ProFuture代表の寺澤です。
今年は例年になく、初任給アップのニュースが数多く飛び交っています。新卒採用が過熱しており、優秀な人材獲得競争の中で他社、あるいは他業界に後れを取らないようにという思惑もあるのでしょうが、昨年からのエネルギー、輸入品価格の高騰による物価高に対して、従業員の生活を少しでも支援するという側面もあります。また、近年、企業は収益を従業員に還元することなく、その多くを内部留保に回してきたことに対する批判をかわすという狙いも否定できません。
第144回 24卒の新卒採用動向を企業別に調査。「ガクチカ」に関する質問有無や評価の実情とは?
初任給アップに関連して驚いたことがあります。三井住友銀行が今年4月入行の新入社員の初任給を一気に5万円アップすると報道されましたが、それが実に16年ぶりの初任給の引き上げだということです。16年間も初任給が全く変わらなかったというのです。金融業界では、みずほ銀行も1年遅れで2024年4月入行組から5万5000円アップすると発表していますが、こちらも13年ぶりの引き上げだとか。三菱UFJ銀行を含む3メガバンクの初任給は10年以上、横並びで20万5000円に据え置かれていたとのことです。大手企業で、これだけ初任給を据え置かれていた企業や業界は他にもあるものなのでしょうか。

大企業は6割が「2023年1月」までに選考開始

さて今回は、前回に引き続き、HR総研が人事採用担当者を対象に2022年11月28日~12月9日に実施した「2023年&2024年新卒採用動向調査」の結果と、HR総研が就活クチコミサイト「ONE CAREER」を運営する株式会社ワンキャリアと共同で2024年卒学生を対象に、2022年12月7~13日に実施した「2024年卒学生の就職活動動向調査」の結果も併せて見ていきます。

まずは、「2024年卒採用の選考面接開始(予定)時期」です。全体では、「2023年3月」が18%で最も多く、次いで「2023年4月」14%、「2023年1月」と「20223年7月以降」が11%で続きます[図表1]。驚くべきは、「2022年6月以前」が9%と1割近くあり、「2022年中」(「2022年6月以前」~「12月」の合計、以下同じ)に開始した企業が3割もあります。
[図表1]2024年卒採用の選考面接開始(予定)時期
企業規模別に見ると、1001名以上の大企業では「2022年10月」から増え始め、「2023年1月」が18%で最も多く、次いで「2023年4月」15%が続きます。就活ルール上は、面接選考解禁は「2023年6月1日」とされていますが、「2023年6月」と「2023年7月以降」を合わせてもわずか5%にとどまっています。一方で、「2022年中」に面接を開始した割合は全体よりも多い41%と4割を超え、ピークの「2023年1月」までを含めれば、59%と約6割にもなります。大企業ですら、もはや就活ルールは完全に形がい化してしまっています。

301~1000名以下の中堅企業では、大企業より1カ月程度遅れて「2022年11月」から増え始め、「2023年3月」が最多の21%、次いで「2022年6月以前」と「2023年1月」、「2023年5月」がいずれも12%で続きます。「2022年中」に面接を開始した割合は30%で、全体と同じ割合になります。一方、300名以下の中小企業はやや様相が異なります。面接開始時期として最も多いのは「2023年7月以降」21%で、次いで「2023年3月」18%、「2023年4月」17%が続きます。「2022年中」に面接を開始した割合は23%と最も低いものの、「2022年6月以前」と「2022年7月」の超早期に開始した割合は合わせて17%で、他の企業規模よりも高くなっています(大企業5%、中堅企業14%)。その一方、「2023年7月以降」だけでなく、説明会解禁日である「2023年3月1日」以降に開始する割合が65%(大企業は36%)となるなど、超早期との両極化が進んでいるようです。

多面的な評価を試みる大企業

続いて、「2024年卒採用で実施する面接の形式」を聞いたところ、全体では「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」が36%で最も多く、「対面形式のみで実施」の19%と合わせた「対面形式主軸派」が55%と過半数となっています[図表2]
[図表2]2024年卒採用で実施する面接の形式
企業規模別に見ると、大企業では「対面形式を主軸にオンライン形式でも一部実施」46%が最多ながら、「対面形式のみで実施」の企業はなく、「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」と「オンライン形式のみで実施」を合わせた「オンライン形式主軸派」が49%と、わずかながら「オンライン形式主軸派」のほうが多くなっています。ただし、すべての面接を「オンライン形式のみで実施」の企業は1割にとどまり、少なくとも最終面接だけは対面形式でと考えている企業が大半のようです。

中堅企業では、「オンライン形式を主軸に対面形式でも一部実施」だけでも53%と過半数を占め、大企業以上に「オンライン形式主軸派」のほうが多くなっています。ただ中小企業は、「対面形式主軸派」が68%と7割近くを占め、他の企業規模とは全く異なる様相を示しています。

「2024年卒採用で実施する面接の形態」では、当然のことながら大半の企業が「個人面接」は実施しているものの、比較的実施率が高いだろうと思われた「グループ面接」については中小企業での実施率が1割にも満たないなど、全体でも2割を下回り、それほど高くないことが分かりました[図表3]
[図表3]2024年卒採用で実施する面接の形態(複数回答)
企業規模別に見ると、各面接形態の実施率には大きな差があり、中堅企業では「個人面接」と「グループ面接」以外の面接形態を実施している割合は1割未満にとどまっています。同様に、中小企業でも、「個人面接」以外では「逆面接(学生が質問)」だけが1割を超えています。

これに対して大企業では、「グループ面接」(31%)だけでなく、「グループディスカッション」(26%)、「グループワーク」(18%)、「プレゼン面接」(15%)、「技術・専門面接」(13%)、「ディベート」(10%)と、実施率が1割を超える面接形態が多くあり、人材の見極めにいろいろな面接形態を組み合わせて、多面的に応募者を評価しようとする姿勢がうかがえます。

ガクチカ 質問しない企業は1割以下

この記事にリアクションをお願いします!