「効率化の名のもとに、採用が血の通っていないものになってしまうのではないか」——採用を一手に担う竹田純香氏がそう語るように、同社の採用哲学の根幹にあるのは、大学・キャリアセンターとの人間的な関係構築。1回10分の面談を最大限に活用するための準備と対話の工夫、そしてフォーラムをきっかけに広がる学内広報への展開まで、地方の中堅企業が実践する「温かい採用」のリアルに迫ります。
【ゲスト】

竹田 純香氏
三協テック株式会社 採用担当
富山生まれ富山育ち、滋賀大学経済学部ファイナンス学科卒業。新卒就活は「氷河期世代」。新卒で地元・北陸の出版社へ入社、主に求人広告の営業に携わる。その後、富山県内の民放テレビ局を経て2015年に三井不動産商業マネジメントへ。北陸初のアウトレットモールの開業準備室に配属される。開業後は同施設でのテナント管理、販売促進など施設運営全般に関わるなかで、スタッフの採用・研修・育成に興味を持つ。2019年に三協テックへ入社以降は、興味を持っていた人事分野がメインの業務となった。新卒採用では「インターンシップから選考→内定→入社→研修→配属まで」最長2年の伴走をモットーにしている。人生の目標は【生涯現役】。国家資格キャリアコンサルタント/CDA(Career Development Adviser)。

Q1. 主要な事業内容と会社の特長
弊社は、アルミ建材の業界大手「三協立山株式会社」の100%出資による販売会社で、住宅・ビル用の建材から室内建具、エクステリア商品、住宅設備機器まで幅広い製品を取り扱う総合建材商社です。建築・設計関係のお客様や流通業者様に対し、商品の提案から加工、販売、アフターメインテナンスまで一貫して行っているところが弊社の特徴です。拠点は北海道・旭川から九州・宮崎まで全国に展開し、各地域に密着した営業を大切にしてきました。
人員配置では、お客様と社員、双方の安心を第一に考え、一人の担当者が同じエリアを長く担当できる体制を整えています。頻繁な転勤や異動がないからこそ、お客様はもちろん、社員同士においても非常に強固な信頼関係やつながりを持って働くことができる、そんな会社です。
福利厚生面では東証プライム上場企業でもある親会社の制度を取り入れており、年間休日123日の確保、入社初日から10日の有給休暇付与に加え、「傷病有給休暇」制度(最大20日)なども整備しています。社員が健やかに働ける環境づくりを何よりも心がけています。
Q2. 求める人物像
私たちは、人物重視の採用活動を行っています。まず基本として、物事に素直で真面目に取り組める方を求めています。
ただ、私がいつも学生の皆さんにお伝えしているのは、「真面目すぎなくてもいい」ということです。どこか心に余裕や「遊び」があり、ガチガチに固まりすぎない。そんなしなやかさを持った方に魅力を感じます。
私たちの仕事は、地域のお客様だけでなく、現場を支えてくれる大工さんや職人さんなど、非常に多くの方々と接する仕事です。だからこそ大切になるのが、周囲から「あなたにお願いされたら仕方ないな」と思ってもらえるような、愛嬌のある人柄です。
入社前に「建築図面が読めること」や「資格を持っていること」は求めていません。専門的な技能は、入社してからじっくり学んでいけば大丈夫です。それよりも、人としての「伸びしろ」を感じさせてくれるような、そんな学生を求めています。
Q3. 新卒採用活動の状況
2026年卒採用に関しましては、想定以上の内定者数を確保できています。 以前は別のナビサイトを利用していましたが、母集団形成に非常に苦労した経験があります。全国に80拠点以上もあることで、「全国転勤が避けられない会社」というイメージを持たれがちでした。もちろん転勤を希望する方は歓迎ですが、近年は勤務地にこだわる学生が増えており、このギャップの調整が難しいと感じています。弊社の根幹は、「地域に密着し、地元の方々と信頼関係を築く」という経営方針です。数年ごとに拠点を転々とするようでは、地域に深く根ざした信頼を勝ち取ることは難しいと考えています。そのため、一度配属された拠点には、出身に関わらず5年、10年といった単位で長く腰を据えてほしいという思いがあります。
過去には、「いずれ地元へ帰りたい」という思いから早期退職につながってしまうケースが少なくなく、受け入れ側の社員も「どうせいつかは離れてしまう」という感覚を持ち、教育のモチベーションが上がらないという場面も見受けられました。
そのため、現在は「その土地に縁のある方」を積極的に採用したいと考えています。
ただ全国規模ゆえ、エリアによって採用難易度に差があり、そのバランスをどうとるかが引き続き課題です。
Q4. 現在の採用体制
現在の新卒採用の体制は、私一人ですべての業務を回しています。 全国展開していて、採用数も20名規模にのぼる会社としては非常に珍しく、他社の方からもすごく驚かれます(笑)。例えば、就職イベントへの参画から、会社説明会の実施、面接、応募学生へのメール対応、そして内定者フォローに至るまで、すべてを私が一貫して担当しています。そのため、長い方だとインターンシップ・仕事体験から入社・新入社員研修、配属までの約2年伴走することもあります。
もちろん、学生から希望があった際のOB・OG訪問の対応や、最終面接の面接官など、選考の各段階において他の社員の協力を仰ぐ場面もあります。
Q5. 大学との関係構築に期待すること
昨今、学生の間では「タイパ・コスパ」が強く意識され、企業側も採用業務の効率化を求めて外部業者へ委託するケースが増えています。もちろん効率は重要ですが、どこか「血の通った採用」から遠ざかってしまうのではないかという危惧を感じています。私は、大学とのつながりやご縁を大切にすることこそが、「血の通った採用プロセス」を実現する要(かなめ)になると考えています。「キャリアセンターに行ったことがない」という学生が増えているという声も聞きますが、大学を訪問する中で感じるのは、キャリアセンターの方々が心から親身に学生に接しておられるということ。私は、そうした方々と共に、血の通った温かい採用活動の形を築いていきたいと思っています。
機械的ではなく、人間味のある採用活動ができる関係性。それこそが、大学との関係構築において私が期待し、目指している姿です。
Q6. 大学訪問を行う上での課題
これはもう、とにかく「距離の問題」に尽きるかなと思います。色々な地域からバランスよく学生を採用したいと考えてはいるものの、全国に拠点を持つ会社ゆえ対象範囲が広すぎて・・・。一度出張に出たとしても、限られた時間で何校の大学を回れるかという点では、非常にタイパ・コスパが悪いです。「一人採用チーム」という状況も重なります。また近年では、大学訪問を行う企業が非常に増えており、アポイント自体が難しくなっています。
せっかく作っていただいた貴重な時間を決して無駄にしないよう、安易な「学生を紹介してほしい」というスタンスではなく、自社をしっかり紹介し、大学側と有益な情報交換ができるような関係性を築きたい。その濃密な関係を、いかに短い時間の中で作っていけるかが、今後の課題だと考えています。
Q7.キャンリクフォーラムに参加された動機と感想
物理的な移動の難しさ、人手不足、OB・OGが在籍しない大学へもアプローチしたい、という複合的な課題を抱える中でキャンリクフォーラムを知り、「これだ」という思いで参加を決めました。富山から北陸新幹線で日帰り可能な利便性も活かし、一度に首都圏・関西・地方の大学と効率よく接点を持てる点は、地方企業にとっては特に大きな価値があります。東京近郊の企業にも意義はあると思いますが、私たちのような地方企業にとってこそ、その効果はさらに大きいと感じています。
当初「1回10分」は短いのではないかと感じましたが、実際に面談を重ねるうちに、企業側がきちんと準備をして臨めば、十分に情報を交換し、私たちの思いや熱量を伝えることが可能な時間だと確信しました。
もちろん10分で全部を伝えるのは難しいので、「きっかけとしてその後につなげる」ということを念頭に置いて臨めば、十分な時間だと思います。
――具体的には、どのような準備をして臨まれているのでしょうか。
大学ごとに「今日はここのお話をしよう」「これだけは伝えよう」という要点をA4サイズ1枚の資料にまとめてお渡しできるよう準備しています。会社のパンフレットのようなボリュームではなく、その1枚に目を通していただければ弊社のことを理解していただける、という独自の資料です。OB・OG在籍数や前年の採用実績などの具体的データも面談の中で盛り込むようにしています。
あえて「会社紹介」に費やす時間は最小限に絞り、「なぜ私たちが今、採用に課題を感じ、貴校と向き合いたいと思っているのか」という理由と、「学生に認知していただくために私たちが貴校で何ができるのか」という具体的な対話をすることで、次につながる「何か」を持ち帰れたな、という手応えを感じることができます。
もし会社紹介だけで終わっていたら、10分という時間では足りないでしょうね。
――参加された効果について、具体的に感じられている部分をぜひ教えてください。
本フォーラムをきっかけに、関係を構築できた大学から学内説明会へのお声がけをいただき、内定・入社に至ったケースも生まれています。
また、「学内の就活報告イベントで内定者インタビューに協力してほしい」といった、採用に直結するだけでなく「学内広報」にもつながるお声がけをいただける関係にもなっています。
10分を「きっかけ」として継続的に参加し関係を積み重ねることで、強固な信頼構築につなげられると実感しています。
Q8.キャンリクフォーラム参加後のフォローアップやアクション
重点採用エリアの大学に対しては、年2回のフォーラムで継続して面談を予約し、接点を持ち続けるようにしています。また、継続的な情報提供も欠かしません。インターンシップや会社説明会の案内、その他さまざまな情報交換を、適切な時期に迅速にお送りし、業務で近くに赴いた際は直接訪問させていただくこともあります。フォーラムでの面談が、そうした「実訪問」への大切なきっかけとなっています。
また、キャリアセンター経由ではない採用であっても、「貴校の学生に内定をお出ししました」というご報告とお礼を、フォーラムの場などでお伝えするようにしています。
Q9.今後の新卒採用活動の展望と大学キャリアセンターとの連携
今後も引き続き、全国規模で年間20名程度の採用を継続していく予定です。 各エリアの出身者やその土地の大学生と出会い、できる限り長くその街で活躍していただける人材を採用したいと考えています。弊社は富山に本社を置く企業として北陸では一定の知名度がありますが、一歩エリア外へ出てしまうと、全国的な知名度は決して高くありません。BtoB企業ということもあり、学生に知っていただく機会が限られているのが実情です。
この知名度不足をカバーするためには、ナビサイト上の広報だけでなく、各地域で弊社の名前をまず目に留めていただくという、地道な活動が不可欠だと考えています。
コストをかければ広告やスカウトも可能ですが、全国80以上の拠点すべてでそれを行うのは現実的ではありません。
だからこそ、地域に根ざした大学との連携を深めることで、学生が自然と社名を目にする状態を作っていくことが、何より大切だと考えています。
最後に、私が大学連携を重視するもう一つの大きな理由をお伝えします。
学生の「キャリアセンター離れ」が進む中、あえてキャリアセンターを活用して就職活動を行う学生は、「大学へしっかりと足を運び、大人の助言に耳を傾け、信頼を寄せることができる人」だと捉えています。
それは、弊社が求める「真面目さ」や「素直さ」の表れに他なりません。求める人材と出会うためにも、大学との連携を活動の念頭に置き、今後も採用活動を続けていきたいと考えています。

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