昇進したばかりの管理職・マネージャーは「自分が成果を出す」から「部下を通じて成果を出す」へと役割が変わり、戸惑うことも少なくありません。部下がパフォーマンスを発揮するために、管理職はどうあるべきでしょうか。本シリーズでは、人の持つ心理的な弱さにも着目しながら、管理職を“支援職”ととらえ、全3回にわたりその役割や視点を考えていきます。第1回は「不安感を下げる」、「存在感を高める」という基本姿勢を通じて、職場の雰囲気づくりの重要性を取り上げます。

【管理職=支援職】第1回:管理職の本来の役割とは? 「部下の支援」と「組織風土・雰囲気の改善」の重要性

管理職に求められる“新しい役割”

昇進して管理職になったばかりの方にとって、最も大きな戸惑いは「自分が成果を出す」から「部下を通じて成果を出す」へと役割が変わることではないでしょうか。今までは自分自身のスキルや努力で評価されてきましたが、管理職になれば、自分がどれだけ優秀でも、部下がパフォーマンスを発揮できなければ組織全体の成果にはつながりません。

ここで大切になってくるのが、「管理職は支援職である」という考え方です。管理職は、部下を指示命令通りに動かす「管理者」ではなく、部下がパフォーマンスを発揮できるように環境を整える「支援者」なのです。

人は「正しい」と分かっていても行動できない弱い存在

人は本来、“何が善で何が悪か”を判断できる感覚を持っています。儒学、とりわけ陽明学ではこれを「良知(りょうち)」と呼びました。例えば「他人に迷惑をかけてはいけない」、「困っている同僚は助ける」、「ミスは隠さずに報告すべき」、「遅刻はいけない」、「お客様を大切にする」といった感覚は、誰もが心の中にあるのではないでしょうか。

しかし、人はその「正しい感覚」を持ちながらも、必ずしも行動に移せません。古来より「人は本来善か、悪か」を巡る議論はありましたが、実務の現場に照らして実感できるのはいわゆる「性弱説」です。つまり「人は正しいことを知りながらも、弱さゆえに行動できない存在だ」という考え方です。

職場を見れば、このことはよく分かります。ルール上、本当は残業を申告すべきと分かっていながら上司に遠慮して申告できない、セクハラを目撃して仲間を守るべきだと感じても、上司や集団の圧力に抗えず声を出せない。これらは人の弱さの表れといえるでしょう。

では、この弱さを補うにはどうすればよいでしょうか。

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