スイスに本社を置き、コーヒー・ミネラルウォーター・菓子・調味料・ペットフードなど多彩な商品を擁する世界最大の食品・飲料会社のネスレ。その日本法人であるネスレ日本株式会社では、報酬・賃金体系の設定にあたってマーサージャパン株式会社が提供する『総報酬サーベイ』および『IPE(International Position Evaluation System)』と呼ばれる職務評価手法を利用している。

今回はネスレ日本の森田浩平氏、乾大地氏と、マーサージャパンの増渕匡平氏、荒井竹美氏による対談を通じて、『総報酬サーベイ』および『IPE』を活用する意義と効果、さらなる改良に向けての展望などをお伝えする。(以下敬称略)

【対談者プロフィール】


  • 森田 浩平氏

    ■森田 浩平氏
    トータルリワードマネジャー ネスレオセアニア&ジャパン

    新卒でネスレ日本に入社。営業・営業企画を経て、2008年より人事企画部に異動。15年以上、人事としてキャリアを重ねる。賃金制度を含む人事制度の改定などのプロジェクトを経験した後、2024年12月より現職(オーストラリア・シドニーに赴任)。オセアニア・日本を統括する立場として活躍。

  • 乾 大地氏

    ■乾 大地氏
    ネスレ日本株式会社
    人事総務本部 人事企画部

    新卒で通信系日系企業に入社。人事として給与や部門人事業務を経験。2022年、ネスレ日本に中途入社し、人事企画部に所属。人事制度全般の企画・運用に携わり、現在は報酬制度や働き方の整備に関するプロジェクトに参加するなど、人事領域で多岐にわたり活躍している。

  • 増渕 匡平氏

    ■増渕 匡平氏
    マーサージャパン株式会社
    プロダクト・ソリューションズ部門 代表

    日系証券会社の営業部門および人事部門を経て、2010年にマーサージャパン入社。総報酬サーベイに関する、既存顧客の運用支援や新規顧客の導入支援に従事。2021年にプロダクト・ソリューションズ部門の責任者に就任。日本で3,500社を超える同部門のクライアントに対して、組織人事領域における典型的なイシューを特定し、標準化されたソリューション(プロダクト)を通じて支援している。

  • 荒井 竹美氏

    ■荒井 竹美氏
    マーサージャパン株式会社
    プロダクト・ソリューションズ部門
    カスタマーサクセス アソシエイトコンサルタント

    日系鉄道会社の国際物流事業本部において法人営業を担当。ニューヨーク駐在時には法人営業に加えて、カスタマーサービス部門の管轄を行い、現地社員の採用・トレーニング等に従事。帰国後、経験を生かして異業種への転職を試み、2022年にマーサージャパンに入社。総報酬サーベイの活用、データ提出時のサポートを担当している。

ネスレ日本森田様・乾様・マーサージャパン増渕様、荒井様

信頼性の高いデータと手法に基づき、等級ごとの報酬レンジを確認する

増渕 マーサーの『総報酬サーベイ』は、参加企業からご提供いただいた報酬データを各社が汎用的に活用できるようにデータベース化し、業界別、企業規模別、職種・職位別、等級、ジョブといった複数の切り口を掛け合わせて比較分析できるプロダクトです。

またマーサーでは、グローバル共通の職務評価手法として『International Position Evaluation System(IPE)』を提供しています。IPEは職務や役割の大きさを数値で評価する仕組みで、「影響」「折衝」「革新性」など5つの要素・12の評価軸から職務・役割を分析し、最終的に“ポジションクラス”というスコアに落とし込みます。

このスコアは、いわゆる「ジョブサイズ」を定量化したもので、異なる国・業界でも同じ基準で比較できますし、同じ国でマーケット(他社)と比較する際にも便利です。世界中で共通の評価基準として活用されていますが、本日は、ネスレ日本様がこの『総報酬サーベイ』や『IPE』をどう活用していらっしゃるのかを中心にお話を伺いたいと考えています。

グローバル企業の日本法人という点を考えると、報酬や賃金体系の設定には独特の難しさもあるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

森田 「Think Globally, Act Locally」という言葉があります。ネスレもまた、本社が各国の現地法人すべてを完全にコントロールするのではなく、グローバル共通の価値観や方針を大切にしつつ、個々の地域・社会では何が求められるのかを理解したうえで事業に取り組んでいます。これはビジネスに限らず組織運営についても同様です。

リワードに関していえば、グローバル共通の「Total Rewards Policy」があります。これは固定給(Fixed Pay)や変動給(Variable Pay)といった金銭的なものに加えて、福利厚生(Benefit)、働くことによって得られる人間としての成長(Growth)、さらには職場環境(Work-Life Environment)、これらすべてが社員に対してネスレが提供する報酬(Rewards)だという考え方です。

この方針のもと、固定給と変動給の割合や福利厚生のあり方、ワークライフバランスなどは各国の状況に合わせて設計していくことになっています。
ネスレ日本森田様
増渕 まさに、「グローバルに一貫したフレーム」と、「ローカルに根差した設計」の両立ですね。そこに誠実さが表れていると感じます。企業がどれだけグローバルかローカルかを問わず、企業がそこで働く従業員一人ひとりに誠実に向き合う姿勢は、人事制度の出発点だと私も考えています。

では『総報酬サーベイ』と『IPE』の活用方法について、お聞かせいただけますか。

 まず弊社独自のポジション・等級を『IPE』を元にするとどのような評価になるかを確認します。『IPE』の評価を元に算出したポジションクラスをベースに等級ごとの給与レンジが市場において優位性を保てているのかを毎年チェックしています。

しっかりと現場にヒアリングし、仕事の難易度や会社への貢献度を確認して自社と『IPE』の整合性を図るようにしています。できる限り正確に合致させないとベンチマークの意味がなくなりますので、気を遣う作業です。
ネスレ日本乾様
森田 各国・各マーケットによってビジネスのサイズや社員の人数は異なりますし、街を歩くことに危険がともなう地域もあれば日本のように安全な国もありますので、同じポジションでも重みや役割、責任範囲は変わるのが実情です。こうした点にも「Act Locally」の原則は活かされており、ある程度の職位までは各国に裁量権があり、各マーケットの状況に合わせて等級と職務内容を調整していくことが可能となっています。

ネスレの場合は世界中にネットワークがあり、各国で『IPE』を利用していますので、「日本と同程度のビジネス規模の地域では、あるポジションをどの等級に設定しているか」を確認しやすく、調整・設定に生かせることと、「ポジションクラス54」というだけでその人がどんな役割を果たしているのかイメージしやすい点は、大変助かっています。

増渕 こうした局面では、まさにIPEが持つ設計思想の深さや、グローバルな整合性を担保できる信頼性が生きてくると考えています。私どもも、確立したものを維持するのではなく、世の中の動きを確認し、多くの企業とコミュニケーションを取りながら見直すべきところは見直していくことが必要だと考えています。

たとえば近年、CFOの役割は財務管理にとどまらず、戦略・ESG・人材投資など経営全体にかかわるものへと拡張しています。また一口に「エンジニア」と言っても、AI、セキュリティ、製造技術などで必要とされるスキルや責任範囲は大きく異なります。マーサーでは、こうした職務ごとの細かな違いにも丁寧に目を配りながら、制度設計やサーベイ分析の信頼性を高める取り組みを続けています。

協力:マーサージャパン株式会社


この後、下記のトピックが続きます。
続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。

●比較対象となる企業選定・条件設定を行うために求められる視点
●データを等級や報酬制度の運用に活かすために意識すべきこと
●ネスレ日本が活用して感じたマーサーの強みとは?
●『総報酬サーベイ』を軸に広がるネットワーキングの広がり

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