「中小受託取引適正化法(以下、取適法:とりてきほう)」の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。中小受託取引の公正化と中小受託事業者の利益保護を目的として、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」が改正され、2026年1月1日に施行されます。改正前と比べて内容の追加や対象範囲の拡大があるため、企業における対応には注意が必要です。
2026年1月1日改正「取適法(中小受託取引適正化法)」とは? 概要と4つの義務・11の禁止項目を解説

「取適法」の概要と適用対象、改正のポイント

適用対象となるかどうかは、「取引の内容」と「資本金基準または従業員基準」に基づいて判断します。今回の改正で従業員基準が加わり、適用対象取引が拡大されることになりました。

下記の図は、公正取引委員会のリーフレットより引用しています。


公正取引委員会のリーフレットより
「物品の運送の再委託」に加え、「物品の運送の委託」が対象取引に追加されました。製造委託の対象物としては、金型だけでなく、製品作成のために用いられる木型や治具(工作物保持具)なども追加されています。

従業員には、正社員、契約社員、パート、アルバイトが含まれ、従業員数の基準は「製造委託等をした時点」(契約締結時点または発注時点)で判断されます。基本契約がある場合でも、実際の発注時点における従業員数の把握をしなければなりません。

製造委託等を契約(発注)した時点で従業員基準に該当した場合は、その後の従業員数の変動にかかわらず、「取適法」の適用対象となりますので注意が必要です。なお、中小受託事業者には、法人だけでなく、個人事業主も含まれます。

ほか、改正のポイントとして、協議を適切に行わない代金額の決定や手形払い等が禁止となりました。

買いたたきとは別に、“対等な価格交渉を確保する観点”により、中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、委託事業者が必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定して中小受託事業者の利益を不当に害する行為を禁止する規定が新設されました。

この「協議」については、実質的な協議が行われているか否かで判断されます。例えば、中小受託事業者からの申し出がなかったから協議しなかった、という理由は正当化されません。

支払手段として手形払いは認められないこととなり、電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに代金に相当する金銭手数料等を含む満額を得ることが困難な場合は認められません。

委託事業者の「4つの義務」と「11の禁止行為」

「取適法」は、委託事業者に以下の4つの義務を課しています。

1. 書面の交付義務
2. 支払期日を定める義務
3. 書類の作成・保存義務
4. 遅延利息の支払義務


「書面の交付」については、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、必要事項を電磁的方法で提供できることとなりました。

「支払期日」は、給付を受領した日又は役務の提供をした日から60日以内の、できる限り短い期間内、かつ具体的な日が特定できるよう定める必要があります。

また、委託事業者には以下の11の禁止行為が定められています。

1. 受領拒否の禁止
2. 製造委託等代金の支払遅延の禁止
3. 製造委託等代金の減額の禁止
4. 返品の禁止
5. 買いたたきの禁止
6. 購入・利用強制の禁止
7. 報復措置の禁止
8. 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
9. 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
10. 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止
11. 協議に応じない一方的な代金決定の禁止


「減額の禁止」に関しては、委託事業者が製造委託等代金を中小受託事業者の銀行口座へ振り込む際の手数料を中小受託事業者に負担させ、代金から差し引いて支払うことは減額に該当し、禁止されました。

さらに、違反行為が行われていない場合等の勧告に関する規定が整備され、勧告時点で委託事業者の行為が是正されていた場合でも、再発防止策などの勧告が行われます。例えば、支払遅延をした委託事業者が勧告前に代金を支払った場合などが該当します。

違反行為は、中小受託事業者との合意の有無や委託事業者の認識にかかわらず、違反となりますので十分な注意が必要です。

今回の改正で、中小受託事業者が申告しやすい環境を確保するため、「報復措置の禁止」の申告先として、公正取引委員会および中小企業庁長官に加え、事業所管省庁の主務大臣が追加されています。

「取適法」で示された取引適正化や価格交渉については、中小企業庁をはじめ、各種公的サポートがあります。これらの活用もご検討ください。
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