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HRサミット2018／HRテクノロジーサミット2018講演録

【「第2回 HRテクノロジー大賞」大賞受賞企業講演】日本アイ・ビー・エムのHRテクノロジー活用事例

HRサミット2018／HRテクノロジーサミット2018 講演録
公開日：2018/12/05

ジャンル：

人材育成・研修全般システム・アウトソーシング全般

キーワード：

HRテクノロジー

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ジャンル：［人事制度］人事制度設計

形式：オンライン（アーカイブ/オンデマンド）

開催日：2025/08/11(月) 0:00 〜 2025/11/30(日) 12:00

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HRサミット2018／HRテクノロジーサミット2018 講演録

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　モバイルを使って自宅ないし事業所の外で仕事ができるという仕組みづくりと同時に、ソーシャルなネットワークでの情報交換や知識の共有にも取り組んできました。誰でも発信できる機能、誰でもアクセス可能で内容を拡散できる機能、発信者と受信者の間でコミュニケーションがとれる機能、こうした機能は、仕事で議論をしたり、情報をシェアしたり、コラボレーションしたりする上で非常に有効です。ネットワークの範囲を会社のなかに限定すれば、発信元・責任元もはっきりしています。社内でスキルや知識を共有したり活用し合ったりするために、ソーシャルネットワークの機能は大変効果的であると思います。　当社では90年代後半から、この機能を使って社員が自分から情報発信することを奨励しています。また、当社は比較的規模が大きいため、必要な人材がどこにいるのかを見つけるのが必ずしも容易ではありません。そこで、FacebookやLinkedInのような、「私はこういう人間で、こういう専門知識・資格を持ち、仕事としてきました」という内容を社内向けに公開する仕組みを用意しました。この機能を活用すれば、AIベースの検索ツールで、対象者を検索することができます。　ソーシャルな仕組みを社員が活用するようになると、例えば人事制度改革にも活用できます。2年前に評価制度を変えたのですが、その時に人事のリーダーが「新しい評価制度のプロトタイプを作りました。不評でしたら新しく作り直しますので、皆さんの忌憚のない意見を聞かせてください」とブログに載せたところ、その晩のうちに約18,000人からコメントがありました。コメントをもとにアナリティクスを行い、さらにディスカッションフォーラムを設けて社員の参加を促し、最終的には、約10万人がこの議論に参加してくれました。当社は社員数約37万人ですから、およそ3割の人たちが参加してくれたことになります。　導入や活用のポイントとしては、やはり「成果を重んじる」というふうに腹を決めることだと思います。テレワークの場合、仕事の経過を四六時中みていくことは不可能です。プロセスはまったく見る必要がないというつもりはありませんが、やはり結果に比重を置くという覚悟がないと在宅勤務もモバイル勤務も難しいですし、情報発信を社員に委ねるというのも難しいと思います。　次に、社員を信頼するということ。テレワーク導入時に、システムエンジニア部の部長達に向けて説明会をした際、「自宅勤務を認めるが、2時間に限定しよう」と真面目に議論を始めてしまったことがあります。自宅勤務を2時間に限定するというのは、チェックすることが難しいです。これはもう任せるほかはありません。オフィスにいる時も自分の部下を四六時中見張っているわけではないのですから、自宅にいる時だけなぜそんなに厳格になるのかという話です。当社は比較的外資系の文化を持つ成果主義の会社ですが、それでも管理したいと思ったようです。そこは、管理職にも腹を決めてもらわないといけないと思います。　そして、信頼し任せる一方で、つねに社員に関心を寄せること。また、時間管理をしっかりすることも大事なポイントです。働き方や時間の処分は社員に任せますが、始業終業というのは何らかの形で把握し、監督署の指導をきちんと守らなければいけません。ここに配慮することが大切だと思います。　最後のポイントは企業文化との関連についてです。例えば、チャットのツールは非常に便利です。しかし、平社員と役員が気軽にチャットでビジネス上の会話をすることを許せる文化の会社かどうかで、意味のないものにもなり得ます。「そういう文化を変えたい。フラットで風通しのいい会社にしたい」と本気で思うのならば、ツールだけ導入しても何にもなりません。トップが率先して文化を変えていく必要があります。テクノロジーはあくまで道具です。これを中身あるものにするのは、会社のリーダーと社員です。企業文化を変えるのか変えないのか、変える覚悟があるのかないのかが、とても重要だと思います。　「データの扱い」について、どのように活用し管理職を支援しているのかを紹介します。　データはビジネスの課題を解決するために使いますから、背景にあるビジネスのあり方を考える必要があります。もともと当社は典型的な多国籍企業で、ビジネスシステムもプロセスもそれぞれの国のそれぞれの支社が独立で持ち、人事情報もそれぞれの国がシステムを持っていました。それを、連結のために毎月一定のフォーマットに手作業で数字を入れて報告していたわけです。　しかし、90年代の初頭、世界中に展開する企業拠点をあたかも一つの会社とみなし、統合・最適化する「Globally Integrated Enterprise」という考え方に変えることにしました。これは、一番適切な場所に一番ふさわしいファンクションを置くという考え方です。その流れで、「人事のデータも世界で統一しよう」ということになりました。ばらばらだったデータの定義を統一・一元管理し、世界各国で同じように分析やディスカッションができるようにしました。　1人当たり200項目以上のデータを在籍者37万人と退職者の分集め、世界中の人事の担当者に分析用ツールを用意しています。当社製品の『Cognos』は、人事の担当者がよく使う標準のレポートを簡単に作ることができます。これにより自分の国だけでなく、他の地域との比較、もっと上のレベルでは経営の資源配分時の検討もできるようになります。　課題に対するアクションを考えるためのデータの使い方としては、リーダーシップの育成や採用、社員ごとのスキルの向上、多様な人たちの活用などについて測定項目を定めて定期的に測るようにしています。人事の経営層や人事の担当者が毎月これをチェックし、異常値がある場合には何らかのアクションを検討する仕組みになっています。　これは定型的なメジャーメントですが、その都度、目の前に生じた課題にどうやって取り組むかというところでも使うことができます。たとえば、「離職が増加傾向にある」という意見・動向が見えた場合に、実際にどういう職種・特徴の人の離職率が高いのかをデータを見て把握することができます。同時に、「その職種の人たちをマーケットに取られないためにはどれくらいの昇給が必要か」「そのためのコストはどれくらいか」「代替の人を採用して教育する場合はどれくらいのコストがかかるのか」といったことを導き出し、昇給に投資するコストと退職者をリカバリーするためのコストを比較して、ROI（費用対効果）を見ながら取るべきアクションを検討できるようになっています。　データの活用のポイントとして感じていることは、1つは「課題設定は人間の役割である」ということです。今のところ、我々が知らない課題をAIが突然導き出して提示してくれることはありません。課題意識を持って課題を設定するのは我々の役目です。もちろん、気が付かなかった相関関係を見せてくれるという点では、AIは相当なところまできていると思います。しかし、その相関関係が課題なのかどうなのかを判断するのは人間なのです。我々に課題意識がない限り、データの活用はできません。これが第1のポイントだと思います。　2つ目のポイントは、「まずはシンプルに現状を把握すること」です。それが人事にとっても、経営者にとっても有効ですし、半分くらいはそれで仕事は済むような気がしています。　また、われわれはアクションを取るためにデータを取るのであって、お飾りでデータを作るために取るのではありません。ですから、無理矢理AIを使う等、難しい分析を行ってアウトプットを作り上げる必要はまったくないと思います。実際、シンプルなアクションを提示するシンプルな分析結果の方が、経営層にはわかりやすいですし、アクションにつなげやすいです。

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