優秀な学生が複数の企業から内定を得るのは当たり前になり、内定後の辞退は採用における企業の喫緊の課題といえる。内定辞退は、企業にとっては大きな損失であり、貴重な内定者をどうつなぎ止めていけばよいのだろうか。本記事では、「内定者フォロー」のそもそもの目的やポイント、事例などを解説していきたい。

人事担当者としておさえておきたい「内定者フォロー」の定義や目的とは?

「内定者フォロー」とは、内定辞退者が出ないように会社側が内定者に対して行うさまざまな施策を指す。この取り組みを通じて、内定者のモチベーションや帰属意識を高めることができれば、貴重な人材の確保や入社後の組織強化につながるため、多くの企業が重視している。

●「内定者フォロー」の3つの目的

(1)内定辞退の防止
苦労の末に、ようやく確保した内定者にもし辞退されてしまうと、採用に要した時間・コストが無駄になるだけでなく、人員計画が想定通りにいかなくなってしまう。是が非でも、内定辞退が出ないよう、入社前にでき得る限りの対策をしておかなければならない。

(2)入社後の早期退職の防止
新入社員は、入社後3年以内に3割が退職すると言われている。原因は色々考えられるが、その一つには入社後のギャップがある。「イメージが違っていた」という声を生み出さないために、内定後に会社や仕事の雰囲気を感じてもらう機会を作る必要性があると言えるだろう。

(3)働く前段階の準備
内定者は、入社後に一日でも早く活躍できるようになりたいと思い描いているはずだ。そのためにも、「入社前に業界のことをより詳しく研究しておきたい」、「必要なスキルや知識を身につけておきたい」という学生の意欲に応えるために、学びの場を提供するのも有益な取り組みだ。

●「内定者フォロー」が重要視される背景

当然ながら、優秀な学生は多くの企業から評価され、複数の内定を得ている。企業が厳しい採用競争を勝ち抜くためには、優秀な学生から自社を選んでもらえるかどうかに懸かっている。「内定者フォロー」は、内定者のモチベーションを向上させたり、不安を払拭させたりなど、内定辞退を防ぐうえで欠かせないアクションとして近年重要視されている。

不安な内定者は何を欲しているか

例えば、「内定を承諾したものの、まだ入社するかどうかを迷っている」という学生に、どんなアプローチをしていけば良いか。ポイントは内定者の理解や優先順位の決定だ。

●安心感

「安心感を得たい」というのは、多くの内定者に共通した気持ちではないだろうか。「この会社が本当に自分に合っているのか」、「聞いていた話と現実との間にギャップがないか」といった不安を持ってしまうからだ。それらを解消していくために、内定者に対して丁寧なコミュニケーションを続けていく必要がある。

●先輩社員との関係構築

採用担当者だけでなく、さまざまな部署の先輩社員が内定者と接する機会をつくってみてはどうだろうか。社員が感じる会社や仕事の魅力は人によってさまざまだけに、「そんなやりがいがあるのか」と新たな気づきを得やすくなるはずだ。また会社により一層馴染んでもらえれば、早期離職のリスクもかなり軽減できる。

●自分以外の内定者の把握

内定者同士の絆を深めることは、内定辞退の防止にも有効となるだけに、内定が出たら早い段階で内定者のコミュニティをつくることを推奨したい。その際、できれば内定者のリーダーを決めておくと、採用担当者にとって心強い存在になってもらえる。何かイベントを企画するにしても、スムーズに実行まで移せるだろう。

●会社の雰囲気

選考過程でも、内定者に会社の雰囲気について説明する機会は何度かあるが、可能であれば体感できる場を設けるようにしたい。内定者に、この職場で自分が働いている姿をイメージしてもらうためにも必要だといえる。

●自分に足りないもの

意欲が高い学生は、常に目指すべき姿と現状の姿とのギャップを見極め、足りないものを補う努力をするものだ。「入社日までにこれとこれに取り組もう」という姿勢が、入社後のスタートダッシュにつながることもある。高いモチベーションを維持する秘訣となるだろう。

●自分への期待

新入社員に会社が何を期待しているかを明確に提示し、共有するようにしたい。さらには、概要レベルでも良いので、階層別に求められていることも示してあげると、内定者は中長期的なキャリアビジョンを持ちやすくなる。

内定辞退を防ぐためのポイントはユニークさや交流機会

今度は、内定辞退を防ぐポイントはどこにあるのかを整理してみよう。

●他社と違ったユニークな内定通知を出す

選考結果をただ単に通知するだけでなく、ユニークな内定通知を出して強い印象を残すのも良い作戦だ。なかには、採用担当者ではなく社長自らが内定者のもとに電話を入れ、内定を通知している企業もある。「他の企業とは違う」、「ここまで自分を大切にしてくれているのか」と思わせることができるかどうかがポイントとなってくる。

●意思確認

複数回にわたり面談の場を設け、内定者の入社意思を確認することもポイントの一つとして挙げたい。本人が抱いている不安や疑問の解消につながり、入社後の働く姿をイメージしやすくなる。何度か会っているうちに距離感が縮まれば、それまで言いづらかった悩みも聞き出せるかもしれない。

●連帯感の醸成

内定者同士の連帯感を高めることで、お互いの関係性が深まり、入社前に相談できる仲間も増えていく。人間関係の不安を払拭できれば、入社意思はより強固なものとなってくる。SNSやインターネツトを活用しながら、交流を促進していきたい。

●企業理念や事業内容の詳しい説明

会社の魅力を知ってもらうために、企業理念や事業内容、各部署の役割などを説明する機会を設けるのも効果的な取り組みだ。選考過程ではどうしても時間が限られており、それらを十分に伝えきれていないのが実態である。理解が高まるほど、会社や事業に対する興味が湧いてくると言えよう。社内報を作成している企業であれば、それを内定者に送るのも良いアイデアだ。

●業務の詳しい説明

同様に、業務に対する内定者の理解を深めることも有効だ。入社に向けた不安や疑問を解消できる。方法は色々考えられる。例えば、職場見学会を開催し実際に業務を体験してもらった上で、参加者同士のグループディスカッションを行ってみてはどうだろうか。業務を把握できるだけでなく、内定者同士のつながりも持てるはずだ。

●入社後の準備

内定者の意識を高めるために、課題を課したり、合宿研修や勉強会を開催したりしている企業もある。いずれも、テーマは社会人としての基本を学ぶというもの。早い時期から心構えやビジネスマナーなどを学んでおけば、入社後の研修もスムーズに進められるだろう。

●社員とのコミュニケーション機会を増やす

社員とのコミュニケーションの場を設けるのも推奨したい方法だ。対面やWebなど実施形態は色々考えられるが、学生が今抱いている入社前の不安や疑問を引き出し、それらを先輩社員が自らの経験をもとに解消・解決してあげられるような機会にすることが大切になってくる。

●定期的に連絡を入れる

信頼関係を構築するためにも、内定者には定期的に連絡を入れることも重要だ。いつ連絡が来るかわからないと、どうしても不安が増してしまう。月に一回程度が良いペースと言えるだろう。また、連絡をした際に近況を聞くのも一つだが、内定者から随時課題を提出してもらうといった方法も考えられる。もちろん、提出して終わりでは意味がない。採用担当や現場の社員が課題を見て、感想やコメントなどをフィードバックするようにしたい。丁寧に対応していけば、内定者の自社への印象は一段と良くなるはずだ。

●SNSを活用して社内の情報をオープンにする

SNSを活用して、いかに楽しくてやりがいのある会社であるかを発信していくことも大切なポイントだ。例えば、チャットサービスをブログのように活用してみる。社内の様子を撮影した写真を定期的にアップしていくことで、内定者からの反応、感触をリアルタイムで得ることができる。

●エース社員との交流機会をつくる

会社のエース社員は、内定者にとって憧れの存在に映るものだ。「自分もそうなりたい」、「どうしたら、少しでも近づけるようになるのか」とさまざまな想いを巡らすことだろう。例えば、前述のようにSNSを活用しながら、エース社員と交流する機会をつくる。そうすることで、内定者のモチベーションは実施前と比較して大きくアップするはずだ。

「内定者フォロー」を進めるうえで参考にしたい事例を紹介

「内定者フォロー」の重要性やポイントを理解していただいたところで、次は実際にどんな施策を行っていけば良いのかを紹介しよう。

●座談会

まずは、内定者と社員との座談会を実施してみてはどうだろうか。交流を通じて、会社への親近感が高まり、仕事の魅力をより理解することができるからだ。参加する社員も若手だけでなく、ベテランや管理職など多様性に富んでいた方が良い。職場の雰囲気がよりイメージしやすくなるだろう。いずれであっても、内定者の目線に立って、心地よい空間・時間を作るよう心がけていくことが大切といえる。

●内定者懇談会

「自分の同期にどんなメンバーがいるのか」、「仲良くやっていけるか」といった不安を感じている内定者は多いだろう。そこで、内定者同士の連帯感を高めるために、内定者懇談会を開催するのも有益だ。リアルな場にこだわらず、Web会議を活用したオンライン懇談会でも良い。同期の意識が持てると、「入社後はお互いに切磋琢磨していこう」と思えるようになるからだ。そうしたつながりを、早い時期から持てるようにしてあげたい。

●学生との面談

学生との面談も有効だが、留意したいポイントが二点ある。一つ目は、少人数での面談、ないし個人面談を心がけること。大人数でも自分らしくコミュニケーションが取れる学生ばかりではない。なかには、「人前で話すのはどちらかというと苦手」という学生もいる。それに、どうしても人数が多いと発言の機会が少なくなってしまい、参加意識が薄れてしまう。

二つ目は、面談を定期的に行うこと。やりとりする回数を多くしていくことで親近感がより深まっていき、入社意欲も高まってくる。また、時期に応じて内定者が知りたいこと、気になることが変わるはずだ。面談の機会を複数回持つことを勧めたい。

●内定者研修

一緒に働く仲間と共同作業を行う場として、内定者研修も良い施策だ。一体感が形成され、入社意欲も高まってくる。ただ入社前の時期から難易度の高い研修を行うのは良くない。楽しくコミュニケーションを取りながら、社会人としての基本を身につけるといったレベルの研修に留めよう。心構えやマナーを学ぶだけでも十分に意義がある。

●内定式

内定式を10月1日に行うという企業が多いが、近年はコロナ禍とあって実施しない企業も増えている。ただ、オンライン上でも社長や役員と内定者の接点をつくることができる。「内定式でのトップからのメッセージが心に響いた」、「声を掛けてもらえただけでも嬉しくなった」という内定者を増やす絶好の機会といえる。

●社内イベント

近年はコロナ禍という状況もあって、社内イベントを対面で開催する企業は少ないが、オンライン上で内定者を社内イベントに招くのも効果的だ。「どんな人たちが働いているのか」、「職場の雰囲気はどうなのか」という内定者の不安に対して、言葉で説明するのも良いが、社内イベントを通じてダイレクトに感じ取ってもらうことで、さらに印象が良くなるだろう。例えば、謎解きゲームを通じて、企業理解を深める仕掛けを施す企業もあるようだ。
「内定者フォロー」とは、企業としての基本的な姿勢や働く魅力を内定者に一方的に発信し続けることではない。内定者の気持ちや不安にしっかりと寄り添い、丁寧に対応していくことが重要になってくる。そのためにも、内定者との積極的なコミュニケーションは欠かせない。激しい採用競争のなか、優秀な学生の確保に向けて、多様な施策を組み合わせたり、試したりしながら、入社に向けて手厚くフォローしてみてはいかがだろうか。
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