AIの急速な進化は、企業の人材育成のあり方を大きく変えつつある。従来型の知識習得中心の研修だけでは、変化の激しい時代に対応できる人材を育てることは難しい。求められるのは、AIに答えを求めるだけでなく自ら本質的な問いを立て、最終的な意思決定を担える人材だ。こうした課題に対し、AIネイティブのSIカンパニーを目指す株式会社SHIFTはAIを単なる業務支援ツールとしてではなく、人材育成の中核を担う存在として位置づけ、全社AI変革と新たな育成モデルの構築に取り組んでいる。その象徴が、代表・丹下大氏の思考や価値観を学習したAIメンター『POCKETAN』による新卒育成だ。新入社員研修に“社長AI”との対話を組み込むことで、主体的に考える力を養い自律的成長を促している。受け身になりがちな新卒社員に、いかにしてAIを使いこなし自律的に思考する習慣を定着させたのか。自主性を促す研修設計と『POCKETAN』の開発秘話について、取り組みを担当した人事企画部 副部長の佐藤雅子氏と、能力開発部 トレセン室 室長の高橋朋裕氏に話を伺った。

第11回 HRテクノロジー大賞『ラーニング部門優秀賞』

株式会社SHIFT

全社AI変革と人的再配置を伴う、経営OS実装型「AIネイティブ人材」育成モデル

AIエージェントの活用を前提とした業務変革を推進。その結果創出された約200名相当の人的リソースを、AI時代に求められる新たな役割や価値創出領域へと転換するため、リスキリングと人材変革を一体で進める取り組み。社長の意思決定ロジックを学習させたAIメンター『POCKETAN』で新卒社員の思考訓練を日常化。新卒の96.5%が活用し戦力化期間の大幅短縮を達成する等、AIを効率化ツールに留めず、既存人材の能力転換と若手の自律的成長を促す優れた取り組みであると高く評価されました。


プロフィール

  • 佐藤 雅子 氏

    佐藤 雅子 氏

    株式会社SHIFT
    人事本部 コーポレート人事統括部 人事企画部 副部長

    前職にて採用コンサルティングを経験。2015年にSHIFT入社後、新卒採用・教育、コーポレート人事領域に従事。同社にて約10年間新卒採用から新卒教育までを一貫して管掌。2026年度は364名規模の新卒研修において全体のグランドデザインからAIネイティブ人材育成を主導。現在は、既存社員向けのリスキリング・リキャリアの取り組みを進めている。

  • 高橋 朋裕 氏

    高橋 朋裕 氏

    株式会社SHIFT
    人事本部 コーポレート人事統括部 能力開発部 トレセン室 室長

    前職にてシステム開発およびプロジェクトマネジメントを経験。2019年にSHIFT入社後、社内教育領域に従事し、中途入社者向け受入教育「トレセン」、新卒研修、若手育成、グループ会社支援などを横断的に推進する。2026年度は364名規模の新卒研修においてAIネイティブ人材育成を主導。既存社員向けAIリスキリングにも取り組み、AI時代の人的再配置や新たな活躍機会の創出に向けた育成モデルづくりを進めている。

“逆質問”する社長AIが新卒社員の「考え抜く力」を鍛える――SHIFTが仕掛けるAI時代の自律型人材育成改革

「社員一人ひとりのポケットに社長を」――“社長AI”の開発の背景にあった受け身になりがちな新卒社員への危機感

――まずは「全社AI変革と人的再配置を伴う、経営OS実装型『AIネイティブ人材』育成モデル」について、概要を教えてください。

佐藤氏:
当社では、全バックオフィスの892業務を可視化・AI前提に再設計し、約200名規模の人的再配置とリスキリングを進めています。この全社構造転換の施策の一環として、26卒の新卒社員364名を対象とした研修内容を変革し、より実践的なものへとシフトしました。2カ月間のうち1週間で基礎研修を終え、その後は、社内課題をAIで解決する実務研修を中心に据え、とにかくアウトプットと改善をアジャイルで繰り返す設計にしています。

その中で導入したのが、社長・丹下(大)の思考や人間性を学習させたAIメンター「ポケット丹下」、通称『POCKETAN(ポケタン)』です。この『POCKETAN』を新卒社員全員に配布し、日常的に悩みやキャリア相談、仕事の壁打ちに活用してもらいました。

高橋氏:『POCKETAN』は、企業や社長に関する過去の資料や多様な情報を読み込ませ、思考や行動様式を反映しています。つまり経営OSをそのままインストールしたAIメンターです。しかも、写真や動画を用いて社長・丹下と同じ声や間合いで話すアバターとして開発しました。この開発の背景には「最初につく上司がその後の社会人人生に大きく影響を与える」という課題があります。配属による成長度の不平等をAIで補い、新卒社員全員により良い指導環境を提供すべく“社員一人ひとりのポケットに社長をマネージャーとして置く”という思想のもと設計しています。
‟逆質問”する社長AIが新卒社員の「考え抜く力」を鍛える――SHIFTが仕掛けるAI時代の自律型人材育成改革
――研修内容の改変に至ったきっかけは何だったのでしょうか。

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