独立行政法人労働政策研究・研修機構は2026年9月18日、厚生労働省政策統括官付政策統括室の要請研究に基づく「労働者の働き方の現状と意識の変化に関する調査(企業調査・労働者調査)」の結果を公表した。調査は2026年3月17日~4月17日に実施され、全国の企業2,354社、正社員8,720人から回答を得たものである。本記事では、同調査からスキルの「見える化」とリスキリングに関する結果の一部を抜粋して紹介する。

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【リスキリング】必要スキルを明示する企業は63.7%。明示の有無でスキル取得に17.4ポイント差―厚労省要請調査

必要スキルを明示する企業は63.7%、業種間で最大42.9ポイント差

生成AIの普及などによって業務内容や求められる能力が変化するなか、企業には、従業員が身につけるべきスキルを整理し、学び直しを支えることが求められている。今回の企業調査では、農林漁業と公務を除く全国の従業員30人以上の企業を、産業・従業員規模別に抽出した。

企業に対し、従業員が現在または今後行う可能性のある業務に必要なスキルを明示しているか尋ねたところ、「求めるスキル等を明示している」は63.7%、「スキル等は明示していない」は36.3%だった。なお、本調査ではスキルの「見える化」を「業務に必要な知識・経験・技能を明示すること」としている。

従業員規模別の明示率は、99人以下が64.4%、100~299人が62.8%、300人以上が60.3%と、いずれも6割台だった。一方、業種別では「建設業」が85.9%で最も高く、「複合サービス事業」が80%、「金融・保険業」が79.2%と続いた。これに対し、「宿泊・飲食サービス業」は43%、「運輸・郵便業」は51.3%、「卸売・小売業」は55.3%だった。同図表から、必要スキルの明示について、企業規模による差は小さい一方、業種によって違いがある傾向を把握できる。
【リスキリング】必要スキルを明示する企業は63.7%。明示の有無でスキル取得に17.4ポイント差―厚労省要請調査

「自社に合うスキル設定が困難」が4割超、スキル明示を阻む企業側の壁

スキルを明示していない企業に理由を複数回答で尋ねると、「自社にあったスキル等を設定することが難しい」が41.8%で最多だった。次いで「日々の業務で精一杯で時間がない」が39.4%、「提示するスキル等を作るノウハウを持つ人材がいない」が27.9%、「有効な取り組み方法がわからない」が25.2%となった。制度の有無だけでなく、事業や職務に即したスキルを定義するための時間と専門性が課題となっているようだ。
【リスキリング】必要スキルを明示する企業は63.7%。明示の有無でスキル取得に17.4ポイント差―厚労省要請調査

必要スキル「明示あり」で取得率88.2%、「明示なし」を17.4ポイント上回る

正社員調査では、リスキリングを実行した、または実行したいと思った際に、会社から必要なスキルを示されていた人は54.5%だった。リスキリング経験者では59%だった一方、希望しながら行動に移していない人では26.8%にとどまった。必要なスキルを示されなかった人の具体的な支障では、「何をリスキリングして良いか分からない」が19.4%で最も高かった。

また、リスキリングによって新たなスキルを「得ることができた」と回答した割合は、会社から必要なスキルを明示されていた人で88.2%、明示されていなかった人で70.8%となり、17.4ポイントの差があった。調査結果だけで因果関係は断定できないものの、学ぶ対象の明確化と、リスキリングの行動・成果との関連を示す結果といえる。
【リスキリング】必要スキルを明示する企業は63.7%。明示の有無でスキル取得に17.4ポイント差―厚労省要請調査

研修の提供から「学ぶべきこと」の具体化へ

スキルを明示している企業が挙げた理由では、「従業員に取得してほしい資格があるため」が64.8%で最も高く、「スキルの達成度を評価項目に入れているため」が45.8%、「従業員に自律的に能力開発してほしいから」が45.1%と続いた。スキルの見える化は、研修メニューの提示にとどまらず、資格、評価、キャリア形成をつなぐ役割を担っていると考えられる。

生成AIをはじめとする技術変化によって業務や役割の見直しが進むなか、人事部門には、事業戦略を起点に職務ごとの必要スキルを整理し、従業員が学習の目的と活用場面を理解できるよう示すことが求められそうだ。学習時間の確保や費用支援に加え、習得したスキルを配置、評価、処遇へどう結びつけるかも検討課題となる。
【リスキリング】必要スキルを明示する企業は63.7%。明示の有無でスキル取得に17.4ポイント差―厚労省要請調査
今回の調査では、必要なスキルを明示する企業が63.7%に上る一方、業種差や、スキル設計の難しさも確認された。また、明示の有無によってスキル取得率に17.4ポイントの差がみられた。人事部門には、研修機会を用意するだけでなく、従業員が「何を、なぜ学ぶのか」を理解できる形で示し、学習後の活用や評価まで一体的に設計する視点が求められるだろう。

出典:労働者の働き方の現状と意識の変化に関する調査(企業調査・労働者調査)|労働政策研究・研修機構(PDF)

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