管理職になると、部署の成果を出しつつ、部下一人ひとりの成長をどう支援するかという、新たな悩みに直面します。「厳しく言うべきか」、「見守るべきか」、「どこまで踏み込んでよいのか」。正解が分からず戸惑う方も多いのではないでしょうか。第1回では、管理職を支援職ととらえ、部下の「不安感を下げる」、「存在感を高める」という基本姿勢についてお伝えしました。今回は、その視点をもう少し近づけて、部下との関係性、指導の仕方に焦点を当てて解説します。


【管理職=支援職】第2回:部下の不安を下げ「関係の質」を高める指導法~パワハラにならない関わり方と承認ポイントの肝

支援のポイントは“関係の質”にあり

多くの部下にとって、「この会社が好きかどうか」以上に、「この上司のもとで働きたいかどうか」が日々の働きやすさや働きがいを左右します。いくら福利厚生が整っていても、「あの上司には相談しにくい」、「課長の指示はいつも分かりにくくて困る」と感じていると、その職場を「良い」と思えなくなります。こうした感覚は、日々の上司とのやり取りの積み重ねから生まれます。

ここで上司と部下の関係について、部下が上司に対して「安心できる(不安感が低い)」、「認められている(存在感が高い)」と感じる状態を、「関係の質が高い」と呼びます。関係の質が高いほど、同じ指導でも前向きに受け止められます。例えば、部下は自分で課題に気づき、行動を変えられるようになります。

このように関係の質を高めていくことが、支援職として重要なポイントです。


部下の「不安感を下げる」関わり

第一に、日頃からの対話です。「安全に話せる場」として意図的に“1on1”の機会をつくりましょう。何かあった時だけ呼び出すやり方では、「叱られる場」になりがちです。月1回でもよいので、テーマを共有した上で部下の話をじっくり聴く時間を確保します(例:目標の確認、今の困りごと等)。話す比率は「部下8:上司2」を意識し、「この時間はあなたの時間です」と冒頭で伝えると、本音や感情も出やすくなります。

次に、部下が心の中の「〜かもしれない」という不安を言葉にできるよう促します。そこで重要なのが、「最近、気になっていることは?」、「このプロジェクトで不安は?」などの問いかけです。オープンクエスチョンで尋ねるのがポイントです。

さらに、ミスやトラブル時こそ腕の見せ所です。「その時どんな判断をした?」、「どこで迷った?」と事実と感情を一緒に整理します。原因を追及されるのではなく、聴いてもらえた実感があると、部下はその後の上司の助言や指導を受け入れやすくなります。

以上、要点は、(1)場を用意する、(2)感情を言語化してもらう、(3)背景を一緒に振り返る、といえます。

部下の「存在感を高める」関わり

部下にとって存在感は、「上司に認められている」、「このチームに貢献できている」という実感から生まれます。

そのために承認が大切です。承認には、存在承認・プロセス承認・結果承認という3つの種類があります。往々にして結果承認に偏りがちですが、前2者が日々のやり取りでは重要です。

例えば、「あなたがいると場が和む」、「短期間でここまで整理したのは良かった」、「報告のタイミングが以前より早いね」と、何がどう良いのか具体的に伝え、以前との変化、成長の度合い等を伝えます。

場合にもよりますが、避けるべきなのは、「よかったよ」の一言で済ますこと。言われた部下は「適当に言ってるな」と受け止めてしまうかもしれません。信頼感を失い、逆効果になることがあります。

また、挨拶は基本的な存在承認。「おはよう」、「お疲れさま」といった一言は、「あなたを見ています」という強いメッセージになります。

さらに「あなたにだから頼みたい」と役割を与えることも有効です。「この案件はあなたの丁寧さが活きる」、「新人フォローはあなたの経験が役立つ」など、期待と役割を結び付けて任せましょう。

以上まとめると、(1)存在承認・プロセス承認、(2)成長や変化を言葉にする、(3)役割を与える、の3点がポイントです。

社労士の視点:「指導」と「パワハラ」の違い

部下との関係で指導や注意は不可欠ですが、それはトラブルの起点にもなりやすい場面です。感情的な叱責や曖昧な基準は、パワハラと受け取られかねません。

厚生労働省の指針では、業務上必要かつ相当な範囲の指導はパワハラに当たりませんが、人格否定や必要性を欠く過剰な叱責は該当し得るとされます。判断の視点は、(1)目的(何のためか)、(2)方法(社会通念上相当か)、(3)状況(頻度・継続性・周囲への影響)の3点です。

ポイントは、視点を「人」ではなく「事実・行動」に向けます。例えば、「報告遅延で◯◯に影響が出た。次はどうするか一緒に考えよう」と、事実を共有し、改善策を共に相談します。その際、指導内容や合意事項は、日時・状況・事実・合意内容を簡潔に記録しておくとよいでしょう。

パワハラではなく適正な指導かどうかは、ある程度客観的に決まりますが、部下の主観的な受け止めも大事にしたいところです。つまり、上司の成長を願う姿勢が伝わっているか。これは日々のやり取りの中での、“関係の質”の濃度が大いに影響してくるのです。

さらに重要なことは、対応に迷う、同様の問題が繰り返される等の場合は、早めに人事や産業保健へ相談する選択肢も持ちましょう。外部の資源を有効に活用することで、管理職自身の不安を和らげてくれたり、疲弊を防いだりすることになります。

次回(第3回)は、「多様な働き方を支援する~チーム全体が力を出し合える場づくり~」を解説いたします。
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