株式会社帝国データバンクは2023年8月17日、「女性登用に対する企業の意識調査(2023年)」の結果を発表した。調査期間は2023年7月18日~31日で、1万1,265社より回答を得ている。本調査により、企業における女性管理職の割合や女性活躍推進策、女性管理職の割合と男性育休の取得率の関連性などが明らかとなった。
「女性管理職の割合」は平均9.8%と過去最高も1割に満たず。推進策として「平等な評価」を行うものの“前例不足”が足かせに

管理職が「全員男性」の企業は依然として4割を超える

政府では、2023年6月に決定された「女性版骨太の方針2023」によって、さまざまな女性活躍の強化策を打ち出した。その中には、プライム市場に上場する企業の女性役員の割合を2030年までに30%以上にする目標を掲げるなど、女性の能力を十分に発揮できる雇用環境づくりを目指している。そうした中、2023年度における企業の管理職への女性登用は、どの程度進んでいるのだろうか。なお、本調査は2013年以降、毎年7月に実施しており、今回で11回目となる。

はじめに帝国データバンクは、企業に対し「自社における管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合」を尋ねた。すると、「30%以上」は9.8%と1割に満たなかった。そのほか、「20%以上30%未満」が6.4%、「10%以上20%未満」が8.6%、「10%未満」が25.9%だった。

また、管理職が「全員男性」である企業は45.1%と、依然として4割を占めており、全項目の中で最も多かった。

女性管理職の割合は平均で9.8%となり、2013年調査開始以降で最高を更新した。しかしながら、前年(2022年)からの上昇幅は0.4ポイント増にとどまり、1割を下回る低水準が継続していることがわかる。
「女性管理職の割合」は平均9.8%と過去最高も1割に満たず。推進策として「平等な評価」を行うものの“前例不足”が足かせに

企業規模が小さいほど女性管理職の割合は高い傾向に

次に同社は、女性管理職の割合を、企業規模・従業員数・業界別に比較した。企業別に見ると、「(中小企業のうち)小規模企業」が平均12.6%で最も多かった。他方で、「中小企業」は10.2%、「大企業」は7.5%となった。2022年と比較しても、いずれの企業規模も同様の水準で推移しており、規模が小さい企業ほど女性管理職割合の平均は高い状況が続いていることがわかる。

また、従業員数別に見ると、従業員数「5人以下」の企業が平均15.7%と最も多かった。なお、2022年4月より「女性活躍に関する情報」公表の新たな対象となった従業員数「101~300人」の企業における女性管理職割合の平均は、前年から0.5ポイント増の6.5%となり、増加幅は全区分のうち最大となった。他方で、同年7月より「男女間の賃金格差」公表の対象となった従業員数「301人以上」は0.3ポイント増の7.8%だった。

業界別に見たところ、女性従業員が比較的多い業界である「小売」が18.6%で最も多く、全体平均の9.8%を8.8ポイント上回った。以下、「不動産」(16.2%)、「サービス」(13.5%)、「農・林・水産」(11.8%)が上位にあがった。一方で、現場での作業が多いことなどを背景に女性従業員が比較的少ない「製造」や「運輸・倉庫」、「建設」は、6~7%程度と低水準にとどまった。
「女性管理職の割合」は平均9.8%と過去最高も1割に満たず。推進策として「平等な評価」を行うものの“前例不足”が足かせに

「女性管理職30%以上」の企業も、女性管理職割合と同様に小規模企業で多く

続いて同社は、政府が目標として掲げている「女性管理職30%」以上となっている企業の割合を、企業規模・従業員数・業界別に比較した。

企業規模別に見ると、女性管理職割合の平均と同様に、「うち小規模企業」(15.7%)が最も多かった。

従業員数別に見ても、「5人以下」(20.7%)が最も多い結果となった。なお、2022年7月より「男女間の賃金格差」公表の対象となった従業員数「301人以上」は、0.8ポイント増の4.8%となり、全区分のうち最大の増加幅だった。

業界別では、「小売」(22.3%)と「不動産」(20%)が上位となり、「製造」と「運輸・倉庫」、「建設」などは低水準にとどまった。
「女性管理職の割合」は平均9.8%と過去最高も1割に満たず。推進策として「平等な評価」を行うものの“前例不足”が足かせに

約3割が今後女性管理職の割合増加を予想。「301人以上」の企業では6割を超える

次に同社が、「自社の役員(社長を含む)に占める女性の割合」を尋ねたところ、平均は12.7%で前年から0.4ポイント増加し、過去最高となったという。一方で、「役員が全員男性」とする企業は依然として半数を超えているとのことだ。

そこで、「自社における女性管理職割合が、現在と比較して今後どのように変わると考えているか」を尋ねた。その結果、女性管理職の割合が「増加する」と見込んでいる企業は32.9%だった。他方で、「変わらない」とした企業は41.6%となった。

また、女性役員の割合が「増加する」とした企業は13.4%だった。他方で、「変わらない」とした企業は56.5%と半数以上におよんだ。

従業員数別に見ると、「301人以上」の企業では女性管理職割合が今後「増加する」と見込む割合は63.7%と、全体より30.8ポイント高く、女性役員割合についても全体を13ポイント上回った。「従業員数が多い企業ほど、女性管理職が増加する」と考える割合が多いことがわかった。
「女性管理職の割合」は平均9.8%と過去最高も1割に満たず。推進策として「平等な評価」を行うものの“前例不足”が足かせに

女性活躍推進のため「男女平等な雇用」や「女性特化の働きやすさ」に取り組む企業が多数

続いて同社は、「女性の活躍推進のために自社で行っていること」を尋ねた。すると、「性別に関わらず成果で評価」(59%)が最も多く、次いで、「性別に関わらず配置・配属」(48.2%)となった。上位2位には男女平等に関わる項目が上位に並んだ。さらに、「女性の育児・介護休業を取りやすくする」(40.1%)が続き、女性の働きやすさに特化した環境づくりに関する対応策が3位となった。

また、男女問わず「働き手の家庭と仕事の両立への支援」となる「就業時間の柔軟化」(27.8%)、および「時短勤務の対応」(25.5%)に取り組んでいる企業は、それぞれ4社に1社程度であることがわかった。他方で、前年からの上昇幅が全項目の中で最大となったのは、政府が特に強化している「男性の育児・救護休業の推進」(15.7%)で、前年比3.1ポイント増だった。

低水準で推移しているのは、「キャリア開発・育成の充実」(7.3%)や「キャリアに関するモデルケースを提示」(2.6%)で、女性のキャリア支援となる項目はわずかな上昇にとどまった。

自由回答には、「始業・就業時間、勤務時間帯、出勤日などは育児の都合に合わせて自由に決めてもらっている。そのスケジュールを見て、生産体制や配置を柔軟に決めている」(飲食料品卸売)や、「女性管理職を増やすには、女性社員の意識改革も必要。研修、教育の機会も増やしていく」(化学品製造)などの声が寄せられたという。
「女性管理職の割合」は平均9.8%と過去最高も1割に満たず。推進策として「平等な評価」を行うものの“前例不足”が足かせに

男性の育休取得率は「平均11.4%」に。男性の取得率上昇は女性管理職に比例

次に同社が、「男性の育休取得率」を尋ねると、平均は11.4%だった。企業規模別に見ると、「大企業」が14.1%、「中小企業」が10.6%、「うち小規模企業」が8.6%となった。企業規模が大きいほど取得率が高い傾向にあることが見て取れる。

従業員数別に見ると、現在取得率の公表が義務付けられている「1,000人超」の企業が20.8%で最も多く、全体を9.4ポイント上回る結果となった。

なお同社では、単回帰分析を用いて、各企業の「男性の育休取得率」と「女性管理職の割合」の関係を調べたという。すると、「男性の育休取得率が上昇すると女性管理職の割合も上昇する」という傾向が表れたとのことだ。男性育休の取得促進を段階的に進めることで、女性の継続就業や管理職を目指す意欲の向上、活躍できるフィールドの広がりなどを通じ、女性管理職の割合が高まる可能性があると示唆された。
「女性管理職の割合」は平均9.8%と過去最高も1割に満たず。推進策として「平等な評価」を行うものの“前例不足”が足かせに
最後に同社は、「女性活躍に関する課題」を自由回答で求めた。すると、「経営者が高齢であるほど男尊女卑が強く、固定観念があるため女性が管理職につきにくい」(家具類小売)や、「女性管理職候補者への教育をほとんど実施していなかったためか、社員が昇進にやや消極的である」(機械製造)といった意見のほか、「男性の育休推進の必要性は分かるが、実質的に生産活動に支障をきたしてしまう。育休を取得した企業に対して国による補助を強化してほしい」(輸送用機械・器具製造)などの声も聞かれたとのことだ。

本調査結果から、女性管理職の割合は平均で9.8%と、過去最高を更新したものの依然として1割に満たないことがわかった。また、女性の活躍推進を図るべく、男女平等な評価などを行う一方で、女性のキャリア支援となる項目は1割未満と低水準であることも明らかになった。女性管理職の登用のみならず、登用に向けた教育にも前例がないことは、大きな課題といえるだろう。今後も女性登用を目指す企業では、経営者自身の意識を変えていくほか、女性従業員の管理職登用に向けた教育やロールモデルの確立が必要となりそうだ。

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