どの企業も人手不足に悩むなか、ポテンシャルに期待して「第二新卒」が注目されている。大卒者の約3割が3年以内に離職する現状において、「第二新卒」は豊富なターゲットとなっているのだ。ただし、「第二新卒」を採用する上では、その価値観や転職理由などを理解し、自社にとってメリットがあるのかを考えてみる必要がある。そこで、本稿では「第二新卒」の定義や昨今の転職事情、企業における採用のポイントを解説していきたい。
第二新卒の転職イメージ

「第二新卒」とは

「第二新卒」とは、一般的に新卒入社から3年未満で離職し、求職中の若手ビジネスパーソンを意味する。ただし、明確な定義があるわけではないので判断基準は異なってくる。新たな仕事を探している若手全般を指す転職サイトや企業もある。

「第二新卒」の定義が違っていても、多くの企業では新卒採用と中途採用の中間的な位置づけとして前向きに捉えており、年々その需要は高まっている。

●「第二新卒」の年齢条件はいつまで?

「第二新卒」は、新卒で入社した会社を3年未満で離職しているものの、一定の社会人経験を有しているのは間違いない。となると、年齢のイメージとしては4年制大学卒であれば25歳前後まで、高卒は20歳前後までとなる。ただし、年齢を条件付けするかどうかも転職サイトや企業で異なっている。

●既卒・中途の違い

既卒とは学校を卒業したものの進学や就職をしていない人のことをいう。就職活動が上手くいかなかった人、資格取得を優先して就職活動をしなかった人も含まれる。基本的には、社会人経験がないことが「第二新卒」との違いと言える。

また、学校を卒業した後に社会人経験がある人は中途となる。つまり、中途の中には「第二新卒」も含まれる。「第二新卒」と分けて使う場合には、主に3年以上の社会人経験がある人のことを指し、相応の実績やキャリアを持っている人と見做すので、企業としては即戦力としての活躍を期待して採用することが多い。

「第二新卒」の転職事情

次に、「第二新卒」の転職事情を紹介していきたい。

●採用される側(第二新卒)の考えや傾向

まず、採用される側を取り上げたい。まずは、転職を検討するタイミングでどのような情報源を利用しているのであろうか。リンクアンドパートナーズの調査によると、「ジョブサイト・求人情報サイト」(40.8%)が最も多く、以下、「企業の公式ウェブサイト(プレスリリースなど)」(29.6%)、「キャリアセンターや転職エージェント」(10.7%)が続いている。また、同社では企業が発信する情報の中で特に何を参考にしているのかについても聞いている。最も多かったのが「経営戦略や将来の方向性の発表」(34.6%)だ。次いで、「新製品・サービスの発表」(24.5%)、「調査結果の発表」と「既存製品・サービスの実績発表」(いずれも21.9%)という結果になった。

●採用する側(企業側)の考えや傾向

採用する側の考えや傾向については、エン・ジャパンが「若手人材の採用」についてアンケートを実施している。その結果を見ると、第二新卒の採用において6割以上の企業が「前職の勤続期間」を重視しており、勤続期間が「1年未満」の場合には懸念するとした企業も6割を超えている。なぜ、企業は「前職の勤続期間」を重視するのか。その理由としては、「再離職のリスクが高い」(83%)が最多。逆に「前職の勤続期間」を重視しない企業は「人柄を評価するため」(65%)という理由が最も多かった。特に顕著なのは、早期離職に対する懸念が強いことだ。具体的には、「採用・育成コストの負担増」(72%)、「既存社員のモチベーション低下」(51%)などに対する懸念が目立った。

「第二新卒」を採用する企業側のメリット

では、企業側からすると「第二新卒」を採用するメリットは、どこにあるのであろうか。いくつかリストアップしたい。

●教育コストが抑えられる

「第二新卒」は短期間であったとはいえ、既に社会人経験を積んでいる。なので、新卒の入社時にビジネスパーソンとしての基礎的なマナーやスキルは学んでいると思われる。そのため、新卒のようにイチから教育を施す必要がなく、結果的に教育コストを抑えることができる。むしろ、入社後は業務スキルに絞って教育をすれば良いので、新卒よりも早い段階での活躍が見込める。

●自社環境に馴染みやすい

「第二新卒」は、期間の差はあっても何らかの形で実務に携わっている。そのため、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)などの業務改善の基本的な考え方にも触れている場合もある。また、前職で長く在籍していないため、業務の進め方や企業文化に染まり切っていない。それらを鑑みると、「第二新卒」は中途よりも自社の環境に馴染みやすいと言える。

●通年採用が可能

新卒の採用は基本的にスケジュールが決まっている。一方、「第二新卒」はどのタイミングであっても企業から募集・採用をかけられる。いわゆる、通年採用を展開できる点はメリットと言える。

●高い意欲と柔軟性

「第二新卒」は、総じて仕事に対する意欲や目的意識が高い。この特性は、企業からすると非常に魅力的な要素となる。なぜなら、それらは新たな職場環境への適応力や学習スピードを高めてくれるからだ。また、社会人経験が浅いがゆえに、柔軟性が高い。新しい仕事であっても、慣れるまでに時間があまり掛からないケースも多い。

「第二新卒」を採用する企業側のデメリットと懸念

もちろん、「第二新卒」の採用はメリットばかりではない。特有のデメリットや懸念すべき点がある。それらも抑えておこう。

●即戦力にはなりにくい

「第二新卒」は、キャリア採用とは違い、即戦力として期待するのは難しい。あくまでも、ポテンシャル採用となるので必要な知識やスキルを習得するまでに、それ相当の時間とコストが掛かってしまう。この点を見誤るとミスマッチに繋がりかねない。

●早期離職リスク

一度でも離職を経験すると、離職そのものに対するハードルが低くなってしまう。一般的には、新卒時よりも業界分析や企業研究、自己分析を緻密に行った上で入社しているはずなので、ミスマッチが起こる可能性は低いはずなのだが、万が一、認識のズレが判明すると前回と同様な判断を下しかねない。予想以上にアクションが早い可能性がある。

●社会人経験・マナー不足

「第二新卒」の中には、社会人経験が半年に満たない人もいる。それだと、ビジネスパーソンとしての最低限の知識やマナーが備わっているかどうかと言えば、疑問を持たざるをえないだろう。それらをどう身に付けてもらうかを考える必要がある。

●育成に対する不安

ゼロベースで育成していく新卒採用と違って、「第二新卒」をどう育てていくかは判断が難しい。なので、どうしてもケースバイケースになりがちだ。加えて、昨今はリモートワークの導入が広がり、働く環境も大きく変化しているだけに、マンツーマンでのOJTによる指導がしにくくなってきている。そうした中で、いかに丁寧に育成していけるかが課題となる。

●採用後のフォロー体制が必要

「第二新卒」は、採用段階のみならず入社後のフォローが欠かせない。なぜならば、新卒と異なり、相談相手となりえる同期がいないからだ。万が一、職場環境に馴染みにくい要因があると、一人で抱え込んでしまうかもしれない。また、スキル習得に向けたフォローも重要となる。特に異業種からの未経験転職であった場合には、じっくりとサポートしていかなければならない。

「第二新卒」の採用ポイント

企業として「第二新卒」の採用を成功させるためには、さまざまなポイントがある。それらを紹介していこう。

●第二新卒向けのサイト・サービスを活用する

「第二新卒」に特化した採用サイト・サービス、就職イベントが増えている。できる限り、それらを活用するようにしたい。なぜなら、ターゲットを絞っている分、多くの第二新卒者と効率的に接点を持つことができるからだ。例えば、「第二新卒」向けのサイトの中には、エージェントサービスを提供しているところもある。あくまでも、採用が成立した段階で紹介料を支払えば良いので、無駄な出費にならないと言える。

●採用すべきタイミングがある

前々項では「第二新卒」のメリットとして、通年採用が可能な点を提示したが、実際には「第二新卒」の転職活動が活発になる時期がある。具体的には、1~3月、7~9月だ。いずれも、一般的なボーナスの受領後である点が共通しているが、加えて1~3月には4月入社に向けた企業の求人が増えるし、7~9月だと下期の開始月となる10月に向けた採用が始まる。そうしたタイミングに合わせて、求職活動に着手する傾向が見られる。

●退職理由に納得感があるかを確認する

前職を選んだ理由や退職した理由などを確認するようにしたい。特に重要になるのは、後者だ。その内容に納得感があれば、自社にフィットするか、仕事に対して何を重視しているのかなどといった点も把握しやすくなる。

●早期離職への懸念を払拭できるかを確認する

特に前職での在籍期間が短い場合は、慎重でありたい。また、同じことが繰り返されるのではないかと勘繰りたくなるからだ。感情が先走り離職に至ったのではなく、あくまでも前向きな転職であったかどうかを見極めたい。

●自社への志望理由が具体的かつ明確かを確認する

自社への志望理由や今後のキャリアプランも重要な判断材料となる。なぜなら、それらが自社で実現できるものでなければ、再び早期離職する可能性があるからだ。「第二新卒」はポテンシャル採用を期待した採用であるとは言え、特に志望理由は新卒以上に具体的かつ明確であるべきだ。その点は丁寧に確認するようにしたい。

●組織や社風にフィットする人柄であるかを確認する

多くの第二新卒者は、前職での職場経験を通じて自分の価値観や働き方の志向性とのミスマッチを感じている。それだけに、「今度こそ自分に合った企業文化を持つ会社に転職をしたい」という想いが総じて強い。企業側としても、「第二新卒」をポテンシャル採用と位置付けているのであれば、応募者が自社の組織文化とフィットするかどうかを慎重に見極める必要がある。

まとめ

今回は、「第二新卒」にフォーカスし、採用のメリットやポイントなどを解説してきた。では、第二新卒者から選ばれる会社になるためにはどうしたら良いか。

「第二新卒」がまず比較するのは、前職だ。勤務条件や社風、福利厚生、スキルアップに向けたサポートなどについて念入りにチェックするに違いない。ただ、これらは一朝一夕で改善できるものではない。より働きやすい会社になるための取り組みを粛々と続けていくしかない。ならば、仕事のやりがいとしてアピールできる点はないだろうか。実は、「第二新卒」採用を成功させているのは有名企業、大手企業だけではない。知名度はないものの、働きやすさに加えてやりがいも得られる無名の企業、中小企業もある。自社での仕事のやりがいをいかに伝えるかは、新卒採用以上に配慮しても良いだろう。

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