また「4つの学習モジュール」に関しては、「コアバリューの実践」「経営に関する最新の知の探索・深化」「リーダーシップと徳の修養」「学習の統合」が挙げられ、「3つの学習モード」としては、「理論(知識)」を学び、「実践(アウトプット)」の機会を設け、「内省」による振り返りを行うという一連のサイクルを回すことで、学習の習熟度向上と定着化を図ります。
――第一期生にどの程度応募があったのか気になります。
募集コースは、リーダーシップ・パイプラインを計画的に強化するために、階層別に「経営人財コース」「管理監督者コース」「一般社員コース」の3コースで行いました。定員は、それぞれ10名、20名、40名でしたが、全体で200名以上の応募があり、約3倍の競争率となりました。強制はせず任意の公募でしたが、多くの手が挙がったことで、社員の注目度の高さを感じました。選考方法は、論文と論理的思考力やビジネス知識を測定するアセスメントテスト、それに加えて面接です。実力本位で選抜しましたが、男女の割合は6:4程度とバランスよく、また職種に関しても営業・企画・システム開発・事務までバラつきない構成となっています。
――受講のスケジュールはどのようになっているのでしょうか。
1月の入学式から12月に行われる経営への戦略提言の最終発表まで丸1年間、対面集合プログラム、課外グループプログラム、課外個人プログラムを行い、かなり濃密な日程となっています。講義は普段の業務時間内に行いますが、予習・復習・グループワークなどは業務時間外に取り組んでいます。受講者は本当に忙しくハードだと思いますが、敢えてそのような設計にしています。本物の経営リーダーになったとき「忙しいからできません」という言い訳は通じません。日常業務と両立させながら、量と質のプレッシャーとどう向き合い、どう乗り越えていくのか。これもリーダー開発の重要な要素のひとつであり、タフアサインメントに似た強度も必要だと考えてのことです。
――そもそもどのような経緯で「ALA」の開校に至ったのでしょうか。
これは私自身がずっと温めてきた構想でした。人事の仕事は、採用・研修・異動・評価など多岐にわたり、それらの業務を理念に沿って実践することも大切ですが、同時に重要なのは会社の将来を創ること、つまり人的資本を厚くしていくことでもあります。しかしながら、弊社のリーダーを育成する仕組みは、まだ発展の余地がありました。従来から経営人財育成プログラムはあるものの、十分に体系的な仕組みになっておらず、本人のモチベーションや上司のサポートによって成長に濃淡が見られます。しかし、それでは本物のリーダーは育ちません。私が夢見ているのは、「ALA」の卒業生たちが5年後、10年後に、会社の幹部となり、部門の壁を越えて本音で議論し合あった者同士の強い絆のもと、会社を牽引していく姿です。
――取り組みの狙いとして、組織視点・社員視点でそれぞれどのようなメリットや意義があるとお考えでしょうか。
組織視点で言いますと、リーダー人財の層を厚くするということに尽きると考えています。サステナブルな経営を実践していくためには、継続的で充実したリーダーシップ・パイプラインが必要不可欠です。社員観点で言いますと「会社は人的資本投資に本気である」というメッセージ性のもと、主体的にチャレンジする行動が奨励されていることや、当社の「人財を大切にするコアバリュー」という考え方の浸透効果があると思います。
――第1回目の成功は、手を挙げなかった社員の方々にも刺激になったでしょうね。
おっしゃる通りです。先ほども申し上げたように大変ハードなプログラムになっていますし、実際に学んでいる受講生が「大変だ」と言っている噂を耳にする社員もいると思います。同時に、そういう姿を見て焦りを感じたり、「自分もやらなきゃ」と刺激を受けたりする社員もいます。会社が強制的に学ばせるのではなく、「自分もやりたい」「挑戦したい」と自分事化することでこそ、本当の学びが始まると考えています。
――プログラムを設計するにあたり、どのようなことを重視されたのでしょうか。
世にある既存のプログラムを寄せ集めたものではなく、とにかく“アフラックらしいもの”“本物”にすることにこだわりました。当社の中期経営戦略、人的資本戦略に沿った形で、全員が一貫性を持って厳しく学んでいく。まさにそれが自社でアカデミーを持つ意味だと思います。そのため一橋大学ICS(国立大学法人一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻)の協力のもと、弊社に合ったオリジナルプログラムを開発しました。MBAレベルの内容で経営リーダーに求められる知識・スキル・教養を体系的に身に付けていただきます。さらにプログラムの中身について追求するだけでなく、入学試験もあり、さながら“本物”の学校のような建てつけにしました。
――「徳の修養」というプログラムはとても特徴的に感じますが、一体どのような意図が込められているのでしょうか。
「徳の修養」もプログラム設計において重視したポイントであり、また苦労したところでもあります。経営者をはじめとするリーダーが備えるべき素養としては、「知識」だけではなく、人間性としての「徳」、いわゆる頭だけでなく心も磨いていく必要があると考えています。しかし、1年という短い期間で徳の修養など簡単にできるはずもありません。「ALA」では、徳を養うのではなく、養い方を学んでいきます。人間性の涵養に必要なのは内省の繰り返しです。そこでノブレス・オブリージュ(地位に相応しい社会的責任の実践)を意識したプログラムを設け、上司からのフィードバックや、講師との対話、そして何より受講生同士の高頻度の相互フィードバックを通じて、内省を習慣づけていく設計にしています。
――「ALA」は次代の経営を担う人財のリーダーシップ開発に特化された企業内大学です。そのリーダーシップ開発を促進するために、運営面ではどのような工夫を施されたのでしょうか。
まずハード面では、受講生同士がお互いに切磋琢磨できるような環境を作ることを第一に考えました。「ALA」が目指すのは、卒業生たちがいずれ本物のリーダーになったときに、部門の垣根を越えて本気で意見をぶつけ合う姿です。その実現に向け、組織を活性化させるコミュニケーションプラットフォーム「Miro」を導入し、システム上で講義内容を共有したり、ディスカッションをしたり、学びの気づきやフィードバックを投稿し合える場所を設けています。
一方、ソフト面では、受講生による主体的な運営を徹底しました。要するに「事務局に頼るな」ということです。小さな事例ですが、開校当初に「出張と重なって授業に出られないが、どうしたらいいか」という相談が受講生からありました。その程度の管理も判断もできない人間が経営リーダーにはなれませんから、自分で考えるように言い事務局には、特に何もフォローさせませんでした。受講生を徹底的に大人扱いして、場所やツール以外はすべて自分たちで運営するよう徹底しています。実は、そこでの行動も、人事や一橋大学講師陣がしっかり観察しています。
――設計や運営面で様々な工夫をされていらっしゃいますが、取り組みを進める中で、事務局側の新たな気づきや学びなども多そうです。
スケジュール的にも内容的にも相当タフな取り組みです。当初は途中離脱する受講生が多いかと思っていたのですが、一期生は全員が最後までやり切りました。日々の業務を進めながら、業務時間外では課題に取り組むのは、本当に大変だったと思います。それでも必死に食らいついて頑張っている姿を見ると、社員の将来、当社の将来に希望が持てました。私にとってはそれが一番の発見であり、喜びでもありました。
――受講生のみなさんがそこまで頑張ってこられた原動力は何だったのでしょうか。
1つは一期生としてのプライド、そしてもう1つは社員から注目されているということだと思います。「ALA」は職場の同僚も関心を寄せていますし、上司も1on1が必ずセットになっているので見てくれています。やはり応援されたり、見てもらえたりすると、人って頑張れるのだと思います。
――この1年を振り返ると、受講生の目に見える変化や成果も多分にありそうです。
全員に適宜レポートを提出してもらっていますが、物事の見方は着実に変わりつつあり、思慮深さやリーダーとしてのあるべき姿が文章の中に反映されてきています。受講生と実際に話してみると、発する言葉はもちろん、雰囲気や態度にも今までになかった覚悟のようなものが滲み出てきています。さらに成果としては、学習の仕方や内省の仕方が身につけられたことも大きかったと思います。「リーダーシップは旅」ですので、内省しながら自分を進化させていくという習慣はとても意義深いと思います。この先、立場やミッションが変わったとき、また苦しんだり悩んだりしたときに、「ALA」で学んだことは間違いなく引き出しになると思います。
――それでは最後に、「ALA」の今後の展望や構想をお聞かせください。
正しく継続していくこと、これに尽きます。今年約70名が受講しましたが、仮に同じくらいの人数で5年間続けられたら、トータル400名近くが卒業していくわけで、従業員数5000名の会社にとっては本当に大きな変化になっていきます。その意味でも、5年、10年と続けていくことが大事だと感じています。では、継続するためには何が必要かと言いますと、来年以降もどんどん手が挙がるようにすること。すなわち一期生が卒業後に各職場でどれだけ輝けるか、そこが問われるでしょう。そのため卒業生の継続的な成長も含めて、引き続き会社としてサポートを続けていき、ALAを本物にしていきたいと思います。