
義務・1)女性の活躍に関する状況把握、課題分析
状況把握、課題分析は、これ単体で行うものではなく、後述する「一般事業主行動計画」策定のための事前準備と考えるのがよいでしょう。状況把握をすべき必須項目は以下のとおりです。いずれも定義や算出方法が定められていますので、独自ルールで数字を出すことはできません。
(2)男女の平均継続勤務年数の差異
(3)労働者の各月の平均残業時間数等の労働時間の状況
(4)管理職に占める女性労働者の割合
(5)男女の賃金差異(常時雇用労働者301人以上のみ必須)
その他に20の選択項目も挙げられており、会社の実情に応じて追加選択をしても構いません。また、リストにない情報を追加し、把握・分析を行うことも問題ありません。
義務・2)一般事業主行動計画の策定・届出
前述で把握した状況、課題の結果を踏まえ、行動計画を策定します。行動計画に盛り込むべきことも以下のとおり決められています。2026年3月31日までの期間のうち、2年間から5年間で設定します。
<目標設定>
数値目標を設定します。
例:
「管理職の女性割合を30%以上にする」
「男女いずれも平均勤続年数を10年以上にする」
「常時雇用労働者が301人以上」の場合は原則として2つ以上、「300人以下」の場合は1つ以上の目標を決めることとなっています。こちらも、目標にすべき項目が24ほどリスト化されていますので、その中から自社の女性活躍における課題となっている項目を選択します。
<取組内容と取組の実施時期>
定めた数値目標を達成するために、どのような取り組みをどのようなスケジュールで行うかを決めます。
策定した行動計画は、社内周知と社外公表を行います。また、常時雇用労働者が101人以上の企業では、各都道府県労働局へ届け出る必要があります。
なお、前回紹介した「えるぼし認定」を申請する場合には、行動計画の社内周知・社外公表した日付がわかるものの添付が求められます。認定を検討している場合には、自社ホームページや社内ポータルサイトへの掲載日がわかるものを残しておくことを推奨します。
義務・3)女性の活躍に関する情報の公表
公表項目のリストが以下のとおり定められており、その中から企業規模に応じて項目を選び、数値の算出と公表を行います。1回公表すれば良いわけではなく、年1回以上の更新と、いつ時点の情報なのかも明記します。(1)採用した労働者に占める女性労働者の割合
(2)男女別の採用における競争倍率
(3)労働者に占める女性労働者の割合
(4)係長級にある者に占める女性労働者の割合
(5)管理職に占める女性労働者の割合
(6)役員に占める女性の割合
(7)男女別の職種または雇用形態の転換実績
(8)男女別の再雇用または中途採用の実績
(9)男女の賃金の差異
(10)男女の平均継続勤務年数の差異
(11)10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
(12)男女別の育児休業取得率
(13)労働者の一月当たりの平均残業時間
(14)雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間
(15)有給休暇取得率
(16)雇用管理区分ごとの有給休暇取得率
<常時雇用労働者数301人以上の企業>
●(1)~(8)のうち1項目以上選択
●(9) ※必須
●(10)~(16)のうち1項目以上選択
<常時雇用労働者数101人以上300人以下の企業>
●(1)~(16)のうち1項目以上選択
なお、現在検討中の改正案では、(5)管理職に占める女性労働者の割合、(9)男女の賃金の差異の公表が101人以上の企業で必須となる案が出されています。
義務化内容の「行動計画」や「情報の公表方法」とは
「一般事業主行動計画」と「女性の活躍に関する情報」は、外部への公表までが求められています。求職者等、一般の方も閲覧できる場所への公表を行います。自社ホームページはもちろん、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載を検討しても良いでしょう。「女性の活躍推進企業データベース」は各企業の公表情報が登録・検索できるもので、このページでは2025年4月15日現在、36,000社以上が女性の活躍に関する情報を、50,000社以上が行動計画を公表しています。今回紹介した企業に求められている対応に共通するポイントは「数値」です。入退社や産休育休、就業状況などの情報を客観的数値で得ることが求められます。そのため、人事システムを活用して継続的な状況把握ができる仕組みが構築できると、情報収取・情報分析の一部を自動で行うことができ、担当者の負荷も少し削減できることと思います。システムの活用も併せて検討することを推奨します。
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