ、働き方・制度を改良していく、柔軟な姿勢が求められるだろう。
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