「復職させて大丈夫?」の不安を解消する“診断書の見極め”と再発を防ぐ産業医連携:社労士監修コラム集

ポイントは「復職条件の伝え方」と「復職前のトレーニング」
50人以上の事業場においては産業医の選任義務があり、上手な復職のさせ方についてはそれぞれの産業医の得意な方法があると思います。一方、厚生労働省の「令和7年 労働安全衛生調査」によると、選任義務がない49人以下の事業場においても、30~49人だと14%、10~29人でも6%の事業場が、過去1年間に「メンタルヘルス不調による休職」を経験しています。産業医のいない事業場での「よくある困りごと」は例えば次のようなものです。
「主治医が復職可だというので元の職場に復職させたら、休んでばかりいる」、「主治医が『復職可だが異動を要する』と書いてきたので異動させたところ、また体調が悪くなった」、「診断書に『週3日勤務から始めること』と書いてあったがそんな勤務システムはとれない」
会社としてどのように対応すれば、このような事態を避けることができるでしょうか。
まず基本的なマニュアルとして「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に目を通しましょう。産業医の僕自身も、基本的にはこれに則ったやり方で対応しています。
会社がメンタルヘルス不調による休職者に対応するときのポイントは、「復職条件の伝え方」と「復職前のトレーニング」です。
最初から休職可能期間と復職条件を、本人と主治医に文書として渡す
まず要休職の診断書が提出されたら、最低限の引継ぎだけ行って休職命令を出し、会社から連絡をするのは、人事部などどこか1ヵ所に決めます。休職開始後2週間ぐらいは家でずっと寝てばかりになる人が多いです。これは疲労がたまっているのを心と体が一気に取り戻しているからです。ですので、この時期は仕事の情報などは一切本人の耳に入らないようにします。また、休職命令と同時に、休職可能期間、復職の際の条件(フルタイムか、軽減勤務か、テレワーク可能か、異動できるか)といった就業規則をまとめた命令文書を渡します。言葉だけではなく、必ず文書で渡すのがポイントです。具体的な書き方については、法の専門家の意見をお聞きください。
2週間ほど経ったところで、再度就業規則について説明します。
さらに、「勤務情報を主治医に提供する際の様式例」を使って、“その他の特記事項”の部分に復職条件(命令文書と同じ内容)を書き込んだものを本人から主治医に渡してもらいます。本人を介して主治医と会社が綿密な連携をとることは、スムーズな復職に大変有効です。
仕事もスポーツと同じ~休んだらまずはトレーニングが必要
実は、体調がよくなってきて復職を考え始める頃が、スムーズな復職を可能にする大切な時期になります。スポーツ選手が怪我で休んだら復帰前にトレーニングをするように、働くことも、いったん休んでしまうとトレーニング無しでは元のパフォーマンスは発揮できません。主治医が復職可と診断するのもこの段階、つまり日常生活はできるようになった段階のことが多くあります。働くトレーニングの方法はいくつかありますが、ここでは2つだけ紹介します。
リワーク施設を利用する(一番お勧めです)
リワーク施設とは、メンタルヘルス不調で休職している人にスムーズな職場復帰と再発防止のためのトレーニングプログラムを提供している施設で、クリニックに付属していることもありますし、外部機関もあります。主治医がリワーク施設を紹介してくれないときは、あらかじめ信頼できるリワーク施設を会社が見つけておいて、そこを利用するよう本人に勧めるのもいいでしょう。リワーク施設利用が不可能なときは、「生活記録表」を使って復職準備性を確認する
「生活記録表」は、一日0時から24時まで何をしていたかを毎日書き込めるようになっているものです。導入する際は、「働くことは『出勤時間に間に合うように起きる ⇒ 休憩時間をのぞいて1日7時間半机について作業する ⇒ 帰って眠って翌朝出勤時間に間に合うように起きる ⇒ たまった疲れを土日でリフレッシュする ⇒ 次の月曜が来る。これを繰り返す』ことですよね」と説明するといいでしょう。
その上で、まずは仕事に間に合うための起床時間、模擬作業をする場所、作業内容を決めます。あくまで働く訓練なので、家事や散歩、動画やTVの視聴は作業に含めません。読書の場合は内容をまとめるという作業をすることが多いです。作業は1種類では飽きるので、3種類ほど準備します。土日は自由時間ですので書く必要はありません。
付け始めて数週間は朝起きられないなどありますが、そのうちきちんとこなせるようになります。2週間きちんと整った生活記録表が書ければ復職への準備完了です。
なお生活記録表を付けてもらうことについては、本人を通じて主治医に許可を取ったほうがいいでしょう。
産業医がいない事業場の場合、産業医という会社と本人の間の中立的存在がいない、再び休職することを防ぐための復職後のフォローが難しい、といった点が懸念されます。このため、選任義務がない事業場では、産業保健に詳しい医師と「顧問医」という形で安く契約しておき、万一休職者が出た時には復職支援業務を手伝ってもらう、という方法も一考に値するでしょう。
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