ライフサイクルにおいて私たちは様々な健康課題に直面します。このうち男性特有の健康課題(前立腺肥大、前立腺がん等)は50歳代以降に多く発症するのに対し、女性特有の健康課題は20代~50代前半と働く世代に多いのが特徴です。今回は女性特有の健康課題と企業がそれに対して取り組む意義とともに、定期健康診断に追加される「女性の健康課題に関する問診」について解説します。
「女性の健康問診」が健診項目へ。今後見込まれる制度改正に人事労務はどう対応すべきか

女性特有の健康課題とは?~企業が取り組むメリット

女性特有の健康課題は、女性ホルモンの分泌の変化に伴って生じることが多いのが特徴です


女性ホルモンとライフステージ

女性ホルモンとライフステージ
図のとおり、月経困難症20歳代、不妊症30歳代、更年期障害50歳代前半などと多くの課題が働く世代に発生します。これによる日本全体の経済的損失は3兆円を超えるとされています。

また、経済産業省の調査によれば、女性労働者のうち約半数が女性特有の健康課題により「勤務先で困った経験がある」、4割が女性特有の健康課題や妊娠・出産等が原因で「職場で何かをあきらめなくてはならないと感じた経験がある」と回答しています。

「勤務先で困ったこと」として、月経不順、月経痛、PMS(月経前症候群)などが最も多くを占めています。PMSとは月経の周期に伴う、こころとからだの不調です。イライラする、気分が落ち込む、不安、不眠・眠気、集中力低下などの心の症状や、のぼせ、食欲の変化、めまい、だるさ、腹痛・頭痛・腰痛、むくみ、便秘などの身体の症状が月経前に数日間続き、月経が始まると自然によくなります。日本人女性の70~80%はこれらの症状を自覚しており、約5%は日常生活に困難を覚えています。

一方で、「職場であきらめなくてはならなかったこと」としては、正社員として働くこと、希望の職種を続けること等があげられています。このキャリアに与える影響について、妊娠・出産に関してはある程度法的にも企業の意識的にも取り組みが進んでいますが、女性特有の健康課題に関する取り組みは今まさに始まろうとしているホットなトピックです。

なぜ「女性特有の健康課題」に国や企業が積極的に取り組もうとしているのでしょうか。労働者側から見ればこのような課題に取り組む姿勢のある職場のほうが働きやすいというのは当然ですが、企業側から見ても、女性は男性と同じく貴重な労働力であり、課題に対して配慮することで離職防止や採用力の向上等につながり、企業の業績が上がることが期待されると考えられるからです。

まずは男女を問わず、それぞれの立場から、経営者、管理職が「女性の健康課題は自分たちの課題である」と認識するところが取り組みのスタート地点です。

その上で厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」などで学ぶことを通じて理解を深めましょう。

一般定期健康診断に追加される「女性特有の健康課題」に関する問診とは?

2023年から行われていた厚生労働省「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」の報告書が2026年1月19日にまとまりました。今後この報告書に従って「厚生労働省令」等が改正されることになる見込みです。

一般定期健康診断の主な改正予定は、定期健診の機会を利用した「女性特有の健康課題」に関する問診の追加と、「血液検査におけるクレアチニン検査」(腎臓の機能に関する検査)の追加です。

このうち、定期健診の機会を利用した女性特有の健康課題に関する問診の追加とは、具体的には健診受検者に「女性特有の健康課題(月経困難症、月経前症候群、更年期障害など)で職場において困っていることがありますか。」という質問が記載された問診票を渡すというものです。「はい」と回答した方に対しては健診担当医がさらに話を聞き必要に応じてアドバイスをします。

この問診は定期健診の他の項目と違って、問診を行うことそれ自体は事業者の義務ではなく、また、個々の問診の回答結果は健診機関から事業者に提供されません。これは、そもそも女性の健康問診は業務との直接的な関連性が乏しく、むしろその目的は女性労働者自身の気づきと必要に応じた医療機関へのアクセスを促すところにあるからです。

一方、従業員が専門医の診断書を持って企業側に相談してきた場合には適切に対応することが必要です。人事労務担当者は十分傾聴して、どういった配慮を希望するかを聞き取ります。その上で本人も事業者も納得できる配慮を行います。

例えば、更年期障害でのぼせ等がある方には一時離席の許可、PMSで気分の落ち込み等がある方への対人ストレスの大きい業務(クレーム対応など)の一時的な軽減などです。厚生労働省「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル~事業者向け~」には他にも配慮の例がいくつか載っています。このマニュアルは人事労務担当者必見です。


さらに積極的な対応として、問診の回答結果の集計情報を健診機関より入手し、職場における女性の健康支援の取組みに活用することも可能です。これについては前述の「働く女性の心とからだの応援サイト」に様々な取り組み例が挙げられています。
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