株式会社クレディセゾンは、2030年度までに平均年収1,000万円を目指す方針を掲げる一方、社員の挑戦を後押しする文化・仕組みづくりを進めている。その象徴の一つが、社内提案制度「NEXT SAISON」から生まれた、経歴や雇用形態を問わず管理職ポジションへ挑戦できる「チャレンジ型登用制度」だ。さらに人事部門では業務をAI前提で再設計し、2025年度には2,193時間分の業務削減を実現。その時間を社員一人ひとりへの支援や組織開発に充てている。背景にあるのは、人的資本を「コスト」ではなく「成長ドライバー」と位置づけ、社員の挑戦と成果を企業価値の向上につなげる人材戦略だ。制度の導入をゴールとせず、社員の理解と活用、行動の変化までを射程に置く。重視するのは「設計が2割、運用・定着が8割」の考え方と、経営・現場との継続的な対話である。今回、同社 戦略人事部長 開沼大輔氏に、報酬改革、挑戦を生み出す文化・機会づくり、AI活用といった一連の取り組みの概要や背景のほか、施策を浸透させるうえでのポイントや制度における納得感の醸成などを伺った。後編では、AI時代の人事のあり方や人的資本経営における人事の役割の本質を中心にお届けする。

プロフィール

  • 開沼 大輔 氏

    開沼 大輔 氏

    株式会社クレディセゾン
    戦略人事部長

    2000年にクレディセゾン入社。ペイメント事業において営業、商品企画、事業企画などに従事。加えて、経営企画など全社領域の業務も経験。ソリューション営業部長、プロセシング企画部長を経て、2024年より現職。経営戦略の実行基盤として人事を捉え、事業・経営視点に立った人事戦略の設計・運用を推進。

【後編】クレディセゾンが示す人的資本経営のあるべき姿――社員の挑戦を生み出す「報酬と連動した機会提供」と「人事の説得力」

AI活用で重要なのは「知識の習得」より「まず使う」という姿勢

――「AIを前提とした人事業務への転換」についても他の取り組み同様、目に見える成果はありましたか。

制度設計や規程検索、問い合わせ対応、資料作成など、人事にはAIを生かせる業務が多くあります。まず、業務そのものをAI前提で組み立て直すところから始めました。そのうえで特に重視したのが、人事部が率先してAIを使うことです。組織文化や組織風土にも関わる人事がAIを使わないまま、全社員に「AIを使いましょう」「仕事を変えましょう」と言っても説得力がありません。人事自身が古いルールや手作業に縛られたままでは、現場に変化や挑戦を求めることはできないと思っています。そこで、メンバーには簡単な課題を出し、まず実際にAIに触れ、「便利だ」と実感する体験を重ねてもらいました。

プロンプトのひな型に各自の業務や考えを書き加えると、すぐに回答が返ってきます。「これは便利だ」と実感する体験をメンバーに重ねてもらうことで、早い段階で人事部門の全員が毎週利用する状態をつくることができました。活用はその後も広がり、2025年度にAIを組み込んだ業務は293件で社内の部門の中で最も多く、年間2,193時間の削減につながっています。
【後編】クレディセゾンが示す人的資本経営のあるべき姿――社員の挑戦を生み出す「報酬と連動した機会提供」と「人事の説得力」

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