
社会保険適用促進手当は控除するのが原則
企業が従業員の保険料負担軽減のために支給する社会保険適用促進手当は、次の条件を満たすと「新たに発生した本人負担分の保険料相当額」を限度に標準報酬算定の除外対象とされる。(2) 従業員の標準報酬月額が104,000円以下である
ただし、社会保険にすでに加入している従業員も、一定の条件を満たせば手当額を標準報酬の算定対象から除外可能である。
それでは、社会保険適用促進手当支給時の『算定基礎届』の原則的な記載方法を、次の雇用条件を例に考えてみよう。
※ 事例内の保険料額はすべて厚生年金18.3%、健康保険9.9%(協会けんぽ令和8年度平均保険料率)で試算している。
《給与》総額:110,000円/内訳:基本給100,000円、社会保険適用促進手当10,000円、現物給与なし
《標準報酬月額》98,000円
《従業員負担分の社会保険料額》13,818円
標準報酬月額は社会保険適用促進手当を含まずに決定するのが原則である。そのため、同手当を支給している従業員の『算定基礎届』は、給与総額から手当相当額を控除した額を「(11)通貨」欄に記載するのが通常となる。
上記の場合は、給与総額から手当分を除いた100,000円が「(11)通貨」欄に記載すべき金額である。

「手当額が限度額を超える場合」は差額を必ず加算する
次に、原則とは異なる取り扱いを考えてみよう。《給与》総額:120,000円/内訳:基本給100,000円、社会保険適用促進手当20,000円、現物給与なし
《標準報酬月額》104,000円
《従業員負担分の社会保険料額》14,664円
上記ケースは、社会保険適用促進手当の支給額(20,000円)が従業員負担分の保険料額(14,664円)よりも多い。この場合には、原則とは異なる記載方法が必要になる。
前述のとおり、社会保険適用促進手当のうちで標準報酬の算定から除外できるのは、「新たに発生した本人負担分の保険料相当額」が限度である。保険料相当額を超える金額は除外対象にならないので、「(11)通貨」欄の記載額に必ず含めなければならない。
上記の場合には、社会保険適用促進手当の支給額(20,000円)から従業員負担分の保険料額(14,664円)を差し引いた5,336円を、「(11)通貨」欄の記載額に加算することになる。したがって、基本給(100,000円)に5,336円を加えた105,336円が、記載すべき金額である。

「標準報酬月額が10.4万円を超えた場合」は手当の全額を加算する
ところで、『算定基礎届』の記載対象期間である4・5・6月の途中で標準報酬月額が104,000円を超えた場合には、届はどのように記載すればよいだろうか。このような現象は、随時改定によって発生することがある。随時改定とは固定的賃金に変動があり、その後3ヵ月の給与額の平均にもとづく標準報酬月額が従前よりも2等級以上変わる場合に行われる。たとえば、2月に昇給があって基本給が増え、2・3・4月の給与額の平均にもとづくと標準報酬月額が2等級以上増える場合、翌5月から標準報酬月額は改定される。
それでは、次の事例で考えてみよう。
《給与》総額:120,000円(2月に昇給)/内訳:基本給110,000円、社会保険適用促進手当10,000円、現物給与なし
《標準報酬月額》4月:98,000円、5・6月:110,000円(2・3・4月の給与額平均により随時改定)
《従業員負担分の社会保険料額》4月:13,818円、5・6月:15,510円
上記は2月に基本給の改定があり、随時改定の要件を満たして同年5月から標準報酬月額が110,000円に改定された事例である。
この場合、4月は社会保険適用促進手当(10,000円)が従業員負担分の保険料額(13,818円)よりも少ないため、『算定基礎届』の「(11)通貨」欄は事例1の考え方と同様に手当を除いた110,000円を記載する。
ただし、5・6月は4月と記載方法が異なる。社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外の対象者は、標準報酬月額が104,000円以下の従業員に限定されているためである。上記のケースでは、5月から随時改定によって標準報酬月額が110,000円に改定されたため、5月からは社会保険適用促進手当が算定の除外対象にならない。したがって、5・6月の「(11)通貨」欄は給与総額(120,000円)を記載するのが正しい。

『算定基礎届』は年に1度の社会保険事務のため、記載誤りが生じやすい。社会保険適用促進手当を支給している場合には「手当は加算するのか、控除するのか」、「加算する場合、その額はいくらか」、「標準報酬月額が104,000円超の月はないか」などをよくチェックし、確実な算定手続きが求められる。
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