2025年12月に東京地裁にて注目の判決がありました。雇用契約書で、ある項目を消し忘れたことが訴訟に発展したのですが、結果的には会社側の勝訴となりました。結果だけを見ると会社側が勝ちましたが、一歩間違えると多額の損害賠償金を支払うことになっていたかもしれません。それほど雇用契約書には重みがあり、他人事ではない判決となりました。この判決の教訓を今後どのように活かしていくべきかお話ししましょう。

【雇用契約書のトラブルを予防する「チェックリスト」】
□雇用契約書の雛形の定期的なアップデート
□口頭での説明内容を文書化しておく
□雇用契約業務のデジタル化
【最新判例】雇用契約書の「消し忘れ」ミスが訴訟に発展。雇止めリスクを防ぐ雇用契約書の“3ヵ条”

雇用契約書の「消し忘れ」ミスが引き起こした紛争とは

今回の裁判で焦点になったのは、有期雇用労働者の「雇止め」の有効性です。

会社が労働者と交わした雇用契約書には、雇用契約期間について「期間の定めあり」と「期間の定めなし」の両方記載されていました。この労働者とは有期雇用契約だったので、「期間の定めなし」の箇所を消し込んでおかなければなりませんでした。

会社側は、労働者に対して、次の雇用契約を更新しないと通告しましたが、雇用契約書を交付された労働者側は、「期間の定めなし」の箇所が消されていなかったため、会社側との雇用契約について「期間の定めがない」か「有期雇用契約の更新への期待があった」として、雇止め無効を主張して裁判を起こしました。

裁判所は、採用面接時等の機会で「有期雇用契約」であることを説明していた事実があったことを取り上げて、「期間の定めなし」の項目はミスで消し忘れていたとし、会社側の主張を支持し会社側は勝訴しました。

これは、たまたま「有期雇用」である証拠が別に残っていたからであり、一歩間違えれば、雇用継続が認められて判決当日までの賃金を支払うことになっていても不思議ではありませんでした。

「言った・言わない」では紛争が泥沼化するリスクがある

この判決で会社側が勝訴できたのは、たまたま雇用契約書の不備を補足できる証拠があったからです。ですが、雇用契約においては「書面での明示」を重視する傾向にあります。

2024年の4月から「労働基準法」で規定されている「労働条件の明示」の内容が改正され、有期雇用契約の更新回数や通算契約期間の上限を明記しなければならなくなりましたし、就業場所や業務の変更の範囲についても明示する必要があります。

この労働条件の明示を裁判所がどのように判断するのかというと、「労働契約法」第19条で規定されている雇用契約更新に対する「合理的期待」の有無です。たとえ、口頭で契約の更新はしないと労働者に伝えていたとしても、雇用契約書の内容に不備があれば、労働者に雇用の継続を期待させる要素になります。

一旦、契約更新に対する「合理的期待」が出来上がってしまうと、雇止めが解雇と同じレベルとなり、雇止めのハードルが一気に上がる可能性があります。このように、雇用契約書のチェックがいかに大切かお分かりいただけたと思います。

では、これからどのような対策を講じればいいのでしょうか。

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