リーダーが判断ミスを犯したとき、その後の言動次第で組織環境は大きく変化する傾向にある。職場の雰囲気が悪化することもあれば、改善することもあるものだ。組織運営の現場では、リーダーの決断が常に正しいとは限らない。それでは、自分の判断・指示が適切性を欠いたと気付いたリーダーは、どのような対応を取るのが好ましいだろうか。今回はこの点を考察してみよう。
第12回:職場の雰囲気を悪化させる「無意識の責任転嫁」とは? “判断ミスを素直に認められるリーダー”が信頼される理由

「失敗の原因は部下にある」と考えるリーダー

具体例で考えてみよう。

広告宣伝部を統括するリーダーが、新しいプロモーションイベントを発案した。部下は指示に従って企画を実行に移したが、予想に反してイベントは十分な費用対効果を得られずに終了。リーダーはイベント運営に問題があったと考え、部下に反省を促した。しかしながら、指示されたとおりに運営をした部下としては、反省を促すリーダーの言動に内心では納得がいかない。その後、職場の雰囲気が怪しくなり始めた。

イベントの不調にはさまざまな要因が考えられる。もちろん、部下のイベント運営に問題があったかもしれない。ただし、リーダーが発案した企画自体に問題があった可能性も、否定はできないはずである。

ところが、このような状況に直面したとき、得てして多くのリーダーは「原因は部下の側にある」などと考えがちだ。「原因は自分の企画内容にある」などとは、思いもつかないものである。なぜ、リーダーはそのような状況に陥るのだろうか。

失敗の原因を自分以外に求める心理傾向

ヒトには「成功は自分のおかげ、失敗は自分以外の責任」と考える心理傾向が存在する。上手くいけばその要因を自身の能力や努力に求め、上手くいかなければ外部環境や第三者に求めがちである。このような現象を自己奉仕バイアスと呼ぶ。

イベントの不調に直面した前述のリーダーの心理も同様である。「失敗は自分以外の責任」という考えが意図せず芽生え、イベント運営に問題があったとの分析から部下に反省を促したわけである。

このような心の現象は、自尊心を守るための防衛機能として備わっているといわれる。「失敗は自分の責任である」とは考えないことにより、心が壊れるのを回避しているわけだ。

また、リーダーという立場にある人ほど、「自らの判断ミスを認めると評価や威信が損なわれる」と感じやすい。その結果、自身の意思決定には問題がなかったと解釈しがちである。

「自分の意思決定の是非」も振り返る習慣を

ヒトは誰しも成功の要因は自分に求め、失敗の要因は自分以外に求めやすい。しかしながら、リーダーがこの心理傾向を強く持つ場合は、組織運営に支障を来すことがあるので注意が必要だ。自己奉仕バイアスが強いリーダーの言動は、部下の立場から見れば「いいとこどり」、「責任転嫁」などと解釈されるだろう。その結果、職場の雰囲気や部下のモチベーションにマイナスの影響を及ぼしかねないものだ。

そのような状況に陥らないためには、自分の判断や指示の是非についても振り返る習慣を持つことが有効である。前述のケースであれば、「イベントの不調の原因は、リーダーである自分の企画内容にはないだろうか」と考えることである。このような視点も持つことができれば原因の究明が適切に行え、部下に対して不必要に反省を促すこともなくなる。

トラブルに直面したとき、「部下・環境などに責任がある」と考えるリーダーは少なくない。しかしながら、組織を統括する立場にいる場合には、「自身の言動にトラブルの発生原因が存在することはないだろうか」と常に振り返る習慣を身に付けることが重要である。

「失敗しないリーダー」よりも「失敗を認め、謝れるリーダー」に

自身の意思決定の是非を振り返った結果、問題があったことに気付いたリーダーはどうしたらよいだろうか。ここで重要なのは部下に自分の判断ミス・指示の不備などを素直に認め、必要であれば謝罪をすることである。「私の判断が不適切で、イベントが不調に終わってしまった。申し訳なかった」などと頭を下げられることが、その後に部下から前向きな行動を引き出す原動力となる。

ところが、リーダーの中には自分の誤りに気付かない振りをしたり、「実務に携わっていない私が間違えるのは当然だろう」などと開き直ったりするケースも見られる。このように自身の非は認めず、責任を転嫁するような発言・行動をとるリーダーに対し、部下はマイナス感情しか持たない。そのような言動が行われる職場で、誰もが気持ちよく働ける環境を期待するのは困難である。

なかには、「上司が部下に謝る必要はない」、「部下に頭を下げるのは、上席者の沽券(こけん)にかかわる」などと考えるリーダーもいるようだ。一種の権威意識がそうさせるのかもしれない。しかしながら、上司・部下などの概念は、単に企業内の役割分担を示す呼称に過ぎない。したがって、たとえリーダーであったとしても、判断を誤った場合には部下に対し、誠意を持って謝罪する姿勢が必要である。

「自身の意思決定には問題がなかったか」を率直に振り返る。その結果、誤りがあれば素直に認め、必要であれば部下に謝罪する。そのような姿勢こそが上司と部下の好ましい関係性を醸成し、職場に安心感・信頼感を生むのである。その結果、部下も失敗を隠さず共有しやすくなり、問題の早期発見や再発防止が進みやすい組織風土が構築できるだろう。

部下が信頼するのは「失敗しないリーダー」ではない。「失敗を認め、謝れるリーダー」である。自身の失敗を素直に認めて謝れるリーダーこそが、活性化された組織づくりを進められるといえよう。
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