ProFuture代表の寺澤です。
HR総研では、今年も就活会議株式会社が運営する就活生向けクチコミサイト「就活会議」と共催で、2027年卒採用を実施した企業の新卒採用担当者と2027年卒の就活生を対象として、これまでの採用活動や就職活動を振り返って、それぞれの目線からの印象深いエピソードをテーマにした「2027年卒 採用川柳・短歌」と「2027年卒 就活川柳・短歌」を6~7月に募集しました。

今年の新卒採用戦線は、労働人口の減少を背景とした「超売り手市場」が極限に達し、企業と学生のパワーバランスに関する地殻変動がより鮮明となりました。採用競争力を維持するための「初任給の高騰」は企業の財務や社内秩序を揺るがし、インターンシップの事実上の本選考化による採用活動の「超早期化」は、アプローチ対象を低学年へと押し下げています。さらに、生成AIによる「完璧な武装」を施した学生をどう見極め、内定辞退の嵐の中でいかに持続的な関係を築くかという、かつてない多面的な防衛戦に人事は直面しています。

近時のこのようなトレンドを反映するように、採用担当者や就活生から寄せられた作品には「AI」や「早期化」をテーマにしたものが数多く見られましたが、「Z世代」や「内定辞退」などをユニークな視点でユーモラスに表現した作品も入選作品に選ばれました。
第185回 【2027年卒 採用川柳・就活川柳】「初任給 アップで先輩 モチベダウン」――AI・早期化に揺れる採用現場のリアル

初任給高騰と“AI防御”が生む「人事の新たなジレンマ」

まずは、採用担当者による「2027年卒 採用川柳・短歌」の入選作品から紹介します。

今年度の【最優秀賞】は、深刻な人手不足を背景とした初任給高騰の波が既存の組織体制に与えている「深刻な副作用」を、ユーモラスに切り取った傑作を選出しました。

初任給 アップで先輩 モチベダウン(東京都 ARK太郎さん)

新卒採用における競争力を確保するため、多くの企業が必死の思いで「初任給の大幅な引き上げ」に踏み切っています。しかし、その決断が既存の先輩社員たちの「モチベーション低下」という形でブーメランのように返ってくる、現代の組織運営が抱える深刻なゆがみを描写した見事な一句です。

長年会社に貢献してきた中堅・ベテラン層は置いてけぼりのまま、実績のない新人の給与だけが急激に跳ね上がる。その結果、社内には給与の逆転現象や拭い難い不公平感がまん延していく。採用市場における「見栄え」を最優先せざるを得ない人事の苦肉の策が、結果として現場のエンゲージメント低下を招くという構造的な矛盾と皮肉が、「アップ」「ダウン」の見事な対比と洗練された五七五のリズムによって絶妙に表現されています。

「新卒獲得という外部要因」が、社内の人事制度や従業員の心理的安全性に深刻な地殻変動をもたらしている実態をストレートに風刺しており、労働市場の劇的な変化に伴う企業側のリアルな悲哀とひずみを冷静に批評する、本アワードの頂点にふさわしい極めて高い完成度を誇る出来栄えです。

続いて、【優秀賞】に選出された一首を紹介しましょう。選考の効率化が進む裏で、人事が直面している「対話の空洞化」という難題を、情緒豊かな調べに乗せて表現しています。

鉄壁の AI防御に 隠れてる 君のペルソナ どこに捜せば(東京都 ももんが3号さん)

生成AIの普及と高度化により、エントリーシート作成から面接の想定問答に至るまで、学生側が完璧に取り繕った「模範的な回答」を瞬時に用意することが容易になった現代の採用戦線。「鉄壁のAI防御」という、非常に強固な防壁を思わせる現代的な比喩表現は、テクノロジーによって高度に均一化・最適化された応募書類の客観的な実態を鮮やかに言い当てています。企業側が求めるペルソナ(理想の人物像)に完全に擬態し、一切の欠点がないロジックで武装された学生を前にして、面接官はその虚飾の奥に隠された「生身の個性」や「本来の人間性」をいかにして掘り起こせばよいのかという、深い困惑と焦燥に苛(さいな)まれることになります。

技術がもたらす書類作成の効率化という恩恵の影で、採用選考の本来的な存在意義であるはずの「人間性の見極め」が、実質的な機能不全に陥っているという構造的なリスクと限界を、短歌の情緒的な調べに乗せて見事に表現した、批評性の極めて高い一首です。

内定辞退と超早期化の中で問われる「生身の対話」

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