
内定者フォローの目的は?
内定者フォローを実施する目的は、大きく分けて2つ挙げられる。●内定辞退や早期離職の防止
内定者は採用試験を通じて自身のスキルや経験、社会人になってからの展望など、さまざまな内面を整理することになる。内定出しから実際の入社までは、長ければ1年弱、短くとも数ヶ月程度の期間がある中で、「本当にこの企業に就職してよいのか」、「やりがいを感じる仕事でも、職場や人、社内文化にはなじめるのか」といった漠然とした不安を感じることも多い。そのような不安な状況に置いたまま放置すると、内定辞退や早期離職を招くリスクも高まる。企業と内定者のつながりとなる内定者フォローはこれらの防止策として重要である。●入社後、即戦力になれる環境の整備
内定者フォローは不安を和らげるだけでなく、入社後に円滑に戦力として働いてもらうための準備にもなる。社内見学や内定者研修など、実際の業務や職場を見る機会を設けることで、入社後のビジョンと身につけるべきスキルが明確になり、自身のキャリア形成もイメージしやすくなる。企業側としても、働くモチベーションの高い人材が、業務を理解した状態で就業をスタートする環境を整えることができる。また、先輩社員や同期など、人とのつながりをもつことで、同僚との親近感や企業への帰属意識を高めることも期待できる。
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内定者フォローの主な施策14例
内定者フォローの施策は、目的に応じた設計が必要だ。ここでは、内定辞退の防止と早期戦力化の有効性が高い代表的な施策例を紹介していく。●内定者懇親会・座談会
懇親会は内定者を集めて食事会やグループワークなどを行う。内定者同士の交流の場とすることが主眼で、同期のメンバーにはどういった人がいるのか、入社後に仲良くやっていけるのかといった不安の解消に役立てる。内定者間の連帯感・同期意識が高まると、入社後の切磋琢磨にもつながる。座談会は、内定者と先輩従業員の交流をはかる場とし、参加する既存従業員は若手に限らず管理職やベテランなど多様性をもたせた方が望ましい。内定者はリアルな企業の内情を入社前に知りたいと思っていることが多いので、ネガティブな面も隠さずに伝えが方がよい。それが企業への信頼を底上げすることにつながる。
どちらもリアル開催にはこだわらず、オンライン上でもよい。内定者が企業の魅力を理解し、親近感や愛着をもつことに役立つので、主導する人事部は内定者目線で、居心地よく、話しやすい時間となるよう工夫する必要がある。
●面談
内定者と継続して接点をもつ方法として面談は有効だ。しかし、実施方法には注意が必要な点もある。・個別または少人数で実施する
内定者それぞれに、人前で話すことの得意・不得意があるため、面談の際に積極的な発言を引き出すよう配慮が必要である。人数が多いグループ面談では参加者それぞれの発言機会は少なくなり、状況やメンタルを把握するのが難しくなる。少人数もしくは個人面談の方が望ましい。
・複数回・定期的な実施
面談は企業と内定者の接点を作る機会なので、コミュニケーションの回数は多くしたいところだ。回を重ねることで親近感を深め、入社へのモチベーションも高められる。また、時期によって内定者が欲するニーズが変化するため、面談は複数回、定期的に実施することが望ましい。
●社内見学・オフィスツアー
入社後に実際に働く現場やオフィスなど、職場見学の機会を設けると、就業後のビジョンが明確になりやすく、内定者が働くことに自覚的になることにつながる。職場の雰囲気だけでなく、ともに働くことになる先輩社員の働き方を直接見ることで、職場での立ち居振る舞いの参考にしたり、この場所で働くという意識を持ったりすることができるだろう。見学は先人事担当者や輩従業員が同行し、その場で質問・回答のやりとりができるとなおよい。リアル開催が難しい状況であれば、オンライン上の社内見学ツアーを開催してもよいだろう。
●社内イベントへの招待
社員旅行や運動会などの企業内部のイベントに内定者を招待することも効果的だ。仕事中よりもカジュアルな場で、かしこまらないコミュニケーションが取れる。どのような人がいる職場なのか、人柄や社風などの雰囲気をリアルに見る機会になり、仲間意識も生まれる。また、内定者が立案した社内イベントを開催する企業もあり、合宿や内定者による社内報の増刊発行といったユニークなものもある。企画立案やスケジューリングの練習の場とすることもできる。
●定期的な連絡
内定者との基本的なコミュニケーションとして、継続的・定期的な連絡は必ず行った方がよい。チャットツールやメールを活用し、企業側から会社の近況や人事施策、ニュースなどを発信することで、内定者が放置されている感覚に陥ることを防げるので、漠然とした不安に起因する内定辞退を防止できる。頻度は、月に1回程度が理想と言われている。これ以上感覚が空くと放置されている印象を持たれ、それ以上頻繁だと企業から監視されている気分になり心理的負担が高いからだ。
●内定式
内定者が最初に参加するイベントとして内定式を行うことも有効だ。内定者に「この会社に入社する」という実感を持たせ、組織の一員としての意識を高めるうえで重要な機会となる。また従業員規模が大きい企業の場合、入社後もなかなか会うことが叶わない社長や役員クラスと内定の時点で接点をもつ経験ができると、経営層からのメッセージが温度のある言葉としてダイレクトに伝わりやすく、企業への信頼や愛着・親近感が高まる。●社内報・ニュースレター送付
従業員向けの社内報があれば、内定者にも共有する。企業の掲げる目標や、どんなプロジェクトが進行しているかを知らせることで、内定者は入社する企業の現状をリアルに受け取ることができる。また、従業員の活躍を知ることで、どういった先輩を目標としたいか、自身に必要なスキルは何かを考えるきっかけになる。内定者のプロフィールやインタビューなどのコーナーを設けるのも有効で、企業の一員となる意識を高めることにつながる。ただし、送付だけでは一方的な発信に留まるので、他のフォロー策との並行するのが望ましい。
●内定者サイト・SNSグループ
内定者専用サイトやSNSグループを活用し、情報共有や交流の場を作るのも効果的だ。企業からのお知らせ、イベント情報などの発信だけでなく、入社後に同期となる内定者同士が自由に交流できるスペースがあると、仲間意識や一体感を醸成できるだろう。企業からの一方通行ではなく、内定者から企業へのコンタクトや、電話やメールで問い合わせるほどでもない小さな疑問の投げかけも可能にして、双方向のコミュニケーションをはかる場とすることが重要である。
●内定者研修
内定者研修で、入社後にともに働く同期メンバーと意見交換や共同作業を行うと、仲間としての一体感が生まれ、入社意欲・帰属意識も高まる。研修の内容は、社会経験がないと理解が難しいような難易度の高いものではなく、社会人としての心構えやマナーなどのレクチャーや、企業理念といった入社する企業の基礎知識などとした方がよい。●グループワーク
内定者同士や先輩従業員を交えたグループワークによって、コミュニケーションの機会を増やし、仲間としての一体感を生むことができる。また、実施するワークの内容によっては、企業の業務内容や入社後に携わる実務への知識を得ることにつながる。具体的には、新規事業の企画や模擬プレゼン、過去の企画事例から提案書の作成といった実務に沿うワークがよいだろう。●eラーニング・通信教育
内定者専用のeラーニングや通信講座があれば、入社するまでの期間を利用して内定者の成長支援ができる。「入社前に学んでおきたい」という内定者の意欲に応えることになり、企業のスキル向上への姿勢を示すことにもなる。リアル開催の研修とは異なり、パソコン・スマホと通信環境があれば時と場所を選ばず学べるため、卒業論文や旅行などの予定が詰まっている新卒内定者でも学習機会を逃すことがなく、社会人の基礎となるビジネスマナーや業界基礎知識、情報セキュリティなど、実務に直結するテーマならばモチベーション維持にも効果がある。人事担当者は学習の進捗状況をシステムで管理し、状況によって適切な声がけをすることも重要だ。
●書籍購入・資格取得支援
スキル向上につながる資格や、業務上必要になる資格は、取得のための書籍購入代や受験費用への支援制度を制定し、内定者でも利用できるようにする。従業員のスキル向上に注力している姿勢を見せることは、企業への信頼・愛着につながる。内定者が得られるメリットとして印象深いものになるだろう。●内定者インターン・アルバイト
内定者インターンやアルバイトによって内定から入社するまでの期間に就労体験させることで、実際に働くことへの理解が深まる。企業の職務内容や事業構造への理解も促進でき、社会人としてのマナーやスキルの向上にも効果がある。一般的に内定者をインターンやアルバイトとして従事させる場合、行う業務は入社後に配属予定の部署、担当する予定の実務の一部に携わってもらうことが多い。●内定者主導のプロジェクト
内定者に企業の一員になることを自覚し、内部の人間として関わってもらうために、プロジェクトを立ち上げ、実務に従事してもらうことも有効である。例えば、内定者にプロジェクトチームを結成してもらい、次年度の採用ツールとなるパンフレットやウェブサイト制作などの、内定者ならではの視点を活かせる実務を任せる。学生であり企業の一員でもある新卒内定者に企画・制作を任せることで、事業内容や企業文化への理解を深められる。メンバーと協力しながら目標へと進む経験は、業務への主体的な参加姿勢や成功体験となり、強い当事者意識として内定者に残るだろう。採用講座:内定者フォロー編~「内定者フォロー」の基本的な考え方と受諾前後のポイント~
内定者フォローの企業事例
ここからは、特徴的な内定フォローを実施している4社をピックアップし、過去の事例を紹介していく。●KDDI:「KDDI DIGITAL GATE ツアー&内々定者懇親会」
KDDIでは、入社後の働き方やキャリアを理解するための社内制度説明とオンライン事業所紹介を実施している。KDDIでは、例年6月に行われる内々定式を起点に翌年4月の入社まで定期的に内定者フォローが行われており、2021年に内々定者向けイベントとして開催されたのが「KDDI DIGITAL GATE ツアー&内々定者懇親会」である。「DDI DIGITAL GATE」は、在籍するデザイン思考・サービス開発のプロフェッショナルたちが顧客とともにチームを形成し、DX推進・新規ビジネス創出を後押しするための拠点として設置されている。この「KDDI DIGITAL GATE」について、仮想空間の中で先輩従業員が説明するイベントで、遊び心ある演出が特徴だ。
また、オンラインでの「先輩社員との座談会」が行われた際は、さまざまな部署に所属する従業員が、会社での働き方や業務内容について説明。内定者からも就活面接時には質問をためらっていた、踏み込んだ質問が飛び出すこともあり、活発なコミュニケーションの場となるという。
また、KDDIでは内々定を出す6月~翌年4月の入社までのスケジュールをステップ化し、実際にこのステップを経て入社した若手社員によるリアルレポートとして企業ホームページに紹介している。どのような内定者フォローが受けられるかを内定者・入社希望者が閲覧できる。
【参考】&KDDI:内定者期間って何をするの?入社までのステップを公開!
●サイバーエージェント:「0年目スタートダッシュ研修」
サイバーエージェントは入社1年目の新入社員以前である「0年目」から活躍できる人材育成を目標に、内定者への自己決定力を育むプログラムを充実させている。「0年目スタートダッシュ研修(通称ゼロスタ)」では、内定者が自身を深く理解し、配属前から必要なスキルや考え方を習得することで主体的に意思決定できる力を養うための研修と位置付けられている。25年卒の内定者向けに実施されたゼロスタは以下のような内容だった。・人事オリエンテーション
人事によるオリエンテーションで、研修の目的を確認し、入社までのゴール設計について伝達。
・役員クラスによる講義
常務執行役員CHO曽山氏による「活躍人材になる方法」と題した講義が行われ、活躍人材となるために、内定者期間で行うべきアクションとは何かを伝えた。講義後は、チームでワークを行い、自己宣言のブラッシュアップを行った。自分以外の内定者の意見を知ることで、自身の考えを深め、同期を知る機会となった。
・若手社員を中心に部署横断の社内組織「YMCA」トップによる講義
サイバーエージェント内には若手従業員の成長を目的とした育成施策「YMCA」があり、同名で、20代トップライン引き上げのために全社を横断した組織「YMCA」が設立されている。このYMCA理事長により、「内定者の極意」と題し、どのような環境にあっても「自分」という武器で戦うために「自己解釈」の仕方についての講義が行われた。
・質疑応答
サイバーエージェントでは早い段階で内定者同士が知り合い、企業カルチャーや考え方を深く理解しすることは重要と考えている。内定者が自分自身と向き合う機会の提供が「0年目スタートダッシュ研修」の主眼である。
また、26年卒への0年目スタートダッシュ研修もすでに予定されている。
【参考】Cyber Agent Way:早期内定者に贈る!未来を創る特別研修
【参考】Cyber Agent Way:27卒ビジネスコース内定者向け~0年目スタートダッシュプログラム~「ゼロスタ」
●メルカリ:新卒新入社員向け人事制度「Mergrads(メルグラッズ)」
メルカリでは、内定者の個人のスキル・バリューに着目し、2018年4月入以降の内定者を対象に、自律的に能力を伸ばすための支援に関する新制度を導入している。・適正なオファー・内定期間中の昇給制度
新卒初任給の横並び・定額を排し、学歴・入社時期に関係なく、内定者個人のスキル・バリューに応じた適正な年収を提示する。
・インプット支援制度
世界各国で最新のサービス・アプリを体験するための海外出張費用を全額負担。プログラミング学習支援や技術書や書籍購入費用を補助。
・Global Operation学習制度
「語学学習制度」で、英語・中国語習得に向けた語学留学費を補助。母語が外国語の従業員には日本語学校費用を補助。また、入社後の「クロスカルチャー研修」により、文化背景が異なるメンバーとの相互理解を促進。
フリマサイトという新興サービスのトップを走るメルカリならではの視点が感じられる内定者フォロー策を実施している。新たな商文化やアプリのキャッチアップやユーザーの多様性に対応できる内定者への支援を手厚く行っている点に大きな特徴である。
【参考】メルカリ:メルカリ、新卒新入社員向け人事制度『Mergrads(メルグラッズ)』導入 〜個人の能力や経験に応じたオファーを提示、内定者向けにインプットを支援し、内定期間中の昇給も〜
●日清食品が設置している「内定者特設サイト」
日清食品では内定者への情報発信を内定者フォローとして実施している。現在公開されている「25卒内定者特設サイト」では、会社紹介・企業の歴史といった日清食品に関する基礎知識のほか、「ADOVICE 就活生の声」として、企業内のリアルをコンテンツ化して伝える。・「文系就活談」「理系就活談」
専攻別にマッチする部署・職種の紹介と、就活時の悩みと解決方法などを紹介。文系では、セールス職やマーケティング、人事などの職種別に、どのようなキャラクターのメンバーが多いか人物像を紹介。若手社員が、面接時にポジティブな自己アピールをするためにどのよう話をしたか具体例を披露している。
理系では、就業する部署・職種の魅力とともに、研究内容を理解しやすく言葉で伝える難しさや、志望部署に対する不安など、就活時に抱えた課題を挙げ、具体的な解決策を例示する。
・「選考の秘訣」
日清食品の採用試験を受ける架空のキャラクター「麺太郎」が、就職活動中に試行錯誤した内容をストーリー仕立てで紹介する、いわば就活指南。先輩従業員の実際の悩みや解決策、そこにたどりついた思考方法がちりばめられている。
・「就活ぶっちゃけ談」
就活のために外見磨きに注力したことや、面接日にまさかの遅刻など、失敗談も含めて先輩社員が実践・体験した実話エピソードを披露。就活生・内定者への応援コメントがあふれている。
日清食品が発売している個性派カップラーメン商品の説明・パッケージになぞらえたポップなサイトデザインで親しみやすい。コンテンツにも、「この企業でこんなことがやりたい!」という若手従業員の高いモチベーション、個性の主張があふれており、風通しがよく心理的安全性の高い企業カルチャーが覗く仕様となっている。
【参考】日清食品25卒内定者特設サイト
採用講座:内定者フォロー編~「内定者フォロー」の基本的な考え方と受諾前後のポイント~
まとめ
内定者フォローは、こまめなコミュニケーションによって、内定者が実際に入社する日までの空白期間に抱きがちな漠然とした不安を解消し、入社後の働き方や就労環境をイメージしやすくする手段である。入社へのモチベーション低下は内定辞退や早期退職の要因となるので、より明確なビジョンをもたせる必要がある。そのため、企業からの一方的な情報発信では足りない。内定者が知りたい内容は何か、ニーズをとらえたフォロー策を実施することが大切である。人事は施策を主導するとともに内定者へのサポート姿勢を忘れないように心掛けることが重要だ。
内定者フォローを万全にすることで、企業側は、内定者が不安を抱えていないか、環境的にもメンタルとしても入社準備は進んでいるかを確認できる機会が得られる。辞めさせないための努力ではなく、内定者フォローの段階で人材育成が始まっている心づもりでフォロー態勢を整えることが望ましい。
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