4月に入り、新入社員の受け入れや雇用契約の更新、賃金改定などで慌ただしいことでしょう。ですが、今年は例年以上に人件費や人材確保などの経営判断に迫られる機会が増えるかもしれません。今年の春闘において、大手企業では満額回答が相次ぎ、正社員だけでなく、いわゆる非正規従業員の賃上げも行われています。それだけでなく、4月から「子ども・子育て支援金」の徴収が開始となり、人件費が膨れ上がります。それだけに、ヒト・モノ・カネと言われる経営資源をどのように活用するか、優秀な人材をあらたに確保するのと同時に、離職を防ぐにはどうすれば良いか、労務管理の視点から今すぐ取り組むべき実務についてお話ししましょう。
2026年4月、労務の総点検を。「賃金体系の歪み」や「36協定の更新ミス」を防ぐ実務のポイント

賃金体系の歪みをチェック

先ほども述べたように、今年度も賃上げ傾向が収まる気配はなく、一層強まることになるでしょう。ですが、特に若手の従業員の賃上げを行った結果、世代間の賃金体系に歪みが出る可能性があります。

つまり、若手と、30〜40代の中堅や50代以上のベテラン層との賃金差が縮小してしまうことで、中堅以上の従業員のモチベーションが下がり、業務の遂行に支障が出る危険性が出てくるのです。賃上げを行なって従業員の満足度を上げようとしても従業員全体で見た時にマイナスの影響が出てしまっては元も子もありません。したがって、現在の賃金体系を見直すと同時に、役割や職務に基づいた賃金体系へのシフトの必要性があるか検討するようにしましょう。

ただ、人件費に割り当てることができる原資には限界がありますので、従業員の満足度を上げるには賃上げ以外の対策も必要になるでしょう。そのポイントになるのはズバリ「労働時間」です。

従業員の就業時間にメリハリをつける

ワークライフバランスが浸透したことにより、残業時間を減少させる動きが活発になっています。

残業時間を減少させるために業務の生産性をアップさせることはもちろんですが、たとえば、職種によってフレックスタイム制を導入したり、年次有給休暇の取得を柔軟に運用するために労使協定を締結して時間単位年休を認めたりといった対策が考えられます。

また、従業員に対して雇用保険の「教育訓練給付金」の活用を周知することにより、リスキリングをはじめ、スキルアップを奨励することも良いでしょう。場合によっては、従業員が教育訓練休暇を取得した場合、所定の条件を満たすと給付金が支給される制度もありますので検討をお勧めします。

このように、さまざまな観点から従業員の満足度を上げる処置を取ることで、貴社の魅力をアップしてみてはいかがでしょうか。

次に、法違反を防止するための措置についてお話します。

「36協定」の更新や無期転換の申込機会の明示などの落とし穴を回避!

いきなりの質問で恐縮ですが、貴社の36協定の更新時期はいつですか?

多くの企業では4月1日を起算日として時間外労働や休日労働に関する36協定を労使で結び、所轄労働基準監督署へ届け出るケースが多いです。ですが、年度末の繁忙期に忙殺されていると、うっかり36協定を更新し忘れることがあります。

36協定は、有効期間を1日でも超過すると、従業員に時間外労働や休日労働をさせることができません。もし、36協定の失効期間中に時間外労働・休日労働をさせると「労働基準法」違反に問われてしまうのです。万が一、36協定の更新を忘れている場合は、1日でも早く締結して所轄労働基準監督署に届け出るようにしましょう(労基署への届出を怠っても法違反となります)。

次に、有期雇用契約を結んでいるパートやアルバイトの従業員の方と雇用契約を更新する場合、無期転換の申込機会を明示する必要があるかもしれません。無期転換とは、同一の使用者(企業)との間で有期の雇用契約が5年を超えて更新された場合に、その従業員からの申込により有期労働契約が無期の労働契約に転換されることを言います。

従業員から無期転換の申込があると、企業側はそれを承諾したものとみなされるのですが、無期転換申込権が発生する雇用契約を更新するときに、その従業員に対して「無期転換の申込機会」、「無期転換後の労働条件」を明示することが義務付けられています。

したがって、有期労働契約を結んでいる従業員がそれぞれどれだけの期間働いているのかをチェックする必要があるのです。



いかがでしょうか。優秀な人材を確保し続けるために、企業側は人件費のコントロールだけでなく、従業員が働きやすい就業時間の措置、36協定など労働基準法などで義務付けられた手続きを確実に行うことで、ある意味「選ばれ続ける職場」につながると考えることができます。

ただ、これらの措置を網羅的に実行するのはハードルが高いため、人事労務の専門家である社会保険労務士へのご相談を検討してみてください。
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