今回、同社でタレント・アクイジションを牽引する大橋康子氏と、株式会社ベネッセi-キャリア代表取締役社長の風間直樹氏が対談。事業起点の採用戦略やAI時代に見極めるべき「人材の真価」を軸に、これからの人事に求められる役割、採用のあり方を問い直した。
【プロフィール】

■大橋 康子氏
株式会社リクルートに新卒で入社。営業としてキャリアをスタートし、新卒・中途採用媒体の立ち上げ・制作に関わる。その後、人事採用コンサル・アウトソーシング企業を経てインハウス人事へ転向。LINE株式会社にて中途採用、HRBPリードの経験を積み、2021年より日本電気株式会社に入社。採用全体を統括するディレクターとして活躍している。
日本電気株式会社
人材組織開発統括部 タレント・アクイジショングループ ディレクター

■風間 直樹氏
新卒で株式会社ベネッセコーポレーションに入社し、高校生の進路・進学支援に携わる。その後、株式会社ベネッセi-キャリアへ異動し、大学のキャリア教育変革、企業の新卒採用支援に携わる。高校・大学・企業と幅広いステージで、学び方・キャリア開発の支援を行い、実践型思考力テスト『GPS-Business』※の事業責任者を務める。2025年より代表取締役社長に就任。
株式会社ベネッセ i-キャリア
代表取締役社長
※『GPS-Business』とは?
従来の適性検査ではわからない、ビジネスにおける問題解決に必要な「思考力」と「パーソナリティ」などを測る採用テストです。

なぜNECは「ジョブ型」に踏み切ったのか。人事制度を根底から見直した理由
風間氏 NEC様は2025中期経営計画で「選ばれる会社(Employer of Choice)」を掲げ、人やカルチャーの変革に取り組まれています。その柱の一つとして注目されるのがジョブ型人材マネジメントです。まずはこうした取り組みに注力することになった背景についてお伺いできますでしょうか。大橋氏 背景にあるのは、経営に対する強い危機感でした。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれた時代、NECは就職人気企業ランキングの上位常連でしたが、市場環境の変化や事業構造の転換が進む中で徐々に競争力を失い、2010年代の半ばごろには経営危機に直面したのです。
経営陣が社員との対話集会(タウンホールミーティング)を実施したところ、「大企業病でタコツボ化している」「頑張っても報われない」など、現場からの悲痛な叫びが噴出しました。これを受け経営陣は、これまでのやり方では会社が立ち行かないと考え、カルチャーを根本から変える決断を下すに至ったのです。

大橋氏 最初に着手したのは「自前主義からの脱却」です。それまでのNECは、社内の人材を適材適所で配置するというよりは、その人材を今の場所でどう輝かせるかという考え方が強くありました。ふと経営陣を見渡せば、全員が男性、30年以上NEC一筋のプロパー社員ばかり。阿吽の呼吸で仕事は進みますが、それでは多様性がなく、市場とのズレに気づけません。
加えて、AIやサイバーセキュリティなど急速に進化する領域では、社内に経験者がいないケースもあり、自前での育成だけでは競争に勝つのは困難です。このため、2018年から2019年にかけて、外部からプロフェッショナルを招くキャリア採用へ大きく舵を切りました。
しかし、外部から優秀な人材が入ってきても、年功序列の評価や一律の報酬制度のままでは定着は望めません。採用を変えるだけでなく、評価、報酬、育成、退職など、人事のすべてを変えてきました。こうした一連の取り組みをジョブ型エコシステムと呼んでいます。
配属は人事が決めない。事業と学生を直接つなぐ新卒採用
風間氏 NEC様はキャリア採用から始まったジョブ型の変革を、新卒採用にも適用し「ジョブマッチング採用」を導入されました。大橋氏 はい。従来の新卒採用は総合職の一括採用で、配属先は入社後に人事が決定していました。しかし、事業ごとに必要な人材ポートフォリオが明確になり、専門性が求められるようになると人事主導の配属では限界があります。こうした状況を鑑みて人事による配属を廃止し、各事業部門が欲しい人材を提示して、学生が自らの意思でそこに手を挙げる仕組みへと転換しました。学生向けには、職種や事業ごとに検索できる専用ページを設け、各ポジションの内容はジョブディスクリプションとして明示しています。
風間氏 なるほど。日本でもジョブ型採用を導入する企業が増えていますが、うまくいっている企業とそうでない企業の差は明確です。私が考える成功企業の条件は3つあります。1つ目は「現場感のあるリアルなジョブディスクリプションがあること」、2つ目は「現場の協力体制があること」、3つ目は「入社後の育成や配置に説明責任を持てること」です。
NEC様の取り組みが機能しているのは、単なるコース別採用で終わらせず、現場が主体となって採用に関与している点にあると推察されます。入社後のキャリアパスまで含めて学生と対話ができているからこそ、ミスマッチのない採用が実現できているのでしょう。

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